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『コロナの時代の僕ら』


日々の感染者数に、緊急事態宣言。
テレビもネットニュースもツイッターのタイムラインも、
不満、怒り、政治への不信感、嘆き……あらゆる情報が滝のように流れていきます。

激流のようなツイッターのタイムラインで目に飛び込んできたのが、
『コロナの時代の僕ら』(パオロ・ジョルダーノ著、飯田亮介翻訳、早川書房)。

「出版関係者はゲラの依頼はお気軽に」というツイートに即問い合わせ。すぐさまグーグルドキュメントでPDFをシェアしてもらい、拝読しました。

「すべてが終わった時、本当に僕たちは以前とまったく同じ世界を再現したいのだろうか」(p127)

著者は物理学者で作家(医者で作家の森鴎外みたいだな…)という肩書を持つ37歳のイタリア人。冷静な分析とエモさ満点の筆致でしたたためられた短編エッセイ集です。ここ数ヶ月、様々なところで見聞きしていた情報がシンプルに整理された感が大きかった。


これまで、すべてのことは個々人の直感と意志で動かせる、と思っていた自分は、実は大きな共同体のなかのひとつであったこと。

これまで、盤石と思っていた日常は、目に見えぬものでいとも簡単に短期間で変えられてしまうこと。

娯楽が剥奪され、日々の潤いと彩りが一気にはぎ取られた今、このコロナ禍が過ぎ去ったあと、「なにが元どおりになってほしいか」「なにが戻ってほしくないか」あらためて考えるべきこと。

家でそっと考えるすごくいいきっかけになりました。

ちなみに私は、座談会の取材はすべて無期限延期に。
そして普段の執筆はかねてから自宅で行っているものの、
当然、取材や対談もやり方を考えて対応しなければならないフェーズに。お仕事があるのはありがたいですが、緊急事態宣言を受けて、書店が封鎖され、キオスクの売上が下がり、いずれ雑誌も厳しい状況に置かれることでしょう。考えるだけで、カラダがこわばってきます。

直近の美容院の予定は、施術者の周りに感染者が出た、ということで延期に。試みに開催したオンライン飲み会では、画面越しに見る友達の顔に安堵しつつも、会えないもどかしさが募るばかり。
楽しみと彩りがひとつひとつ失われていく現実が浮き彫りになり、
そんな毎日に不満や不安が、堆積していく。

でもそれでも生きないとならない。このゲームは降りられない。
どう今を生きて、そしてこのコロナ禍を生き延びた後、
どんな世界にしたいのか。
家にいながら次の戦略を練る、そんなマクロな視点と勇気を与えられた一冊です。

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