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腹痛の原因が何かわかる本 『症候別解説第3弾』【まとめ】

誰もが経験し、悩まされたことがあるであろう「腹痛」。

「なんでおなかが痛いんだろう」
「食あたりでもしたのだろうか」
「耐えるべきか病院に行くべきかどうか」
「何の薬が効くんだろう、市販の薬で効くのかな」
「もしかしてがん?」

と誰もが頭の中で考えたことがあるはずです。

そして「何科」を受診すればいいのか?これも皆さんを悩ませる理由の一つです。

今回のnoteは
✔︎なぜ腹痛が起こるのか?
✔︎腹痛の原因への迫り方
✔︎一般人でも判断することができるヤバイ腹痛の特徴
✔︎腹痛を生じるよくある病気一覧

といった内容を中心にまとめました。
一般の方、学生の方でも読みやすい内容になっていると思います!


1.なぜ腹痛が起こるのか?

※この章は少し学問的なので読み飛ばしていただいて構いません。

腹痛が起こる機序は主に2つあります。
①腹膜への刺激(体性痛)
②腸管自体への刺激(内臓痛)
③関連痛

ヒトのお腹の筋肉の下には空間が広がっております。この空間を腹腔(ふくくう)といいますが、この腹腔の中に肝臓や胆嚢、胃、腸など皆さんがよく知っている臓器が入っております。この空間は膜に裏打ちされておりまして、この膜のを「腹膜」といいます。

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※上図の黄色で覆われた部分が腹膜です。図では腹水という腹腔の水が大量に溜まっておりますが、健康な人では腹水はごく少量です。腹水が溜まっている場合は肝硬変などを考えます。

腹膜(特に壁側腹膜)は痛みを感じることができる神経があるため、腹膜が炎症や物理刺激などで刺激を受けると痛みを感じます(この神経が、胸痛のnoteでも述べた「一般体性感覚神経」です)。例えば、お腹の中が膿んでしまった場合は、腹膜にも炎症が及びますから、その部位が痛みます。また、壁側腹膜や腸間膜を針で指した場合、迅速に痛みを感じます。これが「腹痛」が起こるメカニズムの1つです。

一方、腸自体は上述した一般体性感覚神経は存在せず、かわりに一般臓性感覚神経が分布しています。この神経は消化管が伸びたり縮んだり、けいれんしたりしたときに、痛みを伝える神経です。この時に生じる痛みが「内臓痛」です。例えば胃腸炎で下痢を繰り返している時におなかが痛いのは、腸が激しく動くために生じる「内臓痛」によります。月経の時の痛みもこの「内臓痛」が関係しています。

そして3つ目の関連痛は、問題が生じている臓器から離れた場所に生じる痛みのことです。『胸痛のnote』でも触れましたが、関連痛について平たく説明すると、内臓由来の痛みが体表面由来の痛みと脳が勘違いしてしまうことによって生じる痛みのことです。例えば胆嚢に炎症が起こると、初期は胆嚢の内側の炎症のため「内臓痛」が生じ何となくお腹の上の方が痛くなります。そして右肩が痛くなるという「関連痛」が起こることがあります。胆嚢に分布する一般臓性感覚神経と右肩に分布する一般体性感覚神経が脊髄にの同じ高さに入るので、脳はどちら由来の情報か判断できず肩の痛みと勘違いしてしまうのです。胆嚢の炎症が進行し、腹膜にまで及ぶと右上腹部がはっきりと痛くなります。

関連痛で有名なものは虫垂炎です。虫垂炎の初期は腸の内側に炎症が起こりますから、内臓痛が生じ何となくお腹が痛みます。また関連痛としてみぞおちや臍周囲の皮膚に痛みが生じます。虫垂炎が進行し腹膜に炎症が達すると、はっきりと右下腹部が痛くなるのです(体性痛)。ですから、虫垂炎の初期は見逃されやすいのです


2.腹部の臓器をみてみよう。

腹腔にある臓器は次の図のとおりです。(※あくまで模式図です。)

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※一番右の図は真ん中の図から肝臓、胃、膀胱を取り除いたものになります。また腸全体を下に移動させたものとご理解ください。

実にたくさんの臓器がありますね(笑)。全部覚える必要はありません。でも聞いたことある臓器は右、左どちらにあるのかくらいは知っておいても損はありませんよ!また、今後の章で解説しますが、この図にある臓器すべてが腹痛の原因になりえるのです!

「こんなにたくさんあるのに、腹痛の原因が一般人に判断できるわけがない!」と思うかもしれませんね。確かにその通り!その判断は私たち医療者の仕事です。

しかし、
 「たくさんの原因臓器があるからこそ、腹痛の判断は難しい」
→「だから病院に行ってよく診てもらおう」

 「痛みの部位と臓器の位置から、おおよそ原因臓器の目安がついた」
→「適切な診療科を受診しよう」

そう思えるようになれば、それだけでもこのnoteを読む価値はあるのではないでしょうか。そしてこのnoteを読み終えた時、そう思えるようになっているはずです。

では次に命に関わる「ヤバイ腹痛」の症状、そしてその疾患について解説していきます。
何といっても皆さんにとって最大の懸念事項は、
✔︎自分の腹痛が命に関わるのかどうか
✔︎放置しても大丈夫なのかどうか
ではないでしょうか??

「ヤバイ腹痛」の特徴は次の章で詳しく解説します。↓↓↓

3. 「ヤバイ腹痛」の症状

では具体的に腹痛をきたす疾患・症状についてみていきましょう。
腹痛が生じた時にまず気になるのは
「この腹痛って放っておいたらヤバイのか?」
「病院に行くべきだろうか、様子をみるべきだろうか」
「病院に行くにしてもすぐに救急車を呼ぶべきかどうか」
かと思います。

「ヤバイ腹痛」を正しく認識する必要があります。
以下に記す内容は【絶対】の目安ではありません。しかし緊急性があるかどうかについては大きな目安になると思います。

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