マサチューセッツ州プロビンスタウン
サンクスギビングも近づいているということで、数年前のサンクスギビングの話。あまり日本では馴染みの薄い祝日ですが、11月の第4木曜日のサンクスギビングはクリスマスに匹敵する大きな休日で、金曜日と繋げて4連休となることが多いので、祝日の少ないアメリカでは重要な連休です。多くの人は家族と家で七面鳥などの豪華な食事を作りゆったり過ごすのが定番。私は家族がいなく一人暮らしであること、普段中々長い休みを取りづらいことから、ある年のサンクスギビングに、遠くて時差もあり行きにくい東海岸、マサチューセッツ州のプロビンスタウン(Provincetown)に行きました。
プロビンスタウンは、ボストンから車で2時間半位、ケープコッドと呼ばれる半島の先端にある避暑地です。人口3千人弱の小さな港町ですが、1620年清教徒達のメイフラワー号が到着したアメリカの歴史上も重要な場所。1970年代頃から新興芸術にも力を入れ、今では熊系ゲイ御用達のサマーリゾートとして有名です。逆に冬は結構寒く、閑散としていました。
レインボーフラッグも散見され、オカマにビンビン刺さる可愛い街並み。特に気に入ったのは小物屋さんの数々です。私は旅行先でTシャツを買って帰るのが好きなのですが、海、港、LGBTQ、熊などをモチーフにしたポップなアパレルや小物を取り扱うお土産物屋さんのレベルが高い!さすが目の肥えたリア充オカマを相手にしている街だと思いました。私的オススメの店はTim-Scapes。「ガムテープアーティスト」と呼ばれているようなのですが、直線的でシンプルなデザインながら、色使いも絶妙。一見地名Tシャツと気付きそうで気づかない感じが素敵なお店です。
港町なのでもちろんシーフードも美味。ビーチの脇の小さなレストランのクラムチャウダーは絶品でした。
オフシーズンとはいえ観光地だけあって相場も高めだったので、安くて場末のホテルに泊まったのですが、裏庭でタバコを吸っていると、もう一人タバコを吸っているババアが。シワシワですが、ブロンドで昔は美人だったと思われるおばさんでした。「寒いわね」から始まり雑談して、サンクスギビングに冬のプロビンスタウンで何をしているのかという話に。
「サンクスギビングの日は教会で無料の食事の炊き出ししてくれるのが楽しみなの。有り難いよね。」
正月の新宿二丁目では、実家に帰らない(帰れない)訳ありオカマ達が紅白を観て泥酔しながらお互い傷を舐め合う独特な空気感が漂うのですが、その哀しくも愛おしい、なんとも切ない感じを思い出しました。
「文字通りサンクスギビングね。」と言ったところで私はタバコを吸い終わり、そのババアと別れました。
リア充、熊系オカマがパーテーを楽しむ夏にも是非一度行ってみたいですが、寒さが染みる誰もいない街で、震える心をちょっとだけ温め合うというのも素敵です。帰る場所を無くしても、他人の暖かさに触れ、感謝の心を取り戻したい時にオススメです。M