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脳裏整頓 小説 vol,03

夢の続きは


いきなりだが、結論を言おう。
僕は人の話が嫌いだ。

別に何か嫌な過去や具体的に嫌な事があるとかではない。
聞いているうちに眠たくなってしまうから嫌だ。 それだけだ。

特に授業は最悪だ。
ただでさえ話を聞くのが苦痛なのに、追い打ちをかけるように興味のない話が続く。

「おい、佐々木何寝ているんだ。 集中しろ。」

最悪の悪循環

授業が始まれば眠くなり、眠れば怒られ嫌になる。するとより興味がなくなり眠くなる。

周りの奴らは呆れている。 

「真起きろ。もうノート貸してやらないぞ。」

彼を除いて。

「ノートありがとう、お休み壱。」

田中壱  たなか はじめ

彼だけはまだ僕に付き合ってくれるクラスメイトだ。

「もうすぐ眠るんだから。」

「真はさ、なんで授業中いつも寝てるの。」

メリーゴーランドに乗った壱が言う。

「眠いから。」

メリーゴーランドの柵の外から答える。

「じゃあ何で、いつも俺よりテストの点が良いんだよ。」

「別に勉強が嫌なわけじゃないから。 眠くなるだけで、一人でやるときは集中してるし。」

「でもそれは壱がノートを貸してくれるおかげ。」

「じゃあ今度教えてよ。」

唐突に壱が提案してくる。

「起きてノートを取った方が点数が低くて、ただ借りただけの奴が高いなんてずるい。」

「まあ良いけど。」

「じゃあ今週末、俺の家に13時集合で。」

「了解。」

観覧車の中で約束をかわす。

「やっぱ真はいい奴だよ。」 

「それはこっちのセリフ。感謝してもしきれないよ。」

ジェットコースターで互いを褒め合った。

「本当にさ、俺す・・・・」

「起きて真。」

「おはよ。壱。」

「もう目を離すとすぐ眠っちゃうんだから。」

霞む目の写す先にはプリントを後ろに回す壱がいた。

「これ一枚取って後ろに回して。」

「OK。」

「あとさっきなんて言おうとしたの。」

「さっき?」

「ごめん何でもない。」

「そう?」

そうだ、あれは夢だ。
でもなんか気になる。



後ろから壱の肩を叩き紙を渡す。

俺す の続きで心当たりない?

1分ほどで返信が来た。

俺 ストパー当てたい。

なくはないと思った。
僕から見ても天然パーマだし。
でも違う気がする。

他ない?

俺 寿司食いたい。

いや、今は五限目だ。
さっき昼食を取ったのにもうお腹が空いたのか。
これも違う気がする。




何度もごめん あといつも起こしてくれてありがとう

これ以上邪魔をしても悪いと思い、紙を壱に渡すとまた両腕で顔を覆い突っ伏した。

少しして、つむじを2回突かれ顔を上げると、真が紙きれを机に置いた。

俺好きだよその素直なとこ。それと感謝はいいから起きてくださいな。
 
胸にストンと壱の言葉が染みる。



チャイムが鳴り、授業がおわる。

「さっきの紙の質問何だったの?」

「ああ、もう思い出したから大丈夫。」

「僕も壱の優しいところが大好きだよって言いたかっただけ。」


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