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脳裏整頓 小説 vol,06

挨拶

「ねえ美樹さ、受験が終わって大学生になったらYouTuberになろうと思うんだけど。」
「え、いいじゃん。 面白そう。」
「でしょでしょ。」
「なに系なの?」
「まだ考えてない。」
「でさ、由美と美里にお願いがあるんだけどさ。」
「私やんないよ。」
「私も。」
「違う違う。」
「じゃあなに?」
「挨拶を考えてほしいんだよね。」
「挨拶?」
「そう、挨拶。 今時挨拶もわかりやすく覚えやすくないとさ。」
「確かに。」
「そんなの『みなさんこんにちは、美樹です!』とかでいいんじゃないかな?」
「シンプルすぎじゃない?」
「確かにね。」
「じゃあ『貴方の妹美樹です!』は?」
「男に媚すぎじゃない?」
「私もそう思う。 グラドルがやるみたいなYouTubeになりそう。」
「確かにそうかも。」
「どうしよう挨拶。」
「私思いついた。」
「由美ちゃんどんなの?」
「美樹ちゃんが『こんにちみきみき美樹ちゃんです!』っていうの。」
「私が! 嫌よなんか恥ずかしいじゃない。」
「でも美樹ちゃん、YouTubeってそういうものだよ。」
「違うわよ。」
「違わないわ。 美里ちゃんもそう思うでしょ。」
「確かに由美が言っている事も一理ある。」
「ほらね。」
「何でよ。」
「今や女YouTuber戦国時代。 さっきは男に媚びすぎたけど、実際は多少なり誰かへの媚びは必要なのよ。」
「そうかな。」
「そうよ。 YouTuberなんて視聴者ができないことを代わりにする代行屋みたいなもんなんだから。」
「それは美里ちゃんの偏見でしょ。」
「偏見じゃないわよ。 思いっきり買い物がしたい、韓国料理を1万円分食べたい、誰かに優しくされたいetc そんな願いを叶えるために動画を上げているのよ。あの人たちは。」
「でも『好きなことで生きていく』って有名なフレーズがあるじゃん。」
「あんたバカね。 あれは視聴者の願いがたまたま自分と一緒だったってだけで、自己満足動画じゃやっていけないわ。これはブロガーにも言えることね。」
「そんな。」
「あと美樹ちゃんにアドバイスで、素人のホームビデオ風はもう流行らないよ。
視聴者の目もだいぶ肥えてきたから。」
「由美の言う通りね。もう1つ私からもあるわ。」
「美里ちゃんも。」
「美樹はまだやりたい方向性が決まってなかったけど、決めたなら1つに絞った方が良いわ。」
「どうして。」
「広く浅くより狭く深く方がチャンネルの色がわかりやすいもの。」
「なるほどね。」
「そして最後に必ず、『これをみてよかったと思ったらフォローといいね、コメントもお待ちしています。』って言うのよ。」
「2人とも詳しいね、動画には出なくてもいいから私のコンサルタントになってほしいくらい。」
「このくらい当然よ。」
「由美ちゃんなんで?」
「だって受験勉強しないでずっとみてるもの。」

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