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『虎に翼』第4週感想 ~100年先への希望と絶望~ 

2024年4月期の朝ドラ『虎に翼』、私も毎日楽しみに見ています。
あくまで、私個人の体験や生活に引き寄せての感想なので、その点をご了承ください。
第4週目の感想です。

第4週のあらすじ・公式ダイジェスト動画は、下記のリンクからどうぞ。

急展開の第4週ラスト

まず、週間感想としては金曜日の急展開にも触れておかねばならない。
これまで、ほんわかホワホワ、昭和ヒトケタ時代の戸主の男性らしさがなく、どちらかと言えば現代的な人物に描かれていた、寅子の父「直言」。

その父が、世間を騒がす汚職事件に関わる重要人物として逮捕される展開となった。

見返してみると、今週はずっと「直言」の様子はおかしかった。
ハイキングの前に物言いたげに寅子の部屋を訪れたり、仕事がらみの飲みの席が多かったような様子もあった。

ナレーションでは、「ここから長い検察との戦い」とあったから、しばらくは、この件を中心に当時の法律や司法制度を知る回が続くと予想される。

100年前と今と、100年先

「直言」の事件の成り行きは次週以降に回すとして、第4週単体というよりは、ここまでの展開を見ながら、私が考えていることを書いてみたい。
ドラマの直接の感想ではなくなってしまうが、今書かないと、書くチャンスを逃してしまう気がしている。

ドラマを見ていると、うっすらとは知っていた過去の日本における女性の扱いが見えてくる。法律に裏付けされていた事実も相まって、よりはっきりとした輪郭を持って目の前に立ち上がってくる。

昨年2023年4月期の朝ドラ『らんまん』で、主人公の万太郎が行き合わせた自由民権運動。その集会で島崎和歌子さんが演じる「楠野喜江」が、女性の参政権を叫んでいたのが、設定上1881年ごろだ。
『虎に翼』のスタートは、確か昭和6年だったから、1931年。『らんまん』の自由民権運動から50年経っているが、参政権ばかりではなく、女性が弁護士資格を取るための法改正もまだだし、結婚をしたら財産はすべて夫の管理下で、日常の家事以外はすべて夫の許可が必要であると、法律に書いてある。

『虎に翼』の時代から100年経った今、法律こそ上記のような状況ではないが、社会全体にはまだ、昭和ヒトケタ時代の空気や考えが、そこかしこに染み付いていて、時々日常にも顔を出す。

そんなことを考えながらドラマを見ているうちに、今なお「区別」とされがちな「障害者」の人権について、私はついつい考えてしまう。

100年先の光をみる

今年2024年4月から、民間事業社にも、障害者への合理的配慮の提供が義務化された。

しかしSNSでは、誤解も含めて「合理的配慮」に抵抗感を持つ人の発信が吹き荒れている。障害者各個人の「性格」や「かわいげ」を「私個人」が感じられるかどうかによって、支援や配慮を「したくなる」「したくならない」といった感情論が渦巻いている。

また、障害者の出産や生死に関して、関係のない赤の他人が、平然と口出しをしている。優生思想的な意見を表明していることを「個人の感想」と言い切り、差別や人権侵害である自覚すらない。

ドラマの中でも男性が女性に向けて、「どこまで特別扱いを望むんだ!」というセリフがあった。現代でも、頻繁に見聞きする。

そんなこの時代の空気感。
それもいつかは、変わるのだろうか。

かつて「女性」というだけで、同じ土俵に立てなかった時代があった。いや、土俵に立つか立たないか、その選択肢があると気づいてさえいなかった。

今もまだ、昭和ヒトケタの価値観が香る場面はあるけれど、誰もが何かを自分で選択できる場面は、あの頃よりは増えたはずだ。

きっと、「障害者」に対する社会の空気も変わっていく。

ただ、『虎に翼』を見ていると、100年経って女性の生きている現実が今ここか……という、その道のりの途方のなさに、軽い絶望も感じてしまう。

それでも進んできた人たちがいたから、今の制度があり、社会がある。
変化に対して、恐れや軋轢があるのは当然だ。100年先の未来が変わるなら、今の変化も無意味ではない。できるなら、10年程度で変化は欲しいところだけれど。

次週、第5週の予告は下記のリンクから。

アイキャッチ画像:(UnsplashBlake Meyerが撮影した写真)

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