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暗箱

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#街

4:00 a.m

朝と名指すには未だ暗い 空には雲が低く垂れ込め ラジオの天気予報が雨を告げる 駐車場に 一台の車があり それを見下ろす高さの窓に ともった灯りが消える 街は 何ものにもならない顔をして 静かだ 高速を過ぎるトラックさえ 闇に紛れる気がして それを見送ると 管理室の灯りを残し 老いた男は煙草を吸う ガラスの灰皿に 今時マッチを放るのは 何てことはない ライターを忘れて引き出しを漁った それだけのこと 仕事が終われば 何ものでもなくなるようで 鍵は握ったまま ガラスの底に映る部屋

詩「終わらない日々」

街はもうなくなってしまう ようだ 国道沿い 遠くに見えた夜景 川沿いを鳥の影がさまよって消えた 海の方へ 目をやると ラーメン屋のネオンだけが光っている そして滲む 雨とか 涙とか 水溜まりがひとしきり揺れる幻 人々が移動していく 決して群れは作らず ひとりまたひとりと 都市を捨てていく 荒廃の果ての楽園 笑うしかない店先のドール かき鳴らされたギターの音だけが耳を塞いで それだけを覚えている それだけしか覚えていなくて 街の灯りがひとつ消える まるで 煙草の火を消すように