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論理的に考えることを論理的に考えてみた

こんにちは。間山です。

今日、レバレジーズに入社してくれた新卒向けのThinking Training研修ということでロジカルシンキングについて講義をしたので、その勢いで、論理的に考えるということを解説したいと思います。講義内容は機密事項にあたるので、ここに書くことを完全に一致しているわけではなく、以下は私見ですのであしからず。また少し長くなるので、一つずつのテーマを咀嚼しながら読んでくれた方がいい気もしてます。

あなたは論理的ですか?感覚的ですか?

「あなたは論理的ですか?感覚的ですか?」と聞くと、10人に9人は「どちらかというと感覚的だと思います」と答えます(間山の「感覚」値です)。感覚的と答えた9人に対して、「では、論理的に考えるとはどういうことですか?」と聞くとたいてい言葉につまります。みんな、論理的に考えることがどういうことかをそもそも考えたこともないし、それを理解していないだけなのではないかとたまに思います。


論理的思考、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング。呼び方はなんでもいいですが、これらは持って生まれた頭の良さではなく、スキルであり、後天的に習得可能である、と考えています。多くの人は、「自分は頭が良くないから」「ロジカルが苦手」と最初から放棄をしている、もしくはその必要性を十分に理解していないが故にスキルを身につけることを放棄しているだけです。

では、論理的思考とはいったい何を指しているのか。このnoteを読んでくれている人は少なからず論理的思考に興味があり、かつ、あわよくば、それを何とか手間をかけずに身につけようと考えている人だと思います。せっかくなので、間山といっしょにちょっと考えてみましょう。

論理的思考について、あるコンサルタントは論理的思考を以下の四つに分けて説明しています。

1.事象を論理的に個別要素に分解する力
2.分解した要素間の関係を理解する力
3.事象を定量的に理解する力
4.個別要素を積み上げて統合する力
(「経営者になる経営者を育てる」菅野寛著より抜粋)

難しそうですね。これを間山なりに噛み砕くと「論理的に考える」とは「分ける」「つなげる」「比べる」「あわせる」の四つの要素を組み合わせたものと言えます。

論理的思考が苦手だ、という自覚のある人はこのうちのどこが苦手なのかをまず自分自身で考えてみてください。そもそも分けることができないのか、分けることはできるけどつながり(要素ごとの関係性)が理解できないのか、そうでなくて事実ベースまたは定量的に考えられないのか、最終的に結論を出すことができないのか。

今回、この四つの要素を解説していきたいと思います。

論理的に考えるということは「分けること」

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分けることについて人材紹介サービスのキャリアアドバイザーを例として考えていきます。

3月、6名の求職者を就職に導いたAさん。新年度の初月である4月、思い切って前月比2倍の12名の支援をする目標を立てました(自ら高い目標を立てる営業職の鏡のような人ですね)。そこで、4月に12件を決めるため、計画を立てることにしました。

この12件の決定目標を「分解」してみてください。

いくつも分け方はありますね。例えば決定を目指す求職者の属性で年齢別や性別に分けることもできますし、時間軸で分けて1週目、2週目、3週目、4週目と時間軸で分解することもできます(これを層別分解と言います)。

また決定を目指す求職者の数(決定数とします)を面談と面談からの決定率(これを展開率と言ったりします)という要素に分解することもできます(これを変数分解と言います、またビジネスの世界では因数分解するとか言われるときはこの変数分解を指すことが多いです)。

もしくは決定に至るまでの工程で面談、企業への推薦、面接の設定、面接の実施、内定、とプロセスで分けることもできます(これはプロセス分解と言います)。そして、これらの方法を組み合わせて、1週目に男性の面談をxx件、女性の面談をxx件・・・と分けることも可能です。

論理的思考が苦手だという人はそもそも要素を分解するということをせず、12件という結果を全体として捉えて考える傾向がありますし、また分け方が分からないと言って、そこで思考を停止してしまう傾向があります。

分からないときは分かる大きさになるまで分解する

これが論理的思考の最初の一歩です。そして分解したひとつひとつの要素について思考していくことで、ただ漫然と考えるという行動が少しだけ論理的に考えることに変化します。また分け方については知っているか知らないかが重要な要素です。層別分解については5Wで考えるなど、方法論を検索してみると、すぐにできるようになります。

例えば、英語の文章を読むことを想定してみてください。「全体として理解できない」という状況において、最初のセンテンスが分からないのか、二つ目のセンテンスが分からないのか。センテンスが特定されたら一文目が分からないのか、二文目が分からないのか。文が特定されたらどの単語が分からないのか。という形で理解できないことを特定することが大事な気がしてきませんか。

分からないときは分かる大きさになるまで分解する

大事なので二回言いましたが、ここでつまずいていると自覚している人は是非、実践してみてください。

論理的に考えるということは「つなげること」

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二つ目の「つなげること」について書きます。

分からないときは分かる単位まで分解することが大事ですが、分けるだけだと実は落とし穴があります。

要素を細かく分ければ分けるほど、問題点の把握はしやすくなりますが、部分最適に陥りやすく、全体として望ましくない結果になることも少なくありません。組織を細分化するとそれぞれが有機的に動けるようになりますが、個々の部署でセクショナリズムが生じ、互いに自己の利益を守るばかりで、不要な競争を招き、結果的に顧客に向き合えなくなるなど、容易に想像できると思います。ちなみに細分化の陥りやすい罠については「サイロ・エフェクト」という本が面白かったので興味がある人は読んでみてください。

なので、論理的に考えるためには要素に分けるだけでなく、それぞれのつながりを考える必要があります。

論理的なつながりとしてよく使われるのが演繹法だと思います。「AはBである。BはCである。だからAはCである」という三段論法は聞いたことがあると思いますが、これをもとに考えると少し遠回りになる気がするので、もっと俗っぽい方法論を書きます。

すごく簡単に書くと、論理的なつながりを意識するためには思考や会話の際、接続詞を使いこなすことです。

当社のメンバーであれば、よく間山から「なんで?」「具体的には?」「要するに?」「で、何が変わるの?」「他には?」とかって質問されると思いますが、これは接続詞をつけて考えてほしいからだったりします。「なんで?」に対しては「なぜならば」ですし、「具体的には?」に対しては「たとえば」ですし、「要するに?」に対してはそのまま「要するに」ですし、「で、何が変わるの?」に対しては「よって」とか「したがって」とか、「他には」に対しては「それに加えて」って具合です。

これはどういうことかというとこれらの接続詞を正しく使うことで「原因と結果」という因果関係や「具体と抽象」といった関係、また必要条件や十分条件といった関係が明らかになり、そのように要素のつながりを考える思考の癖ができます(「原因と結果」については「原因と結果の法則」という古い本が、「具体と抽象」についてはそのまんまの名前の比較的最近の本があるのでこれも興味があったら読んでみてください)。意識や習慣は変えにくいので自分が使う言葉自体を変えてしまうことで論理的な思考を実践し、結果を変えるということです。

具体例が少ないのでちょっと分かりにくい気もしてますが、みんな普段からやっているはずで、決して難しくありません。

たとえば、営業において目標とするプロセスと現実の数字の乖離の原因を明らかにする際には「なぜ?」で掘り下げていっているし、その過程で「要するに」と課題を抽象化しているはずです。施策に落とし込むときには「したがって」と結果を考え、その施策の根拠については「なぜならば」で武装しているているはずです。新卒であれば、先輩や上司などのサポートを受けてこれができていればまず結果を出すことはできると思いますが、同じことを自分一人で考えるときにもできるようになること、また反対に自分が誰か(特に後輩やメンバー)に対して思考のサポートができるようになることが理想です。学習の5段階で言うところの「無意識的有能に意識的有能(無意識でやっていることを意識的に説明できるようになること)」です。ついでに一応、言っておきますが、考えるときや説明するときはできる限り「書く」ということは忘れないでくださいね。頭だけで考えることは考えた気になっているだけで実際は考えていないことも少なくないので。

つながりを意識するために接続詞を使いこなすこと

つながりを語るにあたり、他にも帰納法的な思考も重要ですね。これは、たくさんの事例を集めて、共通項を抜き出していく考え方です。例えば、「会社で活躍している人はどんな人か」という命題に対して、活躍に必要な要素に分解して考えるのが演繹法的なアプローチに対して、実際に活躍している社員をあげて、その特徴を抜き出していくという思考法が帰納法的アプローチです。こちらは感覚的という自覚がある人は比較的得意なアプローチ方法だと思うので、注意点だけお伝えします。一部の事例が全体を表していると誤認するとひどいことになるので、帰納法的なアプローチをする際にはある程度たくさんの事例を集めてください。また本当にそうかな?という反証を自分で十分にして、確からしい結論を導いてください。

論理的に考えるということは「比べること」

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3つ目。比べる力について書いていきます。

例えば、BさんとCさんはどっちがすごいか?と聞かれたら基準や尺度が明確でないので、人によって答えが変わってしまいます。一方、BさんとCさんはどちらが年上ですか?と聞かれたら年齢という尺度が明確であるため、二人の年齢という情報をもっている人は正しい答えを選択できるはずです。

また人は何かを理解また把握するとき、既知である何かとの比較の必要です。まったく新しい何か(それが存在するかは別の議論なのでおいておきますが)の価値を正しく評価することはとても難しいことです。

そして比べる際にとても大切なのは前提条件をそろえることです。

小学校で習った分数の計算において分母をそろえる必要があることを思い出してみてください。そのままでは比べられず、比べられないと計算ができません。比べもせずに「なんとなくすごい」とか「なんとなく大きい」というのは論理的思考の最大の敵のひとつです。

例えば、人材紹介にいて、推薦した求職者の人数で比べる場合、Bさんは20推薦、Cさんは5推薦でした。どちらが多く推薦したでしょうか?

どう考えても20推薦したBさんですよね。でもBさんは月間の推薦数、Cさんは日次の推薦数だったらどうでしょうか?Cさんは月間100推薦できるペースで、Cさんの方が推薦数が多くなる可能性が高いです。すごく簡単でかつ極端な例ですが、大なり小なり前提条件を揃えないで比べるのはビジネスにおいても後を絶ちません。前提条件を揃えて比べないと誤った結論が容易に導かれてしまいます。

また別の事例としてDさんが一日に3推薦、Eさんが一日に2推薦だとします。

単純に一日という単位での量を比較するとDさんの方がたくさん推薦していますが、Dさんはその日、面談に5件入っていて、Eさんが1件だけしか入ってないとするとどうでしょう?どちらの方が効率的か、という比べ方をするとEさんの方が効率的とも言えます。

このように前提条件をそろえたとしても、どう比べるのか、比べる基準を明確にしておかないと正しい評価ができません。

前提条件をそろえて比べる

比べる基準を明確にする

もっとありそうですが、比べるときは上記を必ず守って正しく比べてください。

論理的に考えるということは「あわせること」

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最後は「あわせる力」について書いていきます。

これまで論理的に考えることを4つに分けて考えてきましたが、「あわせる力」ってのが一番、説明が難しい気がします。誤解を恐れず、これを要素から推論し、結論を出す力と言い換えてしまいます。

自分で考えてなんとなく煮詰まってきたら「で、何?」と自分に問いかけてみてください。

よくあるパターンがいろいろと課題を整理して、分析してみたけど、結局、どうしていいか分からず、分からないから今のままでいいや、というやつです。考えた結果、今のままの方がいいならいいのですが、今のままでいいやは何の改善もしておらず、だったら時間かけて考える意味なかったじゃん、と。

結論を出さずに論理的に考えることには意味がありません。それが思考の純粋なトレーニングであればいいのですが、ビジネスにおいては、仮にそれが最適解でなかったとしても、現在の思考の結果としての結論を出さないことには一切の行動変容がなく、無意味に近いです。

例えば営業においても営業に関わる数値をプロセスに分け、それぞれの関係性を理解し、それを比べて、相対的な位置を把握した結果、どのように次の行動につなげるか。ここは前にも書いたとおりですが、より具体的に言葉、また行動まで落とし込んではじめて論理的に考えた意味があります。

これを鍛える方法は自身で繰り返し実践することか、百歩譲って他者の経験を自分に置き換えてトレースすることかしかない気がします。

また語彙力も非常に重要です。少し前ですが、マッキンゼー出身の波頭さんからこんなお話をいただきました。

例えば、東日本大震災において、「メルトダウン」という言葉を知っているかどうかで行動の選択肢が変わる。「津波の原因として地震がある」という知識を持っているどうかもそうである。
根拠から結論を導き出すのはその間で推論が必要だが、推論するためには前提となる知識重要で、その前にボキャブラリー、つまり語彙力が必要。なぜならば論理的志向は言葉で表現されないと誰にも伝わらないから。
論理的思考力とすると一見して知識とは距離があるような印象を受けるだろうが、実は、たくさんの知識を掛け合わすことで論理的思考力に必要な結論を出す力、あわせる力ににつながる。言葉を知っていると(知識を持っていると)思考が効率化され、持っている知識を有効に使うことができる。
論理的に考えたいのであれば、語彙を増やし、それを使いこなすことが重要である。

まとめ

1.事象を論理的に個別要素に分解する力
2.分解した要素間の関係を理解する力
3.事象を定量的に理解する力
4.個別要素を積み上げて統合する力

この四つの力を解説してきました。

繰り返しますが、いかに論理的に正しく考えたとしても、言葉にしたり、行動に移さないことには何にも変わりません。言葉にすること、行動することができてはじめて第三者に伝わりますし、何らかの結果にむすびつきます。そして、副次的な効果として、他者から何らかのフィードバックが得られます。

論理的であることは目的ではなく、目的を果たすための手段です。論理的に考えられるようになることはとても大切ではありますが、それにこだわりすぎることなく、バランスよく考え、そして何より結果にこだわってビジネスを楽しんでいきましょう。


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