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ピアノじまい

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#ピアノを処分

第1回目査定(ピアノじまい⑦)

第1回目査定(ピアノじまい⑦)

日にちが決まり、いよいよ調律師さんに見てもらうこととなった。
実際、調律師さんに見ていただいたらどういう風に判断されるのだろうか。
長く放置してしまっていたピアノをちゃんとした人に見てもらうことに、少しの恥ずかしさと妙な緊張感があった。

当日、約束の時間から10分経った頃、弟からメッセージが入った。何か聞きたいことでもあったかなと見てみると、すぐ終わったよ、と。
こちらの緊張とは裏腹に、気が抜け

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二転三転(ピアノじまい⑥)

二転三転(ピアノじまい⑥)

お断りするメールを送る。
書きながら、とても申し訳なくなってきた。
ひとりでじたばたと問い合わせしてお断りする、私の「ピアノじまい劇場」に知り合いを巻き込んでしまったのだ。
なんてこった。

メールを送信して、より廃棄についての心が決まったように感じた。
これでいいんだ。

翌日。
ライブでお世話になるピアニストさんとのリハーサルを入れていた。
ひとしきり終わって休憩しつつ雑談。
ピアニストさんな

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生かす方法を低めの熱量で(ピアノじまい⑤)

生かす方法を低めの熱量で(ピアノじまい⑤)

ピアノを生かす方法を探し始めた。
とは言え、何がなんでもというよりは、廃棄前提で最後のひと足掻きと言った感じ。
熱量的にはそこまで高くはない。

想像だと、どこかの施設で貰ってもらうとか、子どもさんの練習用に貰ってもらうとか、近頃よく見かけるストリートピアノに使ってもらうなどか。

ストリートピアノは、場所によっては雨ざらし日ざらしで少しかわいそうなものを見かけたことがあるので、それだったら廃棄の

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動き始める(ピアノじまい④)

動き始める(ピアノじまい④)

何から始めたら良いか分からないので、とりあえず、こういった古くて長く弾いていないピアノはどうしたら良いものか、知り合いの調律師さんに尋ねてみることにした。

おおよその製造からの年数、メーカー、思い出せる限りの状態などを伝えると、
申し訳ないけど、廃棄だろうね…と。
全然申し訳なくない。まったく予想の範囲内である。

廃棄の方法も尋ねてみた。
ピアノの配送業者さんがやっているとのこと。
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謎だったメーカー名(ピアノじまい③)

謎だったメーカー名(ピアノじまい③)

実家を空にしなければならない期限が意外と早く迫っているとなり、急いでピアノの処分方法を考えなければならなくなった。

まずは知り合いの調律師さんに尋ねてみるか。

と、その前に。
よく考えたら、うちのピアノの素性を、私は殆ど知らない。
分かっているのは、買ってもらった当初で確か15〜20年経っていたということくらい。

どこで買ったものなのかも、いくらだったのかも知らない。

ピアノの蓋を開けて目

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いよいよ動かなければね (ピアノじまい②)

いよいよ動かなければね (ピアノじまい②)

初めて実家売却の話を聞いたのは今年のゴールデンウィークに入る時だった。
弟家族が遊びに来て、売却のことを話し始めた。

実家のことは弟に任せてあった。一時貸したりもしていたようだけれど、今は空き家になっていた。
もうだいぶ築も古くて、あちこち不具合も出ており、維持費などを考えれば手放すのが妥当なのではという話だった。

いつかは、と思っていたことだったし、そもそも弟の持ち物。好きにしてもらって構わ

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