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#就活セクシズムとジェンダーフリー。

#就活セクシズムをめぐるインターネット上での署名活動が話題になっています。今のところ昨年の「パンプス論争」のような広がりはありませんが、就活という切り口でセクシズムを問う姿勢は社会性がありますので、これから確実に浸透していくように思います。

人間は生まれ持って男と女に完全に二分化されているわけではなく、子育てと社会的な役割分担によってジェンダー意識が確立していくといわれていますが、後者については確固として「男らしさ」「女らしさ」が強制づけられる関門である就活のプロセスが人格形成に与える影響はとても大きいからです。


署名活動では、以下の2点がテーマになっています。

1.極端に二元化した男女別スタイルやマナーの押し付けをやめて、多様性のある装いのスタイルを提案してください!

2.女性はこうすべき、男性はこうすべきという偏った表現は差別や抑圧につながるため見直してください!




「この世には2種類のジェンダーしか存在してはいけないかのような論調で、服装や振る舞いに関する指南がなされています」「男らしさや女らしさの押し付けを「マナー」と呼び、合理的根拠がないのにも関わらず、性役割を押し付けるのはやめてください」とする趣旨は、ジェンダーのあり方に照らしてもおおむね正当な主張だと、私も思います。

むしろ、冷静に大人が考えたら当たり前ともいえる、このようなジェンダーフリーの考え方に基づく社会運動が、2020年代を待たなければ本格化しなかったことの方が、今になって振り返ると不思議なくらいです。

人間の性格や価値観や身体的特徴はまさに多種多様であり、男性と女性に完全に二分化することができないことは、現在においては科学的にほぼ明らかにされています。もとより「両性の本質的平等」が規範となっている日本の法体系にあっては、性別を理由とする差別は許されるものではありません。

では、なぜこんな当たり前の議論が今まで本格化することがなく、また現在においても消極的にしか受け止められない風土が色濃く残っているのでしょうか。私は、大きく2つの理由があると思います。



1つは、あくまで男性こそが政治経済の主な担い手であり、夫が一家の大黒柱として家計を支える家族観こそが日本の伝統だと認識している人が今なお少なくないから。だから、metoo運動運動にしてもパンプス論争にしても、女性が男性並みに近づくベクトルに関しては社会的に受け入れられつつありますが、男性が女性の良さを積極的に受容して自己変革しようという潮流はほぼ浸透していません。

2つは、例えばなぜ女性だけが化粧することが求められるのかといった問題提起をした場合に、それはLGBTの人たちに代表されるマイノリティー特有の権利主張であり、圧倒的に多数派の日本人の意識や価値観を反映したものではないという認識が根強いから。だから、具体的な議論の矛先は、具体的な事情を抱えた人だけに例外を認めたらよい、とする例外論に終始しがちです。



私の個人的な意見。

それは、セクシズムやジェンダーフリーを通じた議論をさらに本格化させるには、男性サイドからの問題提起や意見主張の高まりがもっとも効果的なのではないかという意見です。悲しいかな、2020年段階の世の中では、男性はまだまだ観念としての「男性社会」の担い手としてマジョリティーに位置づけられているため、今なお男性というひとつの塊だという認識が主流です。

男性がセクシズムに悩みを抱えたりジェンダー問題に積極的に関与することは基本はないのが通常だとされており、そうした常識とは逆の認識や行動をとる人は個別に特殊な事情を抱えた男性という扱いをされ、概念的にはLGBTのようなベクトルにおけるマイノリティーだと位置づけられるのです。これでは、構造としての男性や男性社会そのものの本質を問うことはできません。



就活セクシズムを問うのであれば、ぜひ男性自身のあり方もしっかりと見つめ直してもらいたい。女性が就活において女性特有のあり方を求められ、仕組みとして差別的な扱いを受ける最大の原因は、男性社会のあり方にあります。したがって、たとえ化粧やパンプスについての規制が緩やかになったとしても、女性であること自体による差別の構造の本質は変わらないのです。

なぜ、男性はみんなと同じ色調とデザインのスーツを着なければならないのか。この答えは、男性だから、です。つまりは、女性ではない、ということ。機能性や多様性からすればまったくふさわしくない場面もあるスーツが、なぜここまで浸透して揺らがなかったのかといえば、それは経済社会の担い手=男性社会というスタンダードが基本にあり、その象徴的な記号こそがスーツというアイテムだからです。



しかし、このスタンダードはすでに確実に動揺をみせはじめており、人びとの意識も徐々にとはいえ確実に変わりはじめています。そこにコロナという病理の到来によってニューノーマル社会の実現が力強く要請されたことにより、時代の進展は奇しくも確実に加速しているといえるでしょう。テレワークといった機能性の充実や雇用されない働き方という身分制の変革は、これから確実にスーツ軍団という男性社会の絵が変わる序章になっていくことでしょう。

心ある若者、女性はもちろん男性こそが、新たな時代にふさわしい社会の担い方、働き方、そしてドレスコードを目指していってほしいものです。それが、ひいては確実に女性差別の解消や真の意味での男女共同参画時代をさらに引き寄せる力になることを願って。


学生時代に初めて時事についてコラムを書き、現在のジェンダー、男らしさ・女らしさ、ファッションなどのテーマについて、キャリア、法律、社会、文化、歴史などの視点から、週一ペースで気軽に執筆しています。キャリコンやライターとしても活動中。よろしければサポートをお願いします。