子どもたちに残すなら 若さの真理
悩みを抱える若者が、絶対に知っておくべき若さの真理がある。
『新品の価値』
早く大人になりたい、と思ったことはないだろうか。
大好きな人がいる。
デートの場所に着くと、背の高い姿が見えた。
ごめんね、待った?
うん、大丈夫。
にっこり笑ったそのひとは、優しく答えてくれた。
けっこう年上だけど、落ち着いてて、優しくて、素敵な恋人。
手を繋ぎながら、映画館へ行った。
年は違うのに、同じ趣味だから、話も合う。
コミカルなシーンで、顔を合わせてクスッと笑う。
映画の後にいつも寄るのは、
おしゃれなカフェ。
どこにでもあるようなチェーン店じゃない。
ここだけにある私たちの特別な場所。
その人は、メニューが見えないと、眼鏡をかける。
いつもは、ソファー席を選ぶんだけど、
ソファーに座ると、君との距離が遠くなるからと、イスの席に座る。
ふわふわのパンケーキを一緒に注文した。
運ばれてきたのは、パンケーキと飲み物だけ。
一緒に食べよう?と声をかけると、
君が全部食べていいんだよ。と応える。
映画の話や学校の話、仕事の話をして過ごす。
未知の仕事の話を聞くと、
ちょっぴりワクワクする。
でも、少しだけ元気がないみたい。
どうしたの?と聞くと、
大したことないよ。
今週、仕事が詰まってたからかも。と呟く。
元気を出させてあげたくて、
近くの公園まで歩こうよ。
気持ちがいい緑の中で歩くと、スッキリするかも!
と提案した。
私の大好きな明るい表情で、いいね。じゃあ、歩こうか。と応えてくれる。
じゃあ、その前にちょっとお手洗い。
自然を見て、のんびり歩くのも楽しいな。
今度は、
公園のジョギングデートなんか誘ってみようかな。
健康にもいいし、癒されるし、一石二鳥!
今日も素敵なお天気で、よかった!
閉まった便座から、ようやく立ち上がる。
先日痛めた腰が、ズキズキする。
でも、可愛い顔が見れるなら、
公園まで歩くのなんか大したことじゃない。
仕事の癖で待ち合わせ場所に
かなり早めに来てしまったが、
駅前のベンチが全て埋まっていた時から、
なんとなく、腰がヤバいなとは思っていた。
ごめんね、待った?と聞く笑顔が可愛くて、
腰の痛みが、すっと引いた。大丈夫そうだ。
うん。大丈夫。
手を繋いで歩いたが、歩幅が合わない。
腰に響かないけれど、でも恋人の歩調を乱さない、
ギリギリのラインを探しながら歩く。
映画館で、腰を下ろして、ようやくほっとする。
コミカルなシーンで、
後ろの子供があははと席を蹴った。
ズキンと痛む腰の恐ろしさを、
この子供はわかっているのだろうか。
恨めしくなって、後ろを振り向こうとして、
隣の可愛い目がこちらを見ていることに気がつく。
暗闇のなか、引きつった笑顔でにこりと笑った。
映画が終わり、立ち上がるときに、
グキッと音がした。
いや、音がしたわけではないのだが、
それほどの激痛が背中を走る。
立ち上がって、ほっと胸を撫で下ろす。
まだ、大丈夫そうだ。
とりあえず、カフェに避難だ。
ソファーの席だと、腰に負担がかかるから、
イスの席に座ろう。
眼鏡をかけて、メニューを見る。
最近、この眼鏡も度があわなくなってきた。
ぼんやりと見えるメニューを
一生懸命見るのは面倒だし、
最近歯も痛いから、
今日は飲み物だけにしておこう。
また友達と一緒にでも来てみよう。
腰の痛みは少しずつひどくなってきている。
とても残念だけど、
腰を守るため、デートはここまでにしよう。
そう思った時、
近くの公園まで歩こうよ!
と、恋人は、無邪気に笑った。
満面の笑みの提案につられて、
思わず、いいよ。と同じ表情で答える。
直後、しまったと思った。
私の腰はついていけるだろうか。
冷や汗を隠すため、トイレに立った。
そろそろ、トイレから出ないと不自然だ。
今日の帰りは、ドラッグストアで、
腰サポートを買おう。
ドアを開けたら、土砂降りになっていますように。
願いをかけて、トイレのドアをゆっくりと、
腰に響かないよう開いた。
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