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帰ってきた牟田口廉也

予算がないから仕方がない。時間がないからこうするしかない。
一人よがり上等! ゆるゆる設定、大歓迎! 全力ご都合主義宣言!
空想映画劇場 ゴールデン・フェイク ただいま開場。

映画は〝人間〟を描かなければならない。映画は社会を〝批評〟をしなければならない。
……そんなもん本当に面白いのか? 映画は他人を見下す道具ではない。

〇無能、無謀、無責任! 真・三無主義を引っ提げて、あの男が帰ってきた!


 牟田口廉也。太平洋戦争中に実行されたあの無茶なインパール作戦の立案者ならびに司令官だ。

※インパール作戦~インド北東部インパールの攻略作戦。イギリスの勢力を一掃し、ビルマ(現:ミャンマー)の防衛等を目的とした作戦。兵站を軽視し、根拠のない楽観論で進められ、多くの犠牲者を出した。旧日本軍における「史上最悪の作戦」。

 〇理不尽老害、参上

 総合商社カレイドカンパニーに勤める主人公:鏑木コウは、ある日社長直々に呼び出され、見知らぬ年配の男性を紹介され、社運を賭けた新プロジェクトの責任者だそうだ。

 その者こそ、先に紹介した牟田口だ。そして彼の補佐として主人公が選任されたと伝えられる。なんでも、彼の言葉は私の言葉だそうだ。

 パワハラ臭が濃く嫌な予感しかしないが、出世争いに敗れ、リストラの危機にある中年の域に入った主人公はしぶしぶ引き受けるほか選択肢はなかった。不景気の就職難だし、今までハラスメント的な行為は受けた事が無かったことも幸いした。

 しかし、その淡い期待は裏切られる。牟田口の要求は無茶なものばかりだ。

〇貴様の手柄は俺のもの、俺の手柄は俺のもの。

 シェアを独占するために、民間の軍事会社を雇ってライバル会社を潰せ! 社員ごと葬るんだ。

 御冗談を。そう言った瞬間、怒声が飛んでくる。拳が加わらなかったのは幸いだ。そして「忘れたか? 私の言葉は誰の言葉かを」

 「しかし、民間の軍事会社などどうやって探すんですか」「知るか。それはお前の仕事だ」「……では、予算はどのくらいですか? そのような企業を雇うにかなりの高額な……」「予算は三万円で、できるだけまけさせろ」「……本当に殺すんですか?」「当たり前だ。それが会社の、いやお国のためになる」「もう一度聞きます。本気ですか?」
 リアル・ジャイ〇ン的な振る舞いに加え、『貴様のヘマは根性不足、人のせいにするんじゃねえ』と鉄拳制裁。

〇胸糞展開と思いきや……

 やってられるかとばかり、鏑木は辞表を出すが受理されない。ならばと、無断欠勤をし、解雇されるために引きこもるが、自宅まで牟田口本人が迎えにくる始末。
 うつ病寸前のクソ展開だが、取引先との会議の中である事実が発覚する。 
 取引の上司も牟田口廉也だったのだ

〇何なんだ? これ?

 他人の空似というレベルではない。言動も佇まいも不快感も牟田口の本人のものだ。

 クローンですよ。新入社員の磯口隆がそう言う。彼の正体は公安直属の工作員で、潜入捜査のため、わが社に入社したとのことだ。彼は信じがたいことを鏑木に告げる。

 牟田口廉也は宇宙人の侵略兵器なのだ、と。

〇それは奥が深い戦略……なのか?

 しかも、彼は一人ではないらしい。日本中、いや世界中に〝権力者〟としてばら撒かれたそうだ。加えて各企業の上層部の洗脳もぬかりはないときたもんだ。

 不可能なミッションを無理矢理やらせようとする。当然、組織運営に支障をきたす。小さな会社から、大企業、軍も含む官公庁まで。

 地球が組織的な抵抗ができなくなった頃、弱体化した頃を見計らって、大侵攻を開始する。

 にわかに信じがたい話だが、実際に牟田口がいるため信用するしかない。半ば強制的に磯口に協力するはめとなった鏑木。果たして彼は牟田口を操る者の正体を、そして侵略者の魔の手から、地球を守ることができるのだろうか?

〇さて、あなたの評価は……

 安いコメディと取るか、ブラックなそれと取るかは見たものの評価が別れるところ。実際、製作費は安い。侵略者である宇宙人の作りも、ちゃちな代物。まるでド〇・キホーテのパーティグッズだ。

 しかし、役者陣の熱演は本物で、特に牟田口演じる武山和人の鬼気迫る道化ぶりはまさにホラー。まさに本人そのもの? で、ベテランここにありといったところ。

 それだけに、ラストにつながる展開はご都合主義に向かい、興ざめである。

 当初はシリーズ化も検討されていたようだが、制作会社「チープトリック」の倒産により日の目を見ることはないと思われる。まあ、続編が一作目を超える事は難しいことだが……。

〇最後に……

 このコンテンツはフィクションであり、実在の人物・組織とは一切関係がありません。数字なども同様です。すべてはフェイク。

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