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詩「雨に隠れる背中」

何てことはない。傘の中に隠れただけのことだ。消えた背中を見送りながら、歩を進めるこの身もまた傘をさし、葉陰に隠れるようにして、一滴のしずくを見失う。そうしてまた、落とした言葉を忘れていくのだ。この先の角を曲がればにぎやかな通りが開けているはずだが、今はまだ聞こえないざわめきのようなものの前に、わずかに抵抗するように傘の先からもまた一滴のしずくは落ちる。しずくの向こうは雨。雨と雨の間に目をあててみる。






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