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ブックレビュー

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読んだ本の感想を書いています。読む本を探すときなどの参考にしていただければと思います。
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#読書記録

これが人文学の魅力か!【「知の技法」入門】【読書メモ】

基本情報タイトル:「知の技法」入門 著者:小林康夫、大澤真幸 Amazonリンク↓ なぜ読んだ?図書館でNDC002のコーナーをまわっていたときに発見した本。対談形式で「知」について考えられる面白そうな本だと思い、借りた。 感想総論人文系の知の魅力がすごい伝わってきた。文系の大学2年生くらいが読むととても感動するかもしれない。 感想各論(読書メモ)一人の人の全集を読む 社会の仕組みの全体像を書いた本としての『資本論』→近代社会の全体を相対化 歴史的にも社会的にも一つ

「難しい」「わからない」は大事か?【教養主義のリハビリテーション】【ブックレビュー】

なぜ読んだ?小林康夫・山本泰編『教養のためのブックガイド』を読んだことをきっかけとして、「教養」とは何なのかを考えるようになった。 そのような心理状態で図書館をさまよい、この本を発見した。教養の歴史および未来について知見が得られそうだと感じたため、読むことにした。 基本情報タイトル:教養主義のリハビリテーション (筑摩選書) 著者:大澤聡 Amazonリンク 感想総論教養について、読書について、大学について、教養主義の歴史について、メディアについて、現代の「知」について

社会を研究するに至る背景を知った『社会学講義』【ブックレビュー】

基本情報タイトル:社会学講義 (ちくま新書) 著者:橋爪大三郎 出版社:筑摩書房 Amazonリンク↓ なぜ読んだ?2020の夏頃、社会学を学んでみたいと思っていたとき、図書館でこの本を発見し、借りた。だがその際は読むに至らず返却した。 その後千葉雅也『勉強の哲学』を読んだら、学び方の実践例として社会学を学ぶことが取り上げられており、これをきっかけとしてまた「社会学の入門書を読もう」という気持ちが生じた。このため、本屋でこの本を購入し、読むに至った。 感想総論社会学の各テ

人間観察力、カンスト【『桐島、部活やめるってよ』ブックレビュー】

Q. なぜこの本を読んだ? A. もともと自分は『世にも奇妙な物語』が好き→『桐島、部活やめるってよ』で有名な朝井リョウによる『世にも奇妙な君物語』っていうのがあるんだ!読んでみよう!→面白かった、せっかくだし有名な『桐島』も読もう、として買う。 基本情報タイトル:桐島、部活やめるってよ (集英社文庫) 著者:朝井リョウ 出版社:集英社 Amazonリンク↓ 以下、ネタバレ注意 --- 感想おそらく誰もが思うことだろうが、桐島は直接出てこないんやな、という。 群像劇

他者評価=価値?小説から見る消費社会のコード【『ウォーク・イン・クローゼット』ブックレビュー】

なぜ読んだ?以前読んだ根本昌夫『小説教室』において、綿矢りさの小説が取り上げられていた。そこで書かれていた、現代社会の性質と絡めた綿矢りさの小説の登場人物分析が面白かった。また、現在の自分の興味(社会学、消費社会論)とも共鳴したため、実際に綿矢りさの小説を読んでみたいと思うようになった。 そんな思いを無意識的に心に秘めたまま、ある日旅行先で訪れた本屋にてこの本に遭遇した。表題作を少し立ち読みし、衣服の観点から「実質的価値<他者評価」テーゼを扱った小説だろうと考え、これは面白

東大生が『東大生となった君へ』を読んで感じた、この本を読む意味【ブックレビュー】

Q. なぜこの本を読んだ?A. 大学3年生の頃、公共図書館にあった「大学生におすすめの本リスト」に載っていたのを見て。大学での学びとは何か、大学で身につけると良い能力とは何か、といったテーマに興味を持っていたので読んでみた。 基本情報タイトル:東大生となった君へ 真のエリートへの道 (光文社新書) 著者:田坂広志 出版社:光文社 Amazonリンク↓ 感想総論真のエリートとは何か、社会ではどのような変化が起こっているのか、それを踏まえて大学生のうちに鍛えるべき能力とは何か

"思考本"の定番をブックレビュー【思考の整理学】

Q. なぜこの本を読んだ? A. 「思考すること」について書かれた本の中で、長く読み継がれている定番の本であるから。 基本情報タイトル:思考の整理学 (ちくま文庫) 著者:外山滋比古 出版社:筑摩書房 Amazonリンク 感想かつて、東大京大の書籍部において数年連続で「最も売れた本」となった本。「思考すること」について書かれた本の中で定番と言われる位置を占めている。 余談だが、瀧本哲史は『2020年6月30日にまたここで会おう』において、自分の書いた本が『思考の整理学』

神は細部に宿る【『最後の秘境 東京藝大』ブックレビュー】

基本情報タイトル:最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常 著者:二宮敦人 出版社:新潮社 Amazonリンク↓ 2021年1月30日に読了。 感想2年くらい前だったか。下北沢のブックオフでこの本を見かけた。タイトルを見る、手に取る、目次を見る、本文をぱらっと見る。面白そう。具体的には、自分の生きている世界と違った世界が覗けそうなので面白そう。だがそのときは買うに至らなかった。 そして今日(2021年1月30日)、公立図書館の377(大学)コーナーを眺めていたら、本

逸脱した欲望への恐怖 【『コンビニ人間』読書メモ】

基本情報タイトル:『コンビニ人間』 著者:村田沙耶香 出版社:文藝春秋 私は2020年7月に読了した。 以下、ネタバレを含みます。 ----------------------------------------------------------------------------- 感想恐怖と安堵という相反した読後感を与えてくれる不思議な小説だった。主人公に100%共感する人はあまりいないと思うし、どこか恐怖を感じてしまう部分があるだろう。しかしながら、不文律から