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詩「ハイライト」

スーパーの陳列棚に
冷えた肉が並んでいる
その前を
たくさんの人が通過していく
腐れば価値がない
そのことを印すためのシールをぶら下げ
巡回する従業員が
ため息を吐くのはまだ先のこと
生と死が交差する
明るい灯のもとで
積み上げられたビスケットに
手を伸ばすこどもたち
伸ばさないこどもたち
あらゆる健康法を試す人の傍らで
今日も
自分が食うための飯があることが不思議だ
回る皿の上の肉
回る経済の上で
暴落する時間
雪が降っている
肉が腐敗する時間
雪が降り積もる
土に帰るまでの
長い時間

鶏肉
ハム
ソーセージ
パンの列を抜け
従業員が専用通路の奥へと
消えるのを見送る
缶詰
トイレットペーパー
ロウソク
乾電池
それら列を素通りして
表へ出ると
傾いた午後の光が射している

自動販売機の脇の
ベンチに腰掛け
煙草を吸ったら
肺の形が浮かび上がり
体がここにあることを
光は丁寧に切り取るようで
笑えた
指先に
一片の雪は舞い降りて


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