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男らしさ・女らしさはグラデーション

男は男らしく。女は女らしく。
多くの人はそんなふうにして、幼少の頃から「あるべき姿」に向かって育てられます。

でも実際には、男らしさとともに女っぽさを秘めている男性もいるし、女らしさだけでなく男っぽさを兼ね備えている女性もいます。

それは決して固定化されたものではなく、ある瞬間、男が女っぽさを発揮するようになったり、人格の成熟とともに女が男っぽさを垣間見せるようになることもあります。

ジェンダーは「グラデーション」だと言われることがあります。

男らしさ・女らしさには、濃淡があったり揺らぎがあるということが、今では良く知られている事実です。

かつては、男は男、女は女というふうに、概ね二分法でジェンダーが語られるのが通常でした。
なぜ、そうではなくてグラデーションだと理解されるのでしょうか。

ヒトは生命を宿った段階では性的に未分化

ヒトを始めとするほ乳類は、胎児として母親の胎内で生命を授かった段階では、性的に未分化であることが知られます。

つまり、男でも女でもない段階であり、男に生まれる可能性もあれば、女に生まれる可能性もあります。

妊娠前期において、性染色体がXYの組み合わせになると男となり、XXの組み合わせになると女になります。XYの組み合わせになった場合のみ、遺伝子からの指令によって男性ホルモン(テストステロン)が分泌され、心や身体が男になることが知られます。逆にXXの組み合わせの場合は男性ホルモンは分泌されないため、そもそものプログラムどおりに女としての心や身体を持つことになります。

ヒトのジェンダーの「初期設定」は女であり、性染色体XYの指令によって男性ホルモンのシャワーを浴びることによって、男の心と身体を持つようになります。

すなわち、性的な分化のメカニズムにおいては、男は女の「マイナーチェンジ」だということができます。

男性ホルモンのシャワーには揺らぎがある

性染色体XYの指令による男性ホルモンの分泌は、妊娠8週目以降に本格化します。しかし継続的に持続するわけではなく、20~24週目にはいったん終息し、出生後に再び分泌されることが知られています。

ところがこのような働きは必ずしも一律ではなく、男性ホルモンの分泌量やタイミング、期間などには個体差があります。

性的分化のプロセスにおいて、性染色体XYにおいて男性ホルモンの分泌が乏しかったり、逆にXXにおいて何らかの作用によって男性ホルモンの分泌を受けるケースが認められます。

これらの仕組みについてはすべてが解明されているわけではありませんが、男性ホルモンのシャワーには個体差があり、ある程度の揺らぎがあるということができるでしょう。

男性も女性ホルモン、女性も男性ホルモンを持つ

性ホルモンは、男性ホルモン=男性のみ、女性ホルモン=女性のみという単純な仕組みではありません。

男性の体内には女性の半分程度の女性ホルモン、女性の体内には男性の10%程度の男性ホルモンが存在し、それぞれかけがえのない役割を果たしています。


具体的には、男性ホルモンは骨格や筋肉の発達、積極的な思考などに深く関わり、女性ホルモンは自律神経のバランス、骨密度や血流の維持に大きな影響を与えています。閉経後の女性の更年期障害においてホルモン療法を実施する事例もありますが、男性の体内における女性ホルモンも生命活動の維持に大きな働きをしていることが知られます。

男らしさ・女らしさと正しく向き合おう

ひと昔前までは、男は男らしく・女は女らしくという、ジェンダーに基づく役割意識が広く社会通念として共有されていました。

しかし、性分化やジェンダーについての正しい理解が促進されるに従って、そのような二分法的なものの見方には限界があることが常識となりつつあります


世の中には男性と女性が存在し、それぞれが異なる特徴を持つ存在でありつつ、価値観や役割を共有する中で協力し合いながら生活しています。

男性の中に女性的な一面があるからこそ、家事や育児の場面においても男性が一定の役割を果たし、女性の中に男性的な要素を併せ持つからこそ、対人関係や経済活動などにおいてリーダシップを発揮することができます。


女性の社会進出の加速や男性の家事・育児などへの参加という社会的な役割の変化によって、旧来のような男らしさ・女らしさという固定化された役割意識は大きく変貌する時代になってきています。

男らしさ・女らしさはグラデーションだという正しい認識のもとに、ダイバーシティの時代にふさわしく互いに個性を認め合い、それぞれの人が「らしさ」を発揮できる社会を目指していきたいものです。

学生時代に初めて時事についてコラムを書き、現在のジェンダー、男らしさ・女らしさ、ファッションなどのテーマについて、キャリア、法律、社会、文化、歴史などの視点から、週一ペースで気軽に執筆しています。キャリコンやライターとしても活動中。よろしければサポートをお願いします。