マガジンのカバー画像

ブックレビュー

23
読んだ本の感想を書いています。読む本を探すときなどの参考にしていただければと思います。
運営しているクリエイター

#小説

名著の抽象的な「知恵」を現実に落としこむ【『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』読書メモ】

基本情報タイトル:もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 著者:岩崎夏海 なぜ読んだ?コロナ禍の2020年にて、「読んでいなかった過去のベストセラーを読んでみようキャンペーン」を行なった時に読んだ。 感想総論第三者視点で叙事的に書いてる小説。名著に書いてある抽象度の高い「知恵」を現実に落とし込んでみよう!タイプの本。 読書メモ・企業の目的と使命を定義するためには顧客と市場の観点から見ないといかん。 ・顧客にとっての現実、欲求、価値を探るマ

人間観察力、カンスト【『桐島、部活やめるってよ』ブックレビュー】

Q. なぜこの本を読んだ? A. もともと自分は『世にも奇妙な物語』が好き→『桐島、部活やめるってよ』で有名な朝井リョウによる『世にも奇妙な君物語』っていうのがあるんだ!読んでみよう!→面白かった、せっかくだし有名な『桐島』も読もう、として買う。 基本情報タイトル:桐島、部活やめるってよ (集英社文庫) 著者:朝井リョウ 出版社:集英社 Amazonリンク↓ 以下、ネタバレ注意 --- 感想おそらく誰もが思うことだろうが、桐島は直接出てこないんやな、という。 群像劇

他者評価=価値?小説から見る消費社会のコード【『ウォーク・イン・クローゼット』ブックレビュー】

なぜ読んだ?以前読んだ根本昌夫『小説教室』において、綿矢りさの小説が取り上げられていた。そこで書かれていた、現代社会の性質と絡めた綿矢りさの小説の登場人物分析が面白かった。また、現在の自分の興味(社会学、消費社会論)とも共鳴したため、実際に綿矢りさの小説を読んでみたいと思うようになった。 そんな思いを無意識的に心に秘めたまま、ある日旅行先で訪れた本屋にてこの本に遭遇した。表題作を少し立ち読みし、衣服の観点から「実質的価値<他者評価」テーゼを扱った小説だろうと考え、これは面白

逸脱した欲望への恐怖 【『コンビニ人間』読書メモ】

基本情報タイトル:『コンビニ人間』 著者:村田沙耶香 出版社:文藝春秋 私は2020年7月に読了した。 以下、ネタバレを含みます。 ----------------------------------------------------------------------------- 感想恐怖と安堵という相反した読後感を与えてくれる不思議な小説だった。主人公に100%共感する人はあまりいないと思うし、どこか恐怖を感じてしまう部分があるだろう。しかしながら、不文律から