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その他の不思議な小説

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#妹

【短編】 冷蔵庫と妹と、二週間の出来事

 ある朝、私は変な夢から覚めると、自分が冷蔵庫になっているのに気づいた。  目が覚めたのは、一緒に住んでいる妹が、牛乳パックを取り出すために冷蔵庫のドアを開けようとしたときだった。 「あれ、なんかドアが固いんだけど」  妹は、朝起きると牛乳パックから直飲みするのが習慣になっているから、妹用と、私がたまに飲んだりする牛乳パックは別に用意してある。 「あ、やっと開いた。ぐびぐび……はぁ。でも、ちょっと足りないから兄さんの牛乳も飲んじゃえ!」  私用の牛乳パックを直飲みする妹の頭を

【短編】 冷蔵庫の物語

 そいつは冷蔵庫から出てくると、ハローと言った。私は冷えたビールを飲みたいだけだったので、誰かに挨拶されるなんて考えもしなかった。 「ほら、冷気が逃げるから、早くドア閉めなさいよ」とそいつは、ソファに深く腰を下ろしながら言った。「それに、まずは冷蔵庫のドアを閉めないと落ち着いて話もできないでしょ」  そいつが言っていることはその通りなのだが、このままドアを閉めたら今置かれている状況を受け入れてしまうことになる気がしたので、私は一旦目を閉じて深呼吸をした。  すると次の瞬間、バ

【短編】 機械の妹

 妹は欲望を持っている。見た目は褐色の小石であり、表面がつるつるしているので触り心地は悪くない。 「あんまりじろじろ見ないでよ」と妹は言うと、私の手からそれを奪い返した。「兄さんみたいに欲望を持っていない人には分からないでしょうけど、これは誰かに見せたり、触らせたりするのはとても恥ずかしいことなの」  世の中のほとんどの人間は私のように欲望を持っていないので、妹のように持っている人間はうらやましく思われたりもする。欲望は一生働かなくていいほどのお金で売れるとか、欲望を使えば一

【短編】 妹と輪ゴムとビデオテープ

 部屋で輪ゴムを無くした。もちろん一つや二つ無くしても困ることはない代物である。しかしどうにも納得がいかなかった私は、その喪失感を演劇風に表現することにした。 「おお神よ! あなたは輪ゴムのようなつまらないものまで私から奪うのか? 幼い頃、私から妹を奪ったように!」  私には妹などいないのだが、喪失感を表現しているうちに妹が昔いたような気分になったのだ。 「あなたが無くしたものはこれね」  後ろを振り向くと迷彩服を着た女が私にライフルを向けて立っていた。  そしてライフルの先