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詩「アンテナ」


橋を渡った先の
バッティングセンターが閉鎖された
一度だけ
ここへ来たことがある
高いフェンスが錆び付いて
ネットが風に吹かれて
足元を空き缶が転がっていく

国道沿いの食堂は
まだあの時のまま残って
昼下がりの光が
白い軽自動車を照らしている
こんなにも経ってしまったと思う度
まだここが在り続けているという
何てことはない
目の前に呆然として

約束は約束のまま
思い出は思い出のまま
見上げた先のアンテナに光が重なって
思わず目を瞑る

ここからなら何でも見渡せる
気がしても
こんなにも変わっていく
ただ同じ場所に立っているのに
もう会えない


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