心から愛するミュージカル「ウィキッド」の日本語版歌詞がとても良くて、とても残念だった話
2023年12月24日マチネ回の劇団四季ミュージカル「ウィキッド」を観てきた感想文です。個人用メモである上に、普通に失礼な感想やネタバレがあるので気をつけてください。
また、主に歌詞の話であり、役者さんの話は全然してないです。だらだらと色々書いていますが、一旦吐き出したいだけで、残念部分もクレームじゃないです。直して欲しいとか全然思っていません。ここ重要なので、覚えておいてください。
前提
英語版Wickedは最&高
私が初めて「Wicked(※英語版は以降英語表記)」を見たのは2003年頃のブロードウェイと、その後サンフランシスコで数回、劇団四季版は初めてでした。当時は同じ作品をリピートで観るという発想がなかった頃ですが、それでも「Wicked」は繰り返し観たいくらい好きな作品でした。大学時代ルームメイトと「What is this Feeling?」をキャッキャッ言いながらずっと歌っていました。卒業間際には散歩しながら「For Good」歌ってみたり。
そんな感じでめちゃくちゃ思い入れ深い作品ですが、なんと劇団四季が日本語版「ウィキッド」をやる。しかもチケット余っているんですがいかがですか?なんて聖人みたいな人が現れたので有難く観に行けることになりました。
そして四季版ウィキッドも最高
ステージ小さくない?とか、生オケがよかった!とかしょーもない不満はあったものの、めっちゃ良かった。
同じくらい大好きなミュージカル「オペラ座の怪人」を同じく劇団四季の日本語版で見に行った時は、脳内で再生される英語音声と目の前の日本語がごっちゃになってめっちゃ疲れた。しかし、今回は事前に日本語版「ウィキッド」のCDを貸してもらっていたのと、考えなくても歌えるくらいには英語歌詞を覚えていたので、英語歌詞が脳内で同時再生されても、目の前で歌われている日本語歌詞に集中できるくらいには脳のキャパシティが残っていたので、非常に快適に観劇できました!!
私の知っているブロードウェイミュージカルの売店って、売ってるのパンフレットとTシャツとペンくらいなんだけど、 四季版グッズはめっちゃかわいい。劇中出てこないのにくまさんとか売られている。どうして
日本語版の残念だったところ
英語版「Wicked」で育った人の脳内同時再生で観ていると、いっぱい違和感ありました。めっちゃ細かいので読まなくていいです。
(結論の「結局何語でも良いものは良い」まで飛ばしてください)
"No One Mourns the Wicked" vs 「グッド・ニュース」
でもここだけは聞いてほしい。
ここ影響でか過ぎでは??って思った。
四季版、物語の初めに、"Wicked"=エルファバさんと定義されてしまっているので、「グッド・ニュース」がただただエルフィーかわいそうソングになってるのマジかわいそう。だいぶ嫌。
英語歌詞の方で指す「Wicked」は複数系なので、「悪は~、悪人は~」みたいな悪いことしちゃだめだよねの歌である一方、日本語歌詞だと「奴、あの子」ってエルフィー個人が指定されているように聞こえてしまう。
まぁ、直訳しても尺に入らなさそうだし、「ウィキッド」ってどういう意味?から始まる観客に対してはとても分かりやすい定義付けだったと思うけども!かわいそうやろ!
"For the first time in my life, I feel 'wicked'" vs 「生まれて初めて『幸せ』」
「As Long as You're Mine(2人は永遠に)」の最後の台詞なんだけど、ここ、めっちゃ好きやねん。どうくるのかな?ってドキドキしてたんだけど、うーん、まぁ… 分からなくもないけど…
今まで心の中ではずっと「いい子」だったのに、この後チューとかして大人になるからね、邪悪の意味の「wicked」ではなくいたずら・不道徳よりの「wicked」の解釈だったんですよ。
エルファバは強いので、生まれて初めて幸せとか言わない。意地でも今まで幸せでなかったことは認めない。知らんけど。
あとここも好き。
「fall in love(恋に落ちる)」的な「fall under your spell(魔法にかかる)」部分と、落ちた結果の「it's up that I fell(上に落ちる=天に昇る)」
翻訳無理すぎて「恋の海に落ちてゆく」になってたけど。流石に難しいね。
いや、でもそれでも良い翻訳だよ本当… 担当者誰だよ… すごいよ…
"Defying Gravity"vs「自由を求めて」
重力をも!
否定して欲しかった!
(でも「じゅうりょくをもひていする~」とか歌ってたらダサい)
"For Good" vs「あなたを忘れない」
もうこの曲本当に好き。
日本語版の出会ったことに対する全肯定感が、いまいちしっくりこなかった。間違ってはいないんだ、間違っては。
むしろ素晴らしい和訳なんだけどな~~~~~~~~~~
いや、「For Good」が良いという意味も含めているんだろうけど、「せせらぎを分かつ岩のように」もう出会わなかった頃には戻れないという意味の方を強く突き通してほしかった。夏草が流れていく感じ。
私の解釈の中だとあの2人は相手のことが全部好きなわけでも、今までを手放しに良かったと言っている訳でもなくて、その絶妙な距離が現実的で好きなのよ。状況的にはね、結局Goodな方向にはエルフィーもグリンダも変わったんだろうけど、「For Good」のエモさが欲しい。このもどかしさ分かって欲しい。
"Good/ Bad"の言葉遊び
「Something Bad」「Thank Goodness」「No Good Deed」「For Good」とか、タイトル以外でもずっと作品を通してのテーマとしてやっぱり言い回し・言葉遊びで最初から最後までずーーーーっと「Good(善)」「Bad(悪)」「Goodness(善)」「Wicked(悪)」等言うておりますけども。たくさんたくさん出てくるんですけども。
無理だよねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
Lost in Translationしちゃうよねーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
ーーーーー
他もちょいちょい気になるところあったけど、でかい部分でいうとこんな感じだろうか。
趣味で翻訳・通訳を齧ったことがあるので、歌詞翻訳は本当に大変だっただろうとめっちゃ思うけど、全体を見ると、ニュアンスレベルの些細なところなんだけど、あったかい砂が指の隙間から零れ落ちていくような喪失感もすごいあった。
日本語版歌詞のめっちゃ良かったところ
こんなに不満たらたら書いて、そんなん英語版観に行け!と思われるかもですが、日本のカルチャー的に分かりにくいところ、共感しにくいところを敢えて省き、ストーリーをいかに分かりやすくするかの工夫はすごく感じました。
"The Wizard and I" vs「魔法使いと私」
ここの違いがめっちゃ面白かった。
英語版でもね!やっぱり緑は気にしてるんだけどね!肌の色気にしてるとかいい子は言っちゃだめだからさ!!!
あとここすき:
冒頭の悪い魔女が死んだ!のお祝い(「グッド・ニュース」)はこのことか!ってなるパートでめっちゃ好きだったんですけど、日本語版では「果てしなく広がるこの未来/そうその明日へ翼広げ/大空に向かい飛び立ってゆくの/その日が来た」ってなってた。まぁ、予言はしてるけど、うわぁ~とはならないかな。もどかしい。
"Something Bad" vs 「言葉奪われる」
ヤギは「メー」だけど「Baaa」はキープしたのか!笑っちゃったw
「言Baaaa」が上手すぎて拍手した。ここ凄い!
ポピュラー
場所異なるけど、ここらへんのニュアンスが「進め!始まる 愛のレッスンが~」くらいで纏められてたのとても良かった。日本でモテる女の子ってチアリーダーよりも清楚なイメージだから、そっちに寄せたのかなって思う等しました。
てかさ、日本語版グリンダに「Blonde」感あんまり感じなくて、やっぱり文化の違いなのかとも思いました。こう、イラつく感じ?が少ない。やっぱり日本って頭悪い女子の方がモテるから?(とんでもない偏見)
ワンダフル
ここもすごく好きだったけど、別になくても納得したやつ。というか、これで意訳できてるの凄いww
小難しいこと言ってくるオズさん、日本語版では結構適当なこというおじさんキャラになってる気がしました。
「どうでもいい どうでもいい どうでもいい」とかいや、まじふざけてるの?とか思ったけどよく考えたら適当すぎてめっちゃ好きだわ。
3フレーズも使うなや。
結局何語でも良いものは良い
なんやかんやごちゃごちゃしょーもないこと言うてますけれども、結局歌詞比較しかしていなくて。言語はツールでしかなく、ミュージカルは言語をも超えるエンターテインメントなので、全く無問題です。
やっぱり根本的なところはちゃんと伝わっているので、結局何語でも良いものは良いんだって思いました。めっちゃ良かったもん四季版。
少しでも気になった人は英語版も聞いてください。
私はブラジル版も気になっています。
良いよね、ウィキッド。
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