最初の短歌  旅の途中

月山の頂の小屋に芭蕉も居て深き霧の中月の出を待つ
 
古文書の墨深々と千年の百済の願い永久に伝えよ
 
特急列車に行く宇佐平野の黄金色卑弥呼は夢をまだ見ています
 
マラケッシュからアトラス山脈越えて2週間同行の月もやがて満月
 
スコットランドに英雄"ウオリス"あり伝説の荒野に紅きジギタリスの花
 
トルファンの古城に立てば土壁にモンゴル兵の蹄の音残るか
 
ニューヨーク9.11跡地に滝二つ水音深く地底に落ちて
 
天を衝く武陵源の峡谷に我はアバターとなりて遊ばん
 
サハリンへ向かえる船か霧笛鳴る利尻山頂小雨降りしく
 
一瞬だけ街が透明に 今私は生まれ変わった 呆然と九月
 
天然塚の古木の下に雨宿りしばしこの木の話を聞こう
 
バスを待つ娘らのスカート風に揺れ春は行く行くまばたきの間に
 
乳母車三台横並びに街を行く児を育てるは誇らしきこと
 
この電車まもなく錦秋の高崎山スマホから顔あげよ若き君
 
街中にモッコウバラ咲いて今日は晴れ四月二十三日君産まれたり
 
癇癪起こし四歳の孫泣き止まず生きて行くとは辛きことなれ
 
ベランダに色取り取りの洗濯物干して母子は保育園へ
 
この冬で七十歳になれど通りゃんせ通りゃんせと呼ぶ声止まぬ
 
落ち葉踏み踏み行き行き惑うもう目隠しを取って良いですか
 
この頃に夫亡くした人集まれ日が暮れるまでかくれんぼしよう

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