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その他の不思議な小説

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2022年1月の記事一覧

【短編】 カコミライ運送

 深夜、眠ろうと思って布団に入っ瞬間、アパートの部屋のドアを叩く音が聞こえた。 「こんばんは、カコミライ運送の宅配便です」  深夜の配達なんて迷惑でしかないが、こんな時間まで働いている配達員も大変だなと思った。 「この荷物は、現在から百年後の二二二二年の世界から届けられたものです。通常時間の荷物とは違うため、開封する前に必ず注意書きをお読み下さい」  私は、配達員からダンボール箱と注意書きの紙を受け取り、首を傾げながら、とりあえず注意書きを読んでみた。 「時間を超えて届けられ

【短編】 昼寝のシャルロット

 家の前に女性が倒れていたので、体をゆすってみたら、彼女は目を半開きにしながら大きくあくびをした。 「すごく眠いので、あなたの家のソファを貸してくれませんか?」  よく見ると、彼女は高校生ぐらいの女の子に見えた。 「すごく眠いので、あなたの家のソファを貸してくれませんか?」  彼女は、壊れた機械みたいに同じことしか言わないし、全然起き上がらないので、とりあえず家の中へ運んだら、居間のソファをに倒れ込んで眠ってしまった。  それで私が毛布を掛けてやったら、眠りながら毛布をたぐり

【短編】 百年病

 私は、あるときから冬の寒さを感じなくなった。  真冬になっても部屋で暖房を使うことがなくなったし、夏場のような薄着で過ごしても何も問題がない。  初めは、光熱費が節約できてラッキーだなと思っていたのだが、真冬にTシャツ姿で出歩くと、さすがに変な目で見られてしまう。 「これは百年病という、最近流行し始めている病気ですね」  なんとなく不安になって病院に行ったら、一通りの検査を受けたあとに医師からそう言われた。 「百年病は、体のあらゆる感覚がなくなっていく病気で、温度の感覚がな

【短編】 ドラゴンのキキ

 ドラゴンのキキと出会ったとき、私は地面に横たわって星空を眺めていた。  何かデカイものが近くにいるなということには気づいていたが、そいつにとって私なんか虫けらみたいなものだろうから、そのままやり過ごせるだろうと思っていた。 「お前に、ちょっと頼みがある」  声のするほうを見上げると、そこには巨大なドラゴンがいて、どうやら私の命もここまでだなと。 「だから、オレにはお前を殺すつもりはなくて、ただ頼みがあるだけだ」  ドラゴンはそう言うと、まぶしく光を放って人間の女の姿に変身し