子どもたちに残すなら 不幸の真実
悩みを抱える若者が、絶対に知っておくべき不幸の真実がある
『不幸自慢の結末』
鍋をつつきながら、
一人が声にならない声で、泣き始めた。
学校内でうわさになっていたから、
仲間内で集まって鍋を囲んでいたところだった。
大恋愛の末の失恋だったようだ。
一人目が肩を抱く。
辛いよな。そりゃあ、泣くしかないよな。
二人目が励ます。
まだまだ、人生100年だぜ。
出会いだって沢山あるよ。
次の出会いを見つけようよ。
さらにもう一人が話し出す。
そうだよ。
それに辛い思いしてるのは、
お前だけじゃない。
俺なんか、同棲までした彼女に、
家追い出されて、今公園にねてるんだぜ。
限界だから、実家から通おうかって
話してるとこだよ。
と、泣き始めた。
先程肩を抱いていた一人が、
お前、最近連絡取れないと思ってたのは、
そんなわけがあったのか。
すると、人生100年が呟く。
でも、おまえら、いい方だよ。
俺なんか、家業が倒産したから、
今、奨学金の申請してて、
だめだったら、
大学辞めないといけないんだぜ。
彼女なんて、できたことないわ。
肩抱きが、驚く。
でもさ、俺なんか、もっと辛いぜ。
この前空き巣が入って、
全財産の入った通帳も印鑑も
気に入ってたジャケットも全部盗られたよ。
と、泣き始める。
お前、だから薄着だったんだな。
と、二人が呟く。
すでに涙がひっこんだ失恋野郎が、
ありがとう、と、赤い目で皆を見渡す。
不意に、まだ何も話していない
あなたと目があう。
あなたは、鍋をつつきながら、下を向く。
最近は、いい事ばかりなんだよな。
勉強も楽しいし、収入もある。
大学生活を一番満喫してるんじゃないかと
よく思う。
まわりの皆は話しながら、
ズビズビと鼻を鳴らしていた。
おれさ、あなたが切り出す。
3人は、
どうぞ、と言わんばかりに注目する。
実は、かなり若く見られるんだけど、
社会に出て大学に入り直したから、
そろそろ40歳なんだよな。
40って、いろいろ経験しすぎて、
もはや、悲劇に慣れるんだよな。
困ったって、
実家には頼れなくなるし。
まぁ、20代振りかえれば、
同じように傷ついた事もあったし、
悩んで、数年を棒に振った事もあった。
でも30までの時間って、
体力的にも意識的にも
なんでもできるし、
何者にでもなれるわけだから、
貴重な瞬間を
悩みでグズグズ無駄に過ごしたまま
40になってしまう前に、
さっさと悩みを断ち切って
今を満喫したほうが得だよ。
君たちの今は二度と戻ってこないよ。
すでに涙が出ていない3人が、
いつのまにか正座になり、
神妙な面持ちになっていた。
顔を見合わせ、
なんか、すみません。
自分達は、
まだまだ挽回できる気がしてきました。
僕ら、応援してるんで、
頑張って生きてください。
3人の顔から、
先程までの悲壮感がすっかり消え去り、
哀れみの表情とともに、力強くうなづいた。
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