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小泉環境大臣の「育児休業」に思う。

小泉進次郎環境大臣が「育児休業」を取得すると発表したことが話題になっています。

日本の育児休業の取得率は、女性が8割以上なのに対して、男性はわずか6%。

国をあげて女性活躍推進を掲げているはずなのに、男性の育児休業は思うように進まないことが、社会的な課題にもなっています。

育児休業は労働者の権利

育児休業は、法律で保障された労働者の権利であり、育児介護休業法では以下のように規定されています。

(育児休業の申出)
第5条 労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、次の各号のいずれにも該当するものに限り、当該申出をすることができる。
一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年以上である者
二 その養育する子が一歳六か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者
(育児休業申出があった場合における事業主の義務等)
第6条 事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。ただし、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうち育児休業をすることができないものとして定められた労働者に該当する労働者からの育児休業申出があった場合は、この限りでない。
一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者
二 前号に掲げるもののほか、育児休業をすることができないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの

育児休業を取得することができないのは期間雇用の労働者など一部に限られ、労働者から申し出があったときは、労働組合などとの協定で除外された者以外については、会社はいっさい拒否することは許されません。

なぜ男性の育児休業は進まないのか?

それなのに、なぜ男性の取得は進まないのでしょうか?

法律上、労働者の権利であることをうたっている以上は、多くの労働者が請求すれば当然に取得率は上がるはずです。

一部には、労働者が希望するのに脱法的にそれを認めない「ブラック企業」もありますが、国策でもある育児休業の権利を踏みにじる企業へは厳しい行政指導が行われるため、実際にはそうした例は少数派です。

多くは、「取りたくても忙しくて取れない」「とても職場がそんな雰囲気ではない」「男性が取得を申し出るのは恥ずかしい」といった、外部環境や企業風土に理由があると考えられます。

私の30代の友人は、昨年第一子が出生したときに奥さんと交代で育児休業を取得しましたが、上司からは「なぜ男性の君が?」という顔をされ、同僚からは相当困惑されたといいます。

家族と十分に相談を重ねた上での意思でしたから、周囲にも丁寧に伝えることで協力が得られたそうですが、取引先との関係なども含めて、理解をしてもらうには労力を要しました。

大企業に勤める彼がそうでしたから、中小零細企業や保守的な風土の強い地方などでは、まだまだ「男性が・・・」という目で見られる傾向も強いと思います。

小泉大臣の決断についても、さまざまな意見が飛び交っているようです。

男女平等、女性活躍推進の時代、男性も子育てに協力するのが当然だという意見も多いですが、出産する妻と経済的に家族を支える夫とは、そもそも担うべき役割が違うという意見も根強いです。

私が男性の育児休業に賛成する理由

私は、基本的には男性の育児休業の取得に賛成です。

それは、以下の3つの理由からです。

(1)そもそも子育てには母親と父親双方の協力が必要だから

育児はもっぱら母親が担うべきだという考え方は、本来的には日本古来の発想ではありません。

例えば江戸時代などは上級武士の子供は乳母が育て、農家や商家の子供は祖母や親戚などが共同で育てました。

明治以前の日本人は、庶民においては圧倒的に「共働き」が多かったので、母親だけが育児に専念することは困難だったのです。

(2)子育てには父親しか担い得ない役割があるから

男の子に対して身体を使って遊んだり、一緒にスポーツを楽しんだりする場面は分かりやすいですし、最近は女の子でもそうした遊びが好きな子は多いです。

さらに女性は感情を伝えたり、共感することが得意、男性は論理的に考えたり、ルールを教えるのが得意、という一般的傾向があるため、それは子育ての場面でも当てはまります。実際に、識字率が低かった時代には父親が読み書きを教えたり、亭主としてしつけを教えることも少なくありませんでした。

現在においても、父親が子育てにまったく関与しない家庭では、情緒が不安定な子供が多いという統計もあります。

(3)働き方改革や女性活躍推進を推進しているのに、男性が育児をしないのでは、国策は「絵に描いた餅」に終わるから

2019年の働き方改革関連法の施行によって、過重労働の規制強化や有給休暇の取得促進が法制化されました。

これによって確実に残業や休日出勤を含めた労働時間は減少し、有給休暇の取得日数は増加することが見込まれています。

そして2020年からの同一労働同一賃金のスタートによって、主婦パートの多くが該当する非正規雇用の待遇改善が期待されています。

これらは男性の働き過ぎを防ぎ、女性の社会参加を促進して、全体として国民が幸せになるための国策のはずです。

あるデータでは、労働時間が短くなっても夫は余暇や趣味に充てる時間が増えるだけで、妻のように家事や育児に充てる時間はほとんど増えないという笑えない現実も指摘されています。

それなのに男性の育児休業が進まないのでは、まさに国策は「絵に描いた餅」になってしまうでしょう。

小泉氏の判断は次の時代へのメッセージ

小泉さんの場合は大臣であり、国会議員ですから、そもそも育児介護休業法の問題ではありませんが、だからこそ省庁トップの判断として各方面から注目されています。

夫婦の子育てという観点もさることながら、今日的テーマへの問題提起とも捉えられる「育児休業」を通じて、私たちもこれからの時代の家族や子育てのあり方について真剣に考えていきたいものです。

学生時代に初めて時事についてコラムを書き、現在のジェンダー、男らしさ・女らしさ、ファッションなどのテーマについて、キャリア、法律、社会、文化、歴史などの視点から、週一ペースで気軽に執筆しています。キャリコンやライターとしても活動中。よろしければサポートをお願いします。