心理学で理解するトム・ホーバスの言葉の魔法

これからここに書かれた事を頭の中で想像してくだい。具体的に細かく想像できるとなお良しです。

1 ペンギン

2 流氷の上に立っているペンギン

3 流氷の上に立っているペンギンの親子

4 流氷の上に立っているペンギンの親子は存在しない

どうでしょうか。
4を読み終えた後にペンギンを消し去ることは出来ましたか。流氷はまだあなたの頭の中に存在していましたか。または、何も考えないようにしましたか。

これはアメリカの大学で脳神経学の授業を受けていた時に、脳の仕組みを理解するために教授がクラスでしてくれた思考実験です。

人間の脳というのは、否定形は理解し難いと言われています。否定形を使うことにより本当は考えて欲しくない事まで相手に考えさせてしまったり、逆に考えて欲しい事を無視させてしまったりするのです。

魔法に見える洞察力と分析力

トムさんの著書「チャレンジング・トム: 日本女子バスケを東京五輪銀メダルに導いた魔法の言葉」の中に、否定形を使わない事により、選手の可能性を最大限に引き出した経験が書かれています。

「10回シュートチャンスがあったら、8回は3ポイントシュートを打って、残りの2回はドライブでもOKだよ。」

チャレンジング・トム: 日本女子バスケを東京五輪銀メダルに導いた魔法の言葉

第2章の中で、トムさんが宮澤選手にこう伝えるエピソードがあります。この伝え方に私は物凄く感動し、トムさんが「言葉の魔術師」と呼ばれる所以をそこに見た気がしました。

上記の思考実験でペンギンを思い浮かべないようにする為には、他の違う事を考えるという方法が一般的です。シロクマやアザラシを思い浮かべる事によりペンギンを忘れるのです。

私たちは日々の生活の中でやってはいけない事から気をそらし、考え方を変え、その都度周りの状況に順応する様に気を付けています。心に余裕がある時にはそれが難なくできたりもします。

しかし、過度なストレスを感じている時や、プレッシャーの中ではそれが難しくなり、思考を止め直感で動いてしまいます。私達人間はそうやって危機を乗り越え生き延びてきたので、それが正しい判断です。

しかし、社会生活を送る上で直感だけに頼る事の危険性もまた私たちは理解しています。
そんな時に、トムさんが選手に指示したように、やるべき事とやっても良い事をしっかり数値化して伝えてくれる人がそばにいれば、どんなプレッシャーの中にいても自分の能力を最大限に活かせるチャンスをつかむ事ができるのだと思います。


あなたが「トム」になるという発想の転換

私はこれまで不登校生徒やその保護者、担任教諭等を対象にコミュニケーションの取り方や気持ちを伝えるトレーニングを行ってきました。

その中で気づいたことは、「これをして欲しくない」と伝える事の難しさです。して欲しくない事ではなく、その替わりにして欲しい事を伝える事が必要なのです。

人間関係に課題がある人の多くは、「なぜ私が相手がやるべき事を考えなければならないのか」という思考に陥っています。それをする事が負けであると思ってしまい、良好な人間関係を確立したいというゴールを見失ってしまうのです。

悲しいかな人は変えられません。変えられるのは自分だけです。だからこそ、相手にトムさんになって欲しいと願うのではなく、自分が周りの人にとっての「トム」になるという発想の転換が必要なのです。

もし今あなたが、家族や友人、上司や部下との接し方に悩んでいるとしたら、シンプルかつ相手の思考に直接働きかける声かけのヒントがちりばめられたトムさんの本は、とても参考になると思います。ぜひ読んで感想をシェアしてくれたら嬉しいです。

代表戦@沖縄アリーナ

読んでくれてありがとうございました!

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