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良い文章には”発見”がある。

最近『ベストエッセイ2020』という本を買いました。

これは2020年に何かしらの雑誌に掲載されたエッセイの中から、編集を担当した方が良いと思うものを選び、書籍化した本です。毎年その年のものが出版されており、エッセイを読むのが好きな自分としては、密かに楽しみにしている1冊です。

(ちなみに2020の編纂委員は角田光代さん、林真理子さん、藤沢周さん、町田康さん、三浦しをんさんでした)

エッセイを読むといつも、「ああ、自分もこういう風に書いてみたいなあ」と思います。
昔から、自分の内面や周囲で起こる出来事を、読む人に伝わる形で言葉にできる人が憧れでした。

良い文章ってどんな文章なんだろう?

コピーライターさんとか、とても格好良い。

対象の新たな価値を見つけて、言葉で表現する。コピーを見る人に「こういう見方もあるんじゃないですか?」という提案が中にはあって、それが「たしかにそうだなあ」と思えるものだと、何か得したような気持ちになります。

名作コピーや心に残るエッセイを読んでいると、「文章力とは他の人とは違う物事の見方を表現する力」のことなのだと常々考えさせられます。

たとえば、最近は芸人としてよりもビジネスマンとして注目されているキングコング西野亮廣さんの『新・魔法のコンパス』には次のような項目があります。

人は「確認作業」でしか動かない。
「集客」の根幹にあるのは「人間は確認作業でしか動かない」という現実だ。
ボクらは、すでに知っているものにしか、反応しないんだ。

旅行先を決める時だってそうだよね。
「20万円を払ってくれれば、とっても素敵な場所に連れてってあげる」という誘いには誰も乗らない。
ボクらは、テレビやネットやパンフレットで、“一度見た場所”を旅行先として選ぶ。

これを初めて読んだ時、思わず誰かに話したくなりました。
今まで体験してきたことだけど。形になっていなかったこと。それを言葉という器に当てはめて、目に見える形で表現してくれたことに軽い興奮を覚えたのです。

「実はこんな見方があった」ということを提供し、読む人に”発見した”という感覚を与えることが、文章の価値の1つなのではないでしょうか。

文章力を上げるには?

そうであるならば、「①自分の見方に気づく」「②他者の見方を知る」「③その差を言葉で表現する」という3つのフェーズが文章にはあって、文章力を上げるためにはそれぞれを磨いていく必要があります。

文章力を上げようと考えると、ついつい③の言葉の表現力に目が行きがちです。
しかし、そもそも物事の見方に関する①と②が貧相であれば、いくら③が詩的であっても良いものにはならないでしょう。
(そもそも見方が貧相ならば、詩的な表現にもならないかもしれませんね)

いかにして自分の物事の見方に気づくか。
いかにして他者との違いに思いを馳せられるか。

そういった内面の部分こそが文章力の土台となるのではないでしょうか。

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