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幸せになれるおまじない

 図書館へ出かけた帰り道に、鍵が落ちているのを見つけた。鍵といっても家の鍵ではなく、おそらくは自転車の鍵なんだけど、それでも落とした方はきっと不便な思いをしてらっしゃるだろうなぁ、と心配になる。

 そういえば。

 私は中学・高校生時代、愛と占いの情報誌「マイバースデイ」の熱心な読者だった。家族関係は最悪、そのせいか学校でもうまくいかないことばかり。藁にもすがる思いで「マイバースデイ」に掲載されていた「おまじない」というものに頼ったこともある。

 そんなおまじないの中に「拾った鍵は、幸運のシンボル」というものがあった。鍵を拾ったら、ラッキー! 大切に持って帰って、お守りにしましょう、などと紹介されていた。私も落ちてる鍵を見つけて、嬉々として持ち帰ったことがあるのだが、

これって、遺失物横領罪だよね?


 こんなおまじないもあった。
 大好きなカレちゃま(当時のマイバースデイでは、このような表現をしてたと記憶している)の髪の毛を手に入れて、その髪を自作の人形の中に入れ(もちろん、人形は、カレちゃまに似せてつくるのよ! 笑)胸のあたりを赤いマチ針でやさしくつつく・・・ん?

 これ、どこかの国の人形魔術に似ていないか?
 マイバースデイでは、白魔術と黒魔術を明確に線引きし、良い子は黒魔術に手を出してはダメよ! というスタンスだったはずなのだが、今思い出してみたらば、どう考えてもコレは黒魔術寄りだろう。(一応、強くつついてはダメよ! という注意書きがあったことは覚えている。やさしくね、と。笑)

 髪の毛の入手方法も、肩に落ちてる抜け毛を手に入れてね! みたいに書いてあった記憶があるんだけど、冷静に考えれば、基本的に短髪な男子の抜け毛って、なかなか手に入れにくいもんじゃないかなと思うのだ。

 手に入らないからといって、勝手に抜いたり切り取ったりすると、

傷害罪もしくは暴行罪だよね?


 さらに、「私、あなたのこと大好きだから、髪の毛もらって人形に入れて、毎晩針でつついてるの〜、むふふ〜!」などとカレちゃま(笑)に伝えでもしようものなら、

場合によっては、脅迫罪だよね?

 
 このおまじないは実践したことがないので、今まであまり深く考えたこともなかったのだけど、何気にヤバイ香りがする。

 愛と占いの情報誌、のはずなのに、なぜかあまり愛を感じない、というか。

 とはいえ、当時の私にとっては、このマイバースデイという雑誌は命綱だった。この雑誌がなかったら、今、私は、ここにいなかったと思う。自殺願望のかたまりだった私のことを、現世に引き止めてくれたのは、マイバースデイしかなかった、と言っても過言ではない。

 かつて自分の命綱だった雑誌のことを、笑い飛ばせるようになったことは、私の中では喜ばしいことなのだ。もちろん、今でもリスペクトはあるし、とにかく大好きだったけど。

 これら昭和のおまじないを、ぜひ、こたけ正義感さん(大好き!)に断罪していただきたい・・・とか思ってしまう私も、ここにいる。

 心にそんな余裕がある、ということは、きっと幸せなのだと思う。

 40年以上の時をかけて、あの鍵のおまじないは、私を確かに幸せにしてくれたのだ。

 その節は、遺失物横領罪を犯して鍵を持ち帰って、お守りにしてしまって、どうもすいませんでした(笑)。

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