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【山羊日記#13】拝啓キキさま

地上波で「魔女の宅急便」が放送された。
約二年ぶりらしい。
ジブリ作品はどれも毎回違う発見がある。
年齢によって視点が変わる。
観方が変わる。
泣くとこが変わる。

魔女の宅急便は中でもとりわけ好きな作品だ。
今回はどんな発見があるだろう。
そして久々の魔女宅ははじまった。

風に吹かれ空を仰向けで見上げるキキ。
携帯ラジオから天気予報。

あ、やばい。
なんかジーンときてる。

いくらなんでもはやすぎる。
と、いうかこの作品、終始90%の心のフルフル状態が続くことに気がついた。(今さら?今だから?)
少し傾ければグラスの水は溢れてしまう。
なんだかそんな気分にさせるのだ。
悲しいとか苦しいとかの涙じゃない。
大人になる前の…
あの脆い特有な…
不安定な感情がこみあげてきて
ずっとちょっぴりセンチメンタルなのだ。

     13歳の旅立ち

魔女のしきたりで13歳のキキは満月の夜違う街へ一人前の魔女になるための修行へと旅立たなければならない。
出発の日、父親に抱っこをせがむキキ。
一度抱え上げる体勢を整える父がとてもリアルで重たくなったことがキキの成長を物語る。
そこで涙がにじんできた。(自分が)

ここかぁ~

だって13年しか親子で一緒にいられないなんて短すぎる。寂しいよ。いやだよ。

      新しい街

海の見える大きな街。
時計台がシンボルで沢山の建物が並び人もひしめきあっている。
それなのに魔女のキキの存在など気にもしない。ただ珍しさはあれど。
こんなにも人がいるのに…
大勢故の孤独がむしろ心をしめつける。
不憫だ。まだ13歳なのに。
冷たすぎる大人たち。
警察まで現れる。
落ち込むキキ。
公園でサンドイッチを食べるキキ。
包みからして母親が作ってくれたものだろうか。
そして日が暮れる。
グーチョキパン店(パン屋)の前で街を眺めるキキ。途方に暮れる。
もうこちらもジーンと泣きそうだ。
と、いうか常に90%のグラスの水なのだが。

     試練とご褒美

緩急のバランスが絶妙。
心ウキウキすることの後に落ち込むことがこの作品には順番にやってくる。
観ていてそのリズムが心地よくバランスが保てている。
90%をキープ出来るのもそのおかげ。
パン屋のおソノさんとの出会いで
まだもう少し頑張ってみようとなる。
トンボが気にかけてくれる。
相棒の黒猫ジジが傍にいてくれる。
ニシンとカボチャのパイのおばあさんの優しさに包まれる。
13歳の少女が知らない土地で宅配の仕事をして成長していく。

     謎を考える楽しさ

ジジの言葉がわからなくなる。
「ニャー」しか言わない。(聞こえない?)
きっとトンボに恋をして魔法が使えなくなったんだと思った。
ホウキで飛べなくなったのもそう。
でも、ラスト、デッキブラシでトンボを助けるために飛べた。
魔法の力はあるんだ。
それなのにジジは「ニャー」しか言わない。
言葉がわからないのかキキはそれさえ微笑んで流す。
受け入れたのだろうか。
魔法の力は戻ったはずなのに猫の言葉がわからないままなのはなぜだろう?
色々考えた。
結局結論は出ないけど、キキがひとつ大人に近づいたことでアンバランスな波をひとつ越えたんだということにした。
また、その波はやってくるだろう。
キキは画家のウルスラに相談したりおソノさんに笑ってもらったり、おばあさんの家の電球を換えたりお茶したり、デザイナーのお姉さんとファッションの話をしたり、トンボとケンカして大人の魔女になっていくんだろうな。

でも、相棒と人間の言葉で話せなくなるのは辛い。しかもジジは白猫と恋に落ち結ばれる。子猫も出来る。なんだか、この作品で妙にひっかかっているところがここでもある。
一言で寂しい。
人間と猫、境界線もなく生まれた友情。
どこか遠くへいってしまったような空しさ。
猫としての、ジジの幸せを思えば祝福すべきことなのだが。なんだか、やっぱり、寂しい。

ジジ、せめて話だけでもしようよ。

そして、もう一人のキキ。
画家のウルスラについては長くなるのでここまでに…

ちなみにパン屋のおソノさんの夫がなだぎ武さんに見えて仕方ないのであった。


拝啓キキさま
元気でやってますか?
今度届け物を頼みたいのですがよろしいですか?
また、ご連絡します



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