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いちについて~線の向こう側~

大森慶宣展
NO BOUNDARIES いちについて

中 乃波木さんの個展会場でフライヤーを目にした時、能登のキリコ祭の炎のように燃え上がる「絶対行く!」の意志。
会期二日目にその願いは叶った。叶えた。
急に寒空の小雨降る日曜日。
北陸らしい天候だ。

会場は郷土の偉人・西田幾多郎の哲学に触れることの出来る西田幾多郎記念哲学館。
世界的に有名な建築家・安藤忠雄氏が設計を手がけた建物は曲線と光の入り方がとても印象的だった。
建物自体が芸術で哲学。
その体内に絵画という芸術が待っている。
大森さんの絵画は安藤氏の建築を糧にしていた。

高い天井のガラスからさす曇天の微かな光が時間の経過と共に作品の立体感、角度、色彩に変化を与える。
北陸の光さえも糧にしてしまう底知れぬエネルギーを秘めた大森さんの絵画。

大森さんの作品との初めての出会いは2019年。
当時はまだガラケーでSNSのSの字も知らなかった自分は情報や繋がりが今より希薄だった。
必要最低限のコミュニケーションの世界で生きていた。
そんなアナログ人間は大森さんの幅広いジャンルのアートに集中出来ずその魅力をしっかり味わうことが出来なかった過去を持っていた。
今回二年の時を経て多少現代化した環境や己の内なる「我」を確かめたく、能登のキリコ祭の炎が心で燃え上がったのだ。

大森さんも物理的には同じ二年という時間を経ている。
誰もが時間を生きているのだなと在廊中の大森さんとお話をして感じた。

展示物の撮影は可能だったがこの鳥肌や感情の高ぶりはスマホのカメラでは伝えられない。
会場で作品に触れないように後ろ手を組みチューチュートレインのように舐め回すように右から左から斜め上から斜め下から………
そして時間をかけて何周もする。
光が変わっているから。
さっきまでの色から放たれていた色気と違う。

パンプキンケーキの味
紫芋のスイートポテト
レモンティーの湯気

作品から味や香り(匂い)を感じる。

大森さんの想いの重みを受け止める。

大森さんは二年の間に遥か彼方で太い軸を掴んだように思えた。そして、こんな自分でも作品に寄り添える視野を得られているように思えた。自分も成長出来たのかな。出来ているんじゃないかな。

哲学って響きはとてつもなく難解だけど大森さんや乃波木さん、可愛いお子さんの柔らかくてあったかくて居心地の良い笑顔や笑い声が、三年前の頑なな自分を許してくれている。
そう噛みしめていた。

絵の具の溜まりやかたまりが脈打つ生命

絵の具の溝は波のうねりの層

重厚で鮮明な色が血管を流れる
血液のように激しく力強く

今回の展覧会に来られて良かった。
本当に、清々しく
空は厚い雲に覆われていても
心は晴れやかで

大森さん、解き放ってくださってありがとうございました。


ある一枚の絵

(嵐)

白桃の春の息吹き
散らす緑の綿毛
四つの季節が輪になって
大合唱を奏でる


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