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FP学習日誌(番外編) -最近読んだ本 その2 『スマホ脳』

SNSで友人が読んだとのことでわたしも読みました。著者はスウェーデンの精神科医の方です。
驚きました。大人は1日平均4時間、10代の若者は4-5時間をスマホに費やしているそうです。起きている時間の4分の1くらいでしょうか。ごはん食べたりお風呂入ったりといった生活必要時間を除くと3分の1くらいになるかもしれませんね。
そして英国では、11~18歳の10人に1人はなんと「最低でも夜中に10回以上」スマホをチェックしていると。子どもたちの睡眠時間の減少と質の低下は深刻です。心を病んで精神科を受診する人も劇的に増えていると、著者は繰り返し嘆いていました。10代の子供たちは脳が未発達のため依存症になりやすく、「アルコールやタバコは法により禁じられているのに、スマホはなぜ禁止にならないのか?」とも言っていました。

さて、さまざまな「スマホ活動」の中で、特に心への影響が大きいものは何だと思いますか?
YouTube?ゲーム?
ではなく、SNSなのだそうです。
ご存じの方も多いと思いますが、友人のネガティブな投稿での悪影響ももちろんありますが、それよりも他人の幸福な投稿が心に悪影響を及ぼすそうです。「xxさんに比べてわたしの人生ってなんでこんなつまらんのやろ。。。」という感じですね。もう死語かもですが「リア充」みたいな言葉も流行りましたよね。リア充に見える人にもいろいろと人生の苦難はあるはずです。しかしSNSではそういったことは一切出てこないので、良い面ばかりが目につき、「ああわたしの人生。。。」となるわけです。
そして依存性/中毒性について。この点はあまり詳しくは触れられていませんでしたが、FacebookやTwitterの「いいね!」などのアクションのタイミングはコントロールされているそうです。あなたが投稿して、たとえば次の瞬間すぐにだれかが「いいね!」を押したとしても、Facebookはすぐには教えずにじらすのです。そして絶妙なタイミングであなたに「いいね!」を知らせるそうです。
スマホからメッセージが届いたというアラートが出ると、脳から快感物質のドーパミンが放出されます。それはメールを読むこと自体よりも強い作用なのだそうです。さまざまなアプリのアラート音が同じなのはそれが理由の一つで、「ポロローン♪」と鳴ったときに「あ、LINEで〇〇さんからメッセージ来たかも!ウキウキ♡」とほんとは仕事のしょーもないメールだったとしても、われわれの脳からは期待感でドーパミンが出ます。なので人間はスマホをチェックすることをやめられない、そしてそれが先に述べた「依存症」への道なのです。
ちなみに、Twitterを立ち上げたとき、ブルーの画面に小鳥がぐぐぐーっと現れてパッと画面遷移しますが、あれは何もサーバが遅延しているわけではなく、あなたをじらして、期待感を高めて、絶妙なタイミングで表示しているんだそうですよ。
われわれがSNSを止められないのは、知らないうちにマインドコントロールされているからのようです。それに乗せられて一日何時間もそれに費やするのは。。。どうなんでしょうか。

「じゃ、もうわたしはスマホは決めた時間にしかチェックしない!」と決心したとします。しかし、テーブルの上のスマホを裏返したり、隣の部屋に置いたとしても、ブルブルッとしているのを無視するのはものすごくつらいそうです。人間は「無視する」ことにも脳の容量を使うのです。
そしてそれを潜在的に知っているので、逆に、自分の会話している相手がスマホをテーブルに置いていると、その人はつまらないと感じてしまうのだそうです。レストランで食事しているとき、たとえスマホを裏返していても、相手は「わたしには興味ないんだな。。。」と思ってしまうようです。好かれたい相手と会うときは、スマホはバッグから出さないのが賢明ですね。

そのほか、スマホを長時間使っている人ほど睡眠時間が短く、幸福度が低いなどのリサーチ結果が出ていることが紹介されていました。(しかし著者はここで、逆に、幸福度が高い=楽観的過ぎる人は、古来より生き延びるのがむずかしく、遺伝的には淘汰されてきたので、生き残った現代人の幸福度が低いのは、スマホとは関係なく仕方のないことだとも言っていました。)
あと興味深かったのは、スマホが記憶力に影響を与えるという点でした。これはスマホに限らずですが、たとえばTVを見ながら本を読んでいると、その本の内容が、本来格納されるべき「海馬」ではなく、「大脳基底核の線条体」という場所に入ってしまうことがあるそうです。この「大脳基底核の線条体」というのは、自転車に乗ったり泳いだりするような技術習得のために使われる場所ですが、海馬にいくべき事実や経験、知識が誤ってそこに入ってしまうことがあるそうです。わたしもそうですが、マルチタスクが得意だと思っている人で「最近もの覚えが悪くて。。。」ということがあれば、ながらスマホが原因かもしれません。このこと、実はわたしは少し前からちょっと感じていました。わたし自身のもの忘れは年齢のせい?(笑)と思っていましたが、若い人たちでも「もの覚えが悪い」という人に、ここ数年よく遭遇していたからです。ネット社会での情報の洪水によって脳がオーバーフローしているのではないか。。。と思っていましたが、その直接の原因はスマホだったんですね。

と、思いつくまま記憶のままに書いてきましたが、最後は著者のアドバイスで締めくくろうと思います。
「厳しいデジタルデトックスを!」とか言うんかなと期待していたら、なんと「週に3回、45分間ずつ運動しなさい」というのが最も重要なメッセージでした。え、運動?とちょっとずっこけましたが、これもちゃんと研究結果が出ているそうです。やや息が上がるくらいの運動を、継続的にこのくらいやると心と身体にいいそうです。ちなみに、これ以上やっても、それ以上記憶力が良くなったり頭が良くなることはないそうですよ。笑

『スマホ脳』アンデシュ・ハンセン 久山葉子訳 新潮新書(2020年)

※画像と本文は関係ありません。


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