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自治体業務システム標準化キソ(独自施策編)

自治体業務システム標準化キソのキソを書いたらそこそこアクセスがあって、やはり需要あるんだなと。そこで続編として、とてつもなくややこしい独自施策について書くことにした。すでにキソのキソとは言えない内容なので、今回はキソ(でもないけど)。
(デジタル庁さんが「パッケージ特例」という用語で説明始めているそうなので、若干修正)

別出し疎結合

パッケージのカスタマイズは実質禁止
独自の対応は”別だし疎結合”で構築するのが原則

キソのキソで書いた通り、標準仕様(標準化基準)はホワイトリスト方式なので書いてあること以外は作ってはならない。つまり、独自の機能を改造、カスタマイズして作ってはならない。そこで、それらは外出し疎結合に実装することとなっている。
カスタマイズについて、標準化法上は

当該地方公共団体情報システムに係る互換性が確保される場合に限り、標準化基準に適合する当該地方公共団体情報システムの機能等について当該事務 を処理するため必要な最小限度の改変又は追加を行うことができる。

標準化法第8条第2項

と絶対禁止ではないとしている。しかしこれは不測の事態に備えたもので、実質的には禁止と捉えるべきだ。実際、基本方針では上記を受けて、

標準準拠システムのカスタマイズについては、原則として不可であり、標準準拠システムとは別のシステムとして疎結合で構築することが望ましく、真にやむを得ない場合に限るものとす る。

地方公共団体情報システム標準化基本方針

と、真にやむを得ない場合に限るとしており、通常は疎結合で別出しで作るように規定している。
別出し疎結合で作るとは、標準準拠システム側には全く影響を与えず別に構築するということだ。例えば標準準拠システムが初めから実装しているAPIを使ってやり取りするとか、標準準拠システムが出力することになっているファイルを利用してデータを受け取るとか。

独自施策システムいろいろ

独自施策といっても実装上は様々な分類がある
分類ごとに標準準拠システム内と整理されるものと外と整理されるものがある

これら独自のシステムを広く「独自施策システム」と呼んでいる。しかし、実際には以下のような分類がある。

  • 独自施策システム
    地方公共団体が条例や予算に基づいて行う独自施策を実現するためのもの

  • 標準化対象外事務
    標準化対象事務の範囲に含まれない事務。標準仕様書のツリー図に可能な限り列挙することになっている

  • 標準化対象外機能
    明示的に標準化の対象外としている施策に係る機能

  • 独自機能
    自治体や事業者の創意工夫により新たな機能を試行的に実装させて機能改善の提案を行うもの。標準仕様書の作成・更新過程の検討対象とすることが前提。費用対効果の検討結果を共有するなどの対応が求められる

標準化対象外事務は事務丸々標準化しないと判断しているもの。標準化対象外機能は機能単位に標準化しないことが決まっているもの。独自機能は純粋にオリジナルのアイデアといったところ。
文字通りの独自施策を行う狭義の「独自施策システム」と上述の標準化対象外事務をまとめて通常は「独自施策システム」と呼んでいる。

出典:地方公共団体の基幹業務システムの 統一・標準化のために 検討すべき点について

これら全てが、原則、別出し疎結合での構築を求められている。
標準化対象外事務(と独自施策システム)、標準化対象外機能の部分は”標準準拠システム以外”と整理され、独自機能は”標準準拠システム内”の話と整理されている。

ややこしいのは経過措置(パッケージ特例)

独自施策の導入にはパッケージ特例という経過措置がある
ただしパッケージ特例は標準準拠システム以外の分類にしか適用されない

分類はたくさんあるが、どれも別出し疎結合なので一見事情は変わらない。しかし、これをややこしくするのが経過措置(パッケージ特例)の存在だ。

ただし、標準準拠システムと標準準拠システム以外のシステムを同一のパッ ケージとして事業者が提供している場合には、その最も適切な在り方を事業者と地方公共団体で協議していくことを前提に、当分の間、経過措置として、パッケージの提供事業者の責任において標準準拠システムと標準準拠システム以外のシステムとの間の連携等を行うことを可能とする。

地方公共団体情報システム標準化基本方針

何を言っているかというと、これら標準外の機能がすでに一体的に組み込まれていた場合、改めて別出し疎結合に切り出せというのも無理があるので、当面はそのまま一体的に使っていて良いということ。当面の間がいつまでのことかは未定。この経過措置のことを俗に「パッケージ特例」と呼ぶ。

ところでこの「パッケージ特例」、上記分類の独自施策システム、標準化対象外事務、標準化対象外機能には適用されるが独自機能には適用されない。独自機能だけは必ず別出し疎結合にしなければならない。
よるするに標準準拠システム以外の分類はパッケージ特例あり、標準準拠システム内の分類はパッケージ特例なしということ。
ここがややこしい。

標準準拠システムを見た場合、本来は標準仕様書にある機能や帳票しか実装されていないはずだ。しかし、もしかするとパッケージ特例を採用して独自の機能が入っているかもしれない。その際、標準化対象外事務とか標準化対象外機能とかに該当していれば認めらる。だが、もし独自機能と見なされれば違反となる。
わかる?
この辺が整理されないとFit&Gapもできないのだけど、Fit&Gapについては長くなるので別記事にいずれ書きたいと思う。

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