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積極財政に転換し、みんなで支え合える社会をつくる!

選挙戦もいよいよ終盤です。期間中、様々な政策を訴えていますが、根っこはどれも同じだと思っています。「みんなで支え合える社会をつくる」です。それは、人権やヒューマニズムの観点から大切なのはもちろん、国家を成長、発展させていく上で、必要不可欠でもあります。

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本日、衝撃的なニュースが目に飛び込んできました。

新型コロナウイルス感染拡大を機に、失業が長引く女性が急増した。総務省の労働力調査では、4~6月の3カ月平均で失業期間が6カ月を超えた女性は34万人に上り、昨年平均の28万人を上回る。昨秋から高止まりしており、支援団体は「女性の失業は子どもの教育環境や家族関係の悪化につながる」と国の支援の必要性を訴えている。(上記記事から抜粋)

これは、誠に深刻な事態です。政府はあらゆる手段を用いて、迅速に、対策を打たねばなりません。もたもたしていると、それだけ失業が長期化し、キャリアの断絶、生活破綻に直結してしまいます。もはや、一刻の猶予もありません。

しかし、こういう話をすると必ず「財源は?」という意見が飛んできます。下記の図の通り、日本はここのところ、税収を上回る歳出が続いており、足りない分は、公債によって賄っている状況であることは事実です。「苦しい状況なのは理解できるが、もう、日本には人を助ける余裕はないのだ」というわけです。

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出典:財務省HP『財政に関する資料』

これは、現実的な、もっともらしい意見のようですが、私は間違っていると確信しています(※ マクロ経済理論の観点からの理由は、末尾に記載しています。ご関心のある方は、ぜひご覧ください!)。

人は、深刻な事態に陥れば陥るほど、自力で生活を立て直すのが困難になります。一方で、国が早期に介在し、迅速な支援ができれば、すぐに日常生活に戻れます。前者の場合、人は生涯に渡って社会からの支援を必要とすることになり、その分、財源は圧迫されます。しかし後者は、逆に納税者となり、社会を支えてくれるようになるのです。

実は、これは机上の空論ではありません。人類の歴史の中で、近代国家は幾度も大不況に見舞われてきました。都度、世界中の人々は職を失い、貧困に苦しむことになります。まさに、現在の日本の状況と同じです。

しかし、同じ大不況に陥っても、すぐに活力を取り戻す国と、何年経っても不況から抜け出せない国が、はっきり別れていたのです。同じ環境にあったはずなのに、なぜなのか? それを公衆衛生学・経済学の観点から分析して明らかにしたのが、デヴィッド・スタックラー教授とサンジェイ・バス博士です。その内容は、名著 『経済政策で人は死ぬか? - 公衆衛生学から見た不況対策 - 』にまとめられています。今回は、本書で紹介されていた事例をひとつだけ、ご報告させていただきます。

まだ、記憶に新しいと思います。リーマンショック。そしてそのリーマンショックによる大不況に立ち向かった、ギリシャと、アイスランドの話です。2つの国は、正反対の経済政策をとり、正反対の道を歩むことになります。

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出典:『経済政策で人は死ぬか? - 公衆衛生学から見た不況対策 - 』p139

この不況に際して、ギリシャ政府は、国家の財政を維持するため、社会保障費を削る決断をします。つまり、困っている人を、見放してしまったのです。もちろん、政府も好きでそうしたわけではありません。国家財政が、破綻寸前だったのです。もし、財政破綻してしまったら、取り返しがつかない事になる……、そう考えた末の、苦しい決断でした。

その結果、どうなったか。

多くの人々は失業し、家を差し押さえられました。当然、心身ともに健康が悪化しますが、医療費が削られてしまったので、病院にもいけません。街にはホームレスが激増(2009年から2011年で25%増加)し、同時に治安も悪化して、殺人事件も頻発します(2007年から2011年で2倍)。

そして、もはや先進国の問題とは認識されていなかった新規HIV感染者数は、2011年に、前年同時期比52%増。これは、新規の麻薬使用者の激増と相関関係にあります(注射の針を使って麻薬を使うので、それを使い回すことでHIVが広がります)。うつ病患者も増え、自殺者も急増(特に男性は2007年から2009年にかけて24%増)しました。

本当に、目を覆わんばかりの事態です。しかし、それでも、この対策を断行した結果、国の財政が持ち直し、力強い経済が実現したのなら、ここまで深刻な被害を受けた一般市民も、ほんの少しは報われた、かもしれません。

しかし、現実は誠に非情なものです。国民生活に欠かせない医療費や社会福祉費を削ってまで経済財政を立て直そうとしたのに、あらゆる社会問題が国中に蔓延し、税収は、むしろ激減してしまいました。加えて、増加した犯罪や問題を抑え込むのに、これまで不要だった税金まで必要になります。経済財政はむしろ、悪化しました。


同じリーマンショックの大不況が直撃する中、アイスランドはギリシャと全く逆の経済対策を取ります。アイスランドも、ギリシャと同様に、国家財政破綻の危機に見舞われていのに、です。むしろ、グローバル金融の波に乗って急成長を遂げていたアイスランド経済の被害は、ギリシャ以上でした。

しかし、アイスランドは、この局面でむしろ、社会保障関連費を増額します。みんなで助け合う選択をしたのです。金融危機以前の2007年にはGDPの42.3%だった政府支出は、金融危機発生後の2008年には57.7%にまでなっていました。

世界中の有識者からは、こうした財政政策は負債膨張やインフレに繋がるのではないかという警告が発せられましたが、そういった事にはなりませんでした。

むしろ、先の図で示した通り、アイスランド経済はここから奇跡の大復活を遂げます。しかし、それはなぜか。

まず、アイスランド政府は失業対策で公共職業安定所の予算を大幅に増やします。これによって、失業者増加に歯止めがかかりました。そして、家のローンが支払えなくて困っている人には、国が補助を与える形で、差し押さえを防ぐことができました。そのため、ホームレスも増えることはありませんでした。

医療制度も維持された為に、人々は病気になれば、今まで通り病院に通うことができたのです。うつ病患者や自殺者数についても、2007年から一貫して減少し続けます。

こういった政策の効果は、経済だけでなく、人々の心にまで反映されました。2012年の国連世界幸福度報告書によれば、アイスランド堂々の上位にランクインしていたのです。

アイスランドは、この未曾有の大不況の中、一見コストが多くかかってしまう「みんなで助け合う論」を貫き通すことで、この逆境を乗り越えたのでした。


この事例が示唆するところは、既に述べた通りですが、繰り返させてください。

人は、深刻な事態に陥れば陥るほど、自力で生活を立て直すのが困難になります。一方で、国が早期に介在し、迅速な支援ができれば、すぐに日常生活に戻れます。前者の場合、人は生涯に渡って社会からの支援を必要とすることになり、その分、財源は圧迫されます。しかし後者は、逆に納税者となり、社会を支えてくれるようになるのです。

今回はリーマンショックの事例でしたが、本書では他にも、1930年代の大不況、1990年代のソ連崩壊による東側諸国の大不況、同じく1990年代のアジア通貨危機などに対する、それぞれの国家の経済対策を分析していますが、出した結論は同じです。

緊縮財政政策を取った国は悲惨な状況に陥り、積極財政政策を選んだ国は、その経済不況の衝撃をかなり緩和することができている、ということです。

これまで人類が歩んできた歴史、そして科学的分析に思いを致し、日本は、予算を増やしていく積極財政に転換すべきです。今、困っている人たちを、迅速に支援せねばなりません。

また、単に国債を新たに発行するだけでは金利が上がってしまいますので、日銀にも引き続き金融緩和を続けてもらうことは欠かせません。積極財政と金融緩和が今の日本に必要な経済政策です。残念ながら野党はアベノミクスで始まった「異次元の金融緩和」に対して批判をしているようですが、それは世界的な流れに完全に逆行するものです。

人の成長、それを支える健やかな暮らしなくして、国家の成長はありえません。この選挙戦、なんとしても勝ち抜き、国民の暮らしを支えられる政策を実現させます。ぜひ、私に、その仕事をさせてください!何卒よろしくお願い致します。



※ 日本は、税収より歳出が多く、足りない分は公債で賄っているが故に「日本にはもう財政的余裕がないから、困っている人を助ける余裕はない!」という意見があります。しかし、これは誤りです。

例えば、会社の財務内容を、いくら資産を持っているか無視して、借金の金額だけでみても、意味がありません。有名な国際比較データであるIMF(国際通貨基金)の「財政モニター」2018年版のデータによれば、日本政府をその純資産の金額でみると、わずかに純債務国ですが、米英をはじめとする主要先進国よりもはるかに債務が少ない健全財政国です。

財政が健全である最大の証拠は、わが国の国債の金利が極めて低いことです。いまにも破綻しそうな国に対して、お金にシビアな世界のヘッジファンドやウォール街の投資家たちが、安い金利でお金を貸してくれるわけがありません。

また、政府の財政は常に黒字である必要はなく、むしろ不景気な時には財政支出で景気の下支えをすることが求められます。いい方を変えれば、いまのように20年以上続いているデフレに重ねて、さらにコロナの悪影響で不景気となった経済状況の下では、政府の財政は新規国債を財源とした赤字財政でなければ、経済にブレーキをかけてしまうことになってしまいます。

こうしたマクロ経済学的な議論のほかにも、財政支出がどのようなメカニズムで生活を支えるのかという視点が大切になります。市場メカニズムに任せていたのでは、障害や病気など様々な原因で失業や貧困など悲惨な生活に陥ってしまい、立ち直れない人々を支えることこそが政府の役割だと確信しています。