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君に贈る火星の「#ショートショートnote杯」

「君にプレゼントがあるんだ。」
と僕は言った。
「何?」
と彼女は聞いた。
「赤い鉱石。絵の具用の大きいやつ。」
「あら素敵ね。今丁度赤色を切らしていたから助かるわ。」
「それは良かった。」
僕は鞄からプレゼントを取り出して、彼女に渡した。
「隣銀河を歩いている時に偶然見つけたんだ。火星っていうらしい。」
彼女は火星を受け取り「ありがとう。」と微笑みながら告げた。
それから彼女はトンカチを取り出して、特に躊躇することなく火星を砕いた。その後、キラキラと光る欠片を丁寧に瓶に詰め、慣れた手つきで絵の具を作った。
パレットの上で金星と混ぜ、色を確かめる。彼女は溜息をついた。
「申し訳ないけど、火星じゃダメみたい。鮮やか過ぎる。」
「そうか、それじゃあ次は地球を持ってこよう。あっちの方が君好みだったかもしれない。」
「またお願いね」といって彼女はキャンバスに向き直った。
キャンバスをチラリと見ると、巨大なラクダと広大な砂漠が描かれていた。

(406字)

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