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コロナウイルスとテレワークと働き方の未来。

新型コロナウイルスが猛威を振るっています。すでに政府はイベントや集会の自粛や延期を求めていますが、安倍首相が全国の小中高校について3月いっぱいの事実上の休校を要請したことから、事態は新たな局面に入ったとみることができるでしょう。

国はコロナウイルスに関するQ&Aを公表し、その事業所向けの内容では、テレワークの推進がうたわれています。

新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)

<テレワーク>
問1 新型コロナウイルスの感染防止のため、自社の労働者にテレワークを導入したいと考えていますが、どこに相談したらよいのでしょうか。また、どのような点に留意が必要でしょうか。

厚生労働省では、テレワークに関連する情報を一元化した『テレワーク総合ポータルサイト』を設け、テレワークに関する相談窓口、企業の導入事例紹介などテレワークの導入・活用に向けた各種情報を掲載していますので、参考にしてください。
テレワーク総合ポータルサイト

政府としてはコロナウイルス対策とテレワークとを結びつけ、かねてからの推進策を加速させていきたいという意図が読み取れます。このような動きもあって、テレワークに必要な環境や補助ツール、ソフトウエアなどを提供するサービスが加速してきています。「コロナ対策」の社会貢献を訴え「期間限定で無料提供」などをうたったプレスリリースも相当数にのぼるため、そうしたメディアを目にした人も多いと思います。

コロナウイルス自体は一刻も早く終息させなければならないし、終息に向かうことを期待したいですが、これが単に強烈な疾患というだけでなくある種の社会構造や働き方の変化に影響を与えていく可能性があることは、多くの人が気づいていることです。



大手企業の中には、販売部門や製造部門といったカテゴリーを除く従業員のほとんどに在宅勤務を命じるケースが出てきています。このような流れは現状では一部の大企業、大都市中心、ホワイトカラー中心ですが、騒動が終わってみれば「思いのほか在宅勤務も便利」といった感想を持つ人が増えるかもしれません。

そもそも日本のホワイトカラーは統計数値でも国際比較で生産性が低いことで知られます。タイムリーにコミュニケーションをとりつつ場所的自由や精神的自由を持ちながら、一定の成果に向けて自分のペースで仕事をしてみたら、「意外と業績が上がった」という結論に達するかもしれません。昨今のインターネット環境やモバイルの性能、ソフトウエアの充実ぶりからすれば、一日じゅうオフィスのデスクに座りっぱなしといった働き方は早晩次の時代の姿へと変貌してもおかしくはありません。



ここで私が懸念に思うのは、「相手との距離の取り方」です。テレワークが普及しさらに使いやすくなっていっても、ビジネスで求められる典型的なスタイルは一対一のコミュニケーションだと思います。一対多の構図でミーティングを重ねていったとしても、担当業務として責任を負う場面では一対一の構図に集約されていきます。

現代の若者は「コミュ障」が多いといわれます。若い男性を中心に、「固定電話に出るのが怖い」「相手の気持ちをくむのが苦手」といった事例が多く聞かれます。そうすると、テレワークやそれに基づく在宅勤務が広範に認められる社会になると、しばしばSNSなどで起こっている「コミュ障」現象がビジネスの場でも広がる心配があります。



たとえば、SNSでいうところのダイレクトメッセージやメッセンジャーといったクローズドのコミュニケーションはリアルの世界における固定電話、不特定多数がみえるところのウォールでのコメントなどのやりとりは会議やミーティングでの発言だとしたときに、ウォールでのやりとりばかりに熱中するあまり大切なメッセージへの対応を長期間に渡って放置してしまい、関係者をやきもきさせたり、場合によっては信頼を失ってしまうことが考えられます。

テレワークは場所的拘束から自由になり、作業が効率化される反面、コミュニケーション不足や会話力、人間力の欠如が掛算になって信頼喪失につながってしまう懸念もあります。その意味では、「相手との距離の取り方」「感情のくみ取り方」といった社会人としての基本を早い段階で習得していくことの必要性が、現在以上に死活問題になっていくかもしれません。



テレワークや在宅勤務の流れが加速した未来の働き方は明るいと信じたいですが、決して一面バラ色の世界ではなく感情操作を誤ると炎上しかねないリスクも増加していく可能性があるように思います。

学生時代に初めて時事についてコラムを書き、現在のジェンダー、男らしさ・女らしさ、ファッションなどのテーマについて、キャリア、法律、社会、文化、歴史などの視点から、週一ペースで気軽に執筆しています。キャリコンやライターとしても活動中。よろしければサポートをお願いします。