見出し画像

kintoneで支える多様な子育て/kintone hive 2022 fukuoka 登壇内容+α

概要

kintone hive 2022 fukuokaでの登壇内容を、登壇シナリオをもとにご紹介します。

登壇時は17分という時間的制約があったため、内容を絞ってお話しました。
今回は紙面構成なので、思うことなども、あれこれ好き勝手に、自由に書いていきたいと思います。

登壇内容のテーマ

発表内容は、

①なぜ保育現場は業務改善が進まないのか
②なぜ既存の保育ICTではなく、kintoneを選んだのか
③kintoneを保育現場でどのように活用しているのか

上記の3つに絞っています。

本当は、③の活用について、もっと具体的に踏み込んだ事例紹介をしたかったのです。

しかし、悲しいことに、共感を得てもらいたい、kintoneを利用する保育育関係者はごく少数に過ぎません。

噂によると、「kintoneでまるっと保育業務改善」に取り組んでいるのは、どうやら私が唯一の事例らしいのです。
今回の登壇で具体的な活用について詳細に説明しても、数少ない保育関係者の共感は得られても、他業種のユーザーさんへの理解は難しいと考えました。

そこで、今回の登壇は、どの業種の方々に理解してもらえるように、kintone保育業務改善の前提知識として、「保育現場でkintoneを活用する必要性」についてご理解をしていただくことをメインテーマとしました。

今回の内容は、今後の保育業務改善の事例紹介につなげるための「助走」としての位置づけです。

前置きはこのくらいにして、登壇内容についてのお話をしましょう。

自己紹介

クセの強い自己紹介

名前や役職、業務は上記をご覧ください。

kintoneは、今のところ、私たった一人で動かしています。

他業種のように、「業務改善部署」「kintone部署」など、事務系の部署がいくつもあり、業務分担がなされていたら、kintoneを開発しながらすぐに現場におろし、共有することも可能だったでしょう。

人事・労務・経理・保育所運営・理事会運営、多岐に渡る業務を私一人で全てこなさないといけない現状では、kintoneを集中的に開発する時間的余裕がそもそもありません。

■事務員より保育士雇用が優先される現実

保育所運営は、100%公費の補助金、すなわち税金ですが、この補助金は、園児の定員あたりの単価に基づいて、人件費やその他の使途が厳格に定められています。もちろん、弾力運用もありますが…。

「業務改善したいから事務員を増やしたいな☆」

と考えたとしても、補助金の使い道が決まっている以上、できないのです。
だから、予算以上に事務員は雇えないし、したがって、いつまで経っても業務改善は進まない。

ちなみに、補助金では、私自身を事務職員加算の人員として申請しているので、私以外に事務員を雇うのは、予算上できないのです。

チッキショー!(小梅太夫風に)
思わず叫びたくなります。

現状システムとして、保育業務改善が進まない理由がお分かりいただけたと思います。

■元・司法浪人がkintoneと出会うまで

ここでkintone保育業務改善の誕生の背景となる、私の数奇な運命についてお話ししなければなりません。

私は元々、保育業界の人間ではありません。

幼い頃から文章を書くことが好きだった私は、松本清張のような社会派ミステリー作家に憧れて、文章創作の土台となる「人生の生き死に」を深く学ぼうと考えて、法学部に入りました。

学友たちが司法試験を目指していたということもあり、司法試験にのめりこむも、長く合格できず、司法浪人ひきこもりという暗黒時代を経験。
司法浪人時代、母や家族に心配・迷惑をかけたことは、今でも深く後悔しています。

2011年、当時・保育園長をしていた母が余命3ヶ月の末期がん(成人T細胞白血病リンパ腫:ATL)と判明したことから、司法浪人を辞め、2012年4月、母を手伝うために事務員として保育現場に入りました。

それまで六法全書しか見てこなかった私は、子どもが大の苦手でした。
特に乳児の意味不明の得体のしれない恐ろしさ…
「お願いだから、近寄らないで!」と子どもへの恐怖を覚えながら、入職当時、仕事をしていたのを覚えています。
文字通りの「地獄」。あの時が一番、しんどかった。

昼は保育園を運営、夜は保育の短大で学ぶという社会人学生生活を3年送り、保育士資格などを取得しました。
苦手だった子どもとの関わりも、保育所実習や幼稚園実習などを通して克服、好きになりました。保育は今でも苦手ですが――。

2012年9月、私が入職して半年後、母は急逝。
母の遺言は「新園舎を建てたい」。

当時の保育園の預金残高は13,000円。
行政からの補助金が入れば、ほとんどが支出で消える状態でした。
毎月の普通預金の残高はギリギリで、理事長の父と園長の母の多額の寄付によって、かろうじて運営を維持。
自転車操業が長く続いていたのです。

赤字財政に悩む母にとって新園舎建設は決して叶わぬ《夢》。
母は私に《夢》を託したまま、この世を去りました。

母亡き後、どん底の赤字財政の中、新園舎建設という途方もないミッションを与えられ、「やらなければいけない」と私は追い詰められていました。
脇目も振らず、必死に仕事をこなす日々。

会計の専門家、社労士、色々な専門家の手を借りながら、赤字財政の立て直しをし、積立金ゼロの状態から5000万の積立に成功。
自己資金と、市・県・国からの補助金、福祉医療機構からの借入れによって、2021年3月、新園舎が完成しました。

気付けば、母の死から9年が経っていました。

長い司法浪人で迷惑をかけた亡き母への贖罪——新園舎建設——がようやく終わりを迎えたのです。

そして、自分の全人生を賭して取り組んできた亡き母への贖罪を終え、次の道を模索しようとしていた矢先に出会ったのが、kintoneだったのです。

司法領域から保育業界に異色のシフトチェンジした門外漢の私だからこそ、「保育業務の非効率」への気付き、保育業務の「当たり前」を「当たり前」としない、という現状改善への強い思い(執着)となり、こうして今回、kintone保育業務改善の取り組みとして結実したのです。

■大学院を4年かけて修了

なぜ大学院に行こうと思ったのか、色々理由はあるのですが…

保育園の運営をしながら、新園舎建設をしながら、kintone保育業務改善を進めながら、新型コロナ対応をしながら、大学院修士課程での学びをしながら、全てを同時併走させた2020年は、尋常ではない忙しさでした。

どうかしてるぜ!(ブラマヨ吉田風に)

コロナ禍で1年修了が遅延しましたが、何とか大学院は修了しました。

大学院で修めた領域は、保育や幼児教育、発達心理学、児童心理学領域。
すなわち――

自分でkintone保育業務改善の「監修」ができちゃう!

大学院で児童学領域を修めた専門性は、「kintoneでまるっと保育業務改善」の開発に生かされています。エビデンス重視。
修めて良かった児童学。

ちなみに、司法浪人時代の法的知識を土台に、争訟にならないように、常にリスクマネジメントしながら、業務遂行しています。
学んで良かった司法試験。

会社紹介

■昔ながらの風景

地域の様子(撮影:写真家 今泉真也さん)

保育園の周辺は、道一本裏手に入ると、昔ながらの懐かしい沖縄の風景に出会えます。
高齢者(おじい・おばあ)も多く、高齢化が進んでいる地域でもあります。

給食の食材は地産地消をモットーに、地域の豆腐屋、精肉屋、八百屋から直接調達し、手作り調理をしています。
おやつには、市販のお菓子は一切出さず、お菓子も全て手作り。パンさえも発酵器から作るという、手作り素材へのこだわりがあります。

地域の中で、自然を大切にする保育園です。

■新園舎~園庭の様子

園庭の様子(撮影:写真家 今泉真也さん)

先述の通り、昔ながらの沖縄の風景を残している地域のため、この景観を大切にするため、空を圧迫しない、平屋にしました。

はだしで砂や土、泥で遊ぶ、外遊び中心の保育です。

■新園舎~子どもたちの様子

リズムあそびの様子(撮影:写真家 今泉真也さん)

「しなやかな身体づくり」を目指して、日々リズムあそびをしています。
いつでもリズムあそびができるように常設の広いプレイホールがあります。
床も壁も、総ヒノキ。
できるだけCDの音源は使わずに、生のピアノを使うなど、自然の音を大切にしています。

■パワフルな職員たち

誕生会の出し物、オペレッタ「3びきのくま」

大ベテラン、中堅から若手までの26名の保育者集団。

誕生会の出し物でも、いつも全力投球。
上記は「さんびきのくま」というミュージックパネルシアターをもとにしたオペレッタです。子どもたちに大人気の劇。
原型がほぼないくらいのデフォルメで、ほとんどお笑いコント状態。

明るく楽しく元気に、保育をする先生方を、私はいつも尊敬しています。

課題

■慢性的な業務多忙

いつも私はこの状態

保育現場は、常に、恐ろしく忙しい。
それも、慢性的に。
常に最繫忙期。閑散期などありません。
年間だいたい292日開所、日祝、年末年始(沖縄慰霊の日も)以外、全て保育所はオープンしています。

■保育業務の多さ

保育業務はやることが多いし細かい

世間で言われている「保育士の忙しさ」は、氷山に例えたら、ごく一部しか見えていないのに等しいと思います。

子どもを保育すること以上に重要なのが、保護者を支えること、保護者との信頼関係の構築なのです。

保護者が家庭で笑顔で子どもに向き合えるようにするために、保育園が保護者の想いを聞き、支える。
「最近大変そうですね」という世間話からアプローチし、保護者の子育ての悩みを聞き、保育園は子どもの良さや頑張っていること、保育で実践していること、家庭でも実践できることなどをアドバイスをしたりして、保護者が子育てに見通しを持てるようにしていく。
保護者と保育園は「協働」して、子どもの育ちに向き合っていく。

本当は、子ども一人ひとりと向きあって、丁寧に関わりたい。
本当は、保護者一人ひとりの想いを受け止めて、丁寧に寄り添いたい。

「子どもと保護者に丁寧に関わりたい・寄り添いたい」という希望を打ち砕くのが、おびただしい量の保育業務なのです。

■運営業務の多さ

会計検査院対応のトラウマが原点

保育園は、事務的な業務も多岐に渡ります。
やることが非常に多い。

社会福祉法人の認可保育園は、補助金(税金)で運営していることから、税金の使途の明瞭さ、すなわち、説明責任を果たすことを、社会的責務として常に意識し、業務を行わなければなりません。

このため、いつでも税務署調査や行政監査が入ってもいいように、①整合性のある、②全て突合された、③すぐに参照できる説明資料、証憑を整えておく必要があります。

なぜ私がここまでやるのかというと、これまで、2度、国の会計検査院にぶち当たった経験(恐怖体験)があるためです。

分厚い書類ファイルの中を、精密機械のように探し出して参照し、数字を突合し、矛盾を見つけ、追及していく。

映画「プリンセストヨトミ」を彷彿とさせる、会計検査院の人たちの恐ろしい神業をリアルで見た時、付け焼刃で書類を整える事務作業では、到底、太刀打ちできないと反省したのです。

こうなると、書類を整えることそのものが仕事となり、やればやるほど、やるべきこと(タスク)が見えて、終わりのない業務が増大していく。
雪だるま状態。

■行政提出書類の多さ

締め切りに追われる

保育業務、運営業務でさえ、非常にやることが多く、忙しいのに、行政提出書類は、さらに上回る多さなのです。

私が入職した当時はFAX全盛期、それもインクリボン式の家庭用FAX。
延々と出力されるFAX用紙。
インクリボンが無くなり、電気店に買いに行く日々(遠い目)。

今は複合機に直接PDFで受信、必要なFAXのみ印刷するという業務改善に相成りましたが・・・。

行政からの伝達事項は、FAXからメール添付のエクセルへと業務改善されました。

ところが、行政が添付してくるエクセルは、たいてい、保護がかかっていて、必要な数字を単純にコピペできないのです。

思わず心の声が・・・

「なんで、ここと、ここのセルを結合したかな!ワレ!」(心の中の怒号)

―—失礼、取り乱しました。

行政からの報告依頼は、「ラブストーリーは突然に」以上に突然やって来るのです。
「延長保育の年間利用者数を明後日までに」
「子育て支援センターの利用者数を明日までに」

メールの冒頭の「お忙しい所恐縮ですが」という枕詞に、のっぴきならない行政側の追い込まれ感も伝わってくるというもの。

「そうよね、お互いに大変ね」と行政の忙しさに思いを馳せ、利用者数の数字を調べていくわけです。

施設側も忙しいのですが、それ以上に、行政側の忙しさがあると推察するのです。

この大変さを、登壇時には、「紙とエクセルの波状攻撃」と表現しました。

■現場は疲弊

いつも私はこのような状態

忙しさから、常に現場は疲弊しています。

今回、私はhive福岡に登壇させていただきましたが、登壇準備をしたこの時期は、保育現場は、1年で1番忙しい時期なのです。

正直なことを言うと、hive福岡大会のスケジュールを見た時に、年度末・年度明けで、非常に忙しくて、出るのは絶対に無理だと思っていました。

それなら、来年の登壇エントリーを待とうか。
そうなると、kintone保育業務改善の内容を、1人で抱えたまま、来年まで待たなくてはならない。
それは精神的に苦しい。

kintone保育業務改善の内容を一刻も早く、保育現場の人たちと共有したい。
できるだけ早く公開したい。共有したい。

保育現場の大変さを、理不尽さを、リアルに知って欲しい。
保育現場の非効率を変えたい。
社会の仕組みそのものを変えたい――。

保育現場を変革したいという強い思いに駆られ、保育現場を勝手に代表するようなつもりで、今回、忙しい中にありながら、登壇を決意したのです。

■業務改善の始まり

思いついてしまったのです

どうすれば、この非効率な仕組みから抜け出せるのか、色々と考えました。
そして、ひらめくわけです。

憧れのリモートワーク

時はコロナ禍、通勤時の密を避けるために、リモートワーク、在宅勤務が推奨されました。
憧れます。夢のようです。
自宅にいながらにして、一歩も外に出ることなく、仕事が成立するわけですから。

対人援助職というジレンマ

「そうそう、自宅でパソコンで作業しながら、園児の様子を見て――って、自宅だから保育園の様子は見られんのかい!」(一応ノリツッコミ)

そうなのです、対人援助職のため、リモートワークができません。

合言葉はICT

そこで、話題のICT化を導入すれば業務改善できるとひらめきました。

ICT化導入システムについての検討

ICT化導入するにあたり、どのようなシステムが必要なのかについて、調べてみました。

■登降園システムのメリット・デメリット

登降園システム

保育のICTシステムについて調べたところ、「登降園システム」というものが入っていることが分かりました。

「登降園システム」をご存じでしょうか?
保育園にお子さんを送り迎えしている人は分かると思いますが、お迎えをする人が、子どもの名前をタッチパネルの画面をタッチしたり、

登降園システム

保育園から貸与のカードを使って、登降園時間をタイムカードのように打刻したりして、園児の登園・降園を管理するという、非常に便利なシステム。

多様多世代の送り迎えが多い

実際に、ICT化導入を考えた時に、保育園の現状について、考えてみました。

保育園は、子どもたちを、多様・多世代の人たちが送り迎えしている現状がありました。

最初に紹介した通り、保育園の位置する地域は、高齢化の進んだ地域にあります。

高齢者はデジタル対応が苦手です。

毎日の送り迎え、これが高齢者が対応すると考えた時に、タッチパネルやカードによる打刻といった、ICTの登降園システムを導入するのは、難しいと考えました。

多世代の送り迎え、と表現しましたが、他には、園児の両親のそれぞれの祖父母、親戚、兄弟、ファミリーサポートセンター、ヘルパー、会社の部下に至るまで、送迎で関わる人たちは多岐に渡ります。

事故防止のための確実な対面引き渡し

タッチパネルに園児の名前を表示することも、プライバシー情報として、難しいこともありました。在園確認をされたくない世帯もいるわけです。

また、前述の通り、送迎に関わる人たちが多岐に渡るため、事故防止のため、確実な対面での引き渡しが必須になるのです。

登降園システム不要の保育システムを探す

既存の保育のICTシステムを使いたい。
出席簿や延長保育料などと紐づいている便利さ。
効率化や管理を考えたら、導入すれば楽になるのは、当たり前。

登降園システムの入っていない、保育のICTシステムを調べてみました。

ほとんどのシステムに登降園が完備

ほとんどの保育ICTシステムに登降園システムが入っていたのです。

保育のICT化補助金(※)の対象として、「登降園システムの導入」が必須となっていたことが決め手だったと思われます。

※保育ICT化補助金とは、厚労省の「保育所等における ICT化推進等事業」を指します。実施取り扱いについては各自治体に委ねられています。 例えば、「保育所等におけるデジタル化推進事業実施要綱」などには、「園児台帳と連動した園児の登園及び降園の管理に関する機能」が「必ず登載していな ければならない」とあり、保育園にICT導入するための補助金を受けるには、登降園システムが必須ということが分かります。

望むシステムが見つからない

登降園システムの入っていない、保育ICTシステムは、どこにもありませんでした。

■デジタルとアナログの融合を求めて

多世代を支えたいだけなのに

求めているのは、多様・多世代の子育てを支えること、配慮を必要とする人たちへの寄り添いでした。

デジタルを苦手とする人たちにも寄り添える、そんなシステムを求めていたのです。

それは、デジタルとアナログの融合でした。

再び、保育システムを探す

保育ICTシステムにはこだわらず、業務効率化を図れるシステムは無いか、探しました。

味方のOSP

そこで、パソコン保守をお願いしている、オフィスシステムプロダクトさんに相談しました。
以下、OSPさんと呼びます。

そして、kintoneと出会うことができました。

導入の課題

導入の課題

kntoneを導入するに際して、課題もありました。

kintoneは何でもできる

パートナー企業のOSPさんに、kintoneを紹介してもらった後、自分なりに色々とkintoneについて調べました。

どうやら、kintoneは、誰でもできる、何でもできる凄いツールだと。

魔法のツール

kintoneは魔法のツール、ほぼ魔法使いだろう、と思いこんでいました。

ではなかった…

「そうそう、kintoneは魔法使いで・・・じゃないんかいっ!」
(一応ノリツッコミ)

「kintoneを入れたら、物凄く業務改善できる!」と思い込んでいました。
そんな甘いものではありませんでした。

何をしたいのか自分で考えなければいけない

漠然とした「業務改善がしたい!」という思いだけでは何も進みません。

課題を洗い出し、具体的に、何をどう改善していくか、具体的プランが必要です。課題に対し、kintoneをどのように使っていくのか、自分で考えなければならなかったのです。

■導入に際して苦労したこと

kintoneを導入する際に、いくつも大きな壁にぶち当たりました。

■やりたいことを全て洗い出す

やりたいことを全て洗い出す

kintoneを保育システムとして活用するならば、保育ICTシステムでできる機能を、全てkintoneで再現できないかと考えました。

このため、やるべきことの洗い出しから始めました。

やること可視化

やるべきことをリストアップし、可視化しました。

私の大好きなGTDの登場です。

ただただ、疲労

保育運営しながらの洗い出し作業で、常に疲労していました。

リストアップすればするほど、終わりが見えない、全体像が見えなくなっていくのです。

「ここはどこ、私は誰、目的地はどこなの」
何をしたいか分からなくなるほどの膨大なタスクの海。
私自身がタスクの海に溺れていました。

■時は新園舎建設事業

時は新園舎建設事業

写真の真ん中でヘルメットを被って立っているのが私です。
私が自分自身のアイコンとして使っているのも、建設時に現場入りするときのヘルメットです。

この時、新園舎の建設も並行で進んでいました。
写真は2020年後半。

現場で作業の進捗確認

机に座って、パソコンを触って、kintone構築をやりたくても、現場監督に毎日のように現場に呼ばれるのです。

蛇口はどうですか、棚の高さはどうですか、伝言板の位置はどうですか、看板の位置は、高さは、角度は・・・。

コロナ禍の影響で、建設工期がかなり遅延していたため、私から現場に入って進捗確認しないといけないこともありました。

お陰で、なかなか進まない。
全然、できない、先に進まない。

本当に疲労

建設対応しながらの作業で、かなりのハードワークとなっていました。

■新型コロナ感染拡大

新型コロナ感染拡大

kintoneと出会った2020年は、新型コロナが始まった年でした。

「自分がコロナにかかったら保育現場が回らない」という危機感から、脱・属人主義を目指して、kintoneを導入したのです。

仮設園舎での生活

感染症対策で保育現場は常にピリピリしていました。

消毒、消毒、消毒・・・
忙しくてkintoneやるどころではありませんでした。

これはもう倒れる

何もかもが全部が重なって同時進行で進んでいたので、本当に大変でした。

■やりたいことを理解してもらう

やりたいことを理解してもらう

kintone保育業務改善は、パートナー企業のOSPさんと一緒に取り組み始めました。

kintone構想の手書きメモ

これは、私のkintone構想の手書きメモ。
色々とやりたいことがあって、書くわけです。

私だけにしか見えていない全体像

既存の保育システムをkintoneで再現しようとしているのですから、かなり広範囲のことを手掛ける必要が出てきます。

余りに範囲が広すぎて、私だけにしか全体像が見えていない孤独。

保育運営の仕組み頭の中を伝えることの難しさ

「やりたいことがすぐに形になるわけではない」のがkintoneの難しいところです。

私の頭の中には、保育の複雑な仕組みがあり、これをkintoneで実現するべくイメージはありましたが、これを具体的にどのように実現するのか、技術が全く無かったのです。

また、OSPさんに保育業務の仕組み(※)そのものを理解してもらうことが、そもそも大変でした。

※例えば、延長保育料計算で、標準時間保育と短時間保育時間で延長保育料が異なること。利用者数を集計して行政に報告すること。4月始まり3月終わりの年度で締めるということ。兄弟児が紐づくということ。支援センターという事業があること。保育年数の計算、誕生月、月齢計算、図書の未返却請求に書籍画像を添付すること、それから、それから、、、色々とありました。

度重なるヒアリング 徹底的な話し合い

私1人では頑張っても越えられない壁を、パートナー企業であるOSPさんとのヒアリングと話し合いによって、技術的サポート受けながら解決し、問題と解決――これを何度も繰り返すことで、保育業務改善の全体像が見えていきました。

また、時間がない・技術も全く無いという時に、OSPさんに必要な部分の開発をお願いしたりしました。

繰り返す修正と開発

作っては動かし、エラーを見つけては修正する。
この繰り返しによって、課題を一つひとつクリアしていきました。

チームで始める保育業務改善

パートナー企業というより、チームで保育業務改善に取り組んできました。
(私の求めることが大きく難解で、負担はかなり大変だったと思います)

kintone保育業務改善のコンセプト

kintone保育業務改善のコンセプト

そして、今回、登壇して発表することができました。
これが、kintone保育業務改善のコンセプトです。

子どもの入園から卒園まで
子どもの育ち・子育て支援を
可視化・共有化・一本化

kintone保育業務改善の内容

kintone保育業務改善の特徴は、次の3つです。
①子ども・子育て支援の全情報を一本化
②いつでもアクセス
③リアルタイム更新

脳内イメージが実現

この手書きのメモが・・・

kintone全体図

kintone全体図

このように全体像になりました。

核となるアプリ・アプリ・帳票が、各スペースに配置され、関連する線で結ばれています。

今後作りたいアプリを含めると、保育ICTシステムに匹敵するとまではいかなくても、引けを取らないくらいのバリエーション持つ、包括的なシステムだと思います。(ただの自画自賛)

■園児情報の一本化

園児情報の一本化

園児情報を一本化して、可視化しています。

これまでは園児の情報をエクセルで記録していましたが、園児の情報に変更があると、エクセルをコピーして新たに保存、古いデータも変更前のファイルとして残しておく必要がありました。

例えば、園児の苗字が変わると、古い苗字のファイルも残しつつ、新しい苗字を上書きしていくので、最新エクセルと古いエクセル、沢山存在することになります。

それぞれが残っていくので、「エクセルの何が最新か分からない問題」が生じて、管理がとても大変でした。

kintoneだと、最新情報で園児情報を一本化しているので、変更履歴も残しつつ、全部を園児のレコードで見ることができます。

また、園児の情報は、①園児マスタと②年度園児名簿と分けているので、不変情報を園児マスタに、年度で変わる情報を年度園児名簿に分けています。
これにより、過去の年度情報の履歴も確認することができます(たとえば、現5歳児の3歳児クラス時の情報を取り出すなど)。

これらは児童票としての位置づけになります。

■関連レコード

愛すべき関連レコード

園児名簿に紐づけている関連レコードです。

これまでは、これらを全部、それぞれの紙の書類やエクセルで管理していたため、管理が非常に煩雑でした。
関連レコードで園児の情報が全部見れるというのは、本当に便利です。

愛すべき関連レコード

このように、園児の情報を全部紐づけて一本化して確認することができるため、これまでの書類やエクセルの管理が一切不要になりました。

請求管理も関連レコード

請求管理も関連レコードで見れるので、便利。

■新型コロナ速報

新型コロナ速報

最新の新型コロナ情報も確認することができます。

感染疑いから検査結果、健康状態、療養期間、隔離期間、時系列、市からの報告内容など、全ての情報を集約しています。

日々の状況をリアルタイム更新していくため、あの2022年1月の凄まじい沖縄のパンデミック状態を乗り越えることができたのは、kintoneで管理していたからなのです。

ちなみに2021年8月、東京五輪のパンデミックの時は、新型コロナ速報のアプリを作っていなかったため、紙で管理していて、非常に大変でした。

関連レコードさん、ありがとうございます☆
(言いたかっただけ)

■カレンダーの活用

カレンダーの活用

皆さんはスケジュールなどで使われることが多いかもしれませんが、私は、日毎の入力状況を確認したくて、レコード一覧では分かりにくいということもあり、カレンダー形式で使っています。

最終的には、行政への実績報告としての活用を想定してい使っているため(会計検査院とか!)、抜け漏れがないようにするために、カレンダーで表示しています。

■グラフの活用

グラフの活用

これは、職種別の常勤換算数という、社会福祉法人ならお馴染みの話です。

これまではエクセルで毎回計算していたので、非常に面倒でした。

kintoneだと、職員マスタに例えば4月1日時点の1日の労働時間数・週の労働時間数を入力しておき、常勤換算数の計算式を入れておけば、すぐに集計できるので、非常に便利です。

エクセルだのピボットテーブルで集計していたものが、kintoneのクロス集計で、ありとあらゆる場面でできるので、行政への実績報告が、非常に便利になりました。

活用頻度は、非常に高いです。

グラフの機能グラフさん、ありがとう☆
(これも言いたかっただけ)

■帳票出力の活用~レポトン

帳票出力の活用~レポトン

関連レコードだ、グラフだ、リアルタイム更新だ、なんだかんだ言っていますが、保育園は結局は紙で出力することが非常に多いんです。

この点、レポトンというプラグインを使って帳票を出力しています。

緊急連絡簿

園児がけがをした時、急病の時など、1分1秒を争うタイミングで、園児の生年月日、最新月齢と薬アレルギー、保護者の氏名や連絡先などが反映された「園児の直近情報」を出力し、救急隊に手渡したり、病院に付き添う職員に手渡しています。

これまで何度も出力し、本当に何度も助けてもらいました。

これまではエクセルを立ち上げるには時間がないために、紙の園児台帳をコピーして手渡していました。
紙の台帳では、園児の最新月齢(今日、何歳何か月)が分からないことから、不便を感じていました。

kintoneのお陰で、最新情報を出力できるので、非常に便利です。

保護者徴収金の領収書

「保育園は書式が沢山あって大変」という声がよく聞かれますが、書式はどれほど沢山あっても、ノープロブレム!

kintoneに最新情報を入力しておくだけで、書式がいくらあっても、どのような形式であっても、構わないのです。

100種類の書式があっても、必要なデータはkintoneに入力した一つだけ。

書式に流し込む「場所」が異なるだけであって、「内容」は一つなのです。

また、保育園に元々ある書式が使えること、レイアウトも自由に調整できるのが、本当に便利です。

出力ボタンの多さ

色々とレポトンで出力した結果、出力ボタンが多くなりました。
沢山ありますが、それぞれ大事ではあるんです。
整理整頓が必要ではありますが・・・

私はレポトンのことを、勝手に「ワードの流し込みの機能」として捉えている節があります。
レポトンがあれば何だってできる。使えばわかるさ、ありがとう!

レポトンさん、本当にありがとうございます。
(これが一番言いたかった)

■激推しアプリ~小口現金出納帳

小口現金出納帳

私の推しアプリです。

これまではエクセルで管理しており、入力する度に毎回エクセルを立ち上げるのが時間がかかり、面倒でした。

kintoneを使うようになって、欲が出て、「自分で作ってみよう!」とチャレンジしてみたところ、高度過ぎて、私の手には負えず、完全撃沈・・・。

OSPさんに作ってもらいました。

さすがプロのお仕事で、月ごとに残高が確認できるのは、また便利。
現在残高も一目で確認。

エクセルに書き出しして、補助事業申請の費用計算の基礎表として活用。
例年は費用計算に1週間以上かかっていた(科目の抜け漏れの確認に時間がかかる)のが、今年は2時間で仕上げることができました。最短!

最も使用頻度の高いアプリです。

kintone導入の効果

業務負担が著しく減少

エクセル管理が減ったので、業務負担が大きく減りました。

特に、これまで、転記の2度手間・3度手間があったところを、全てkintoneに集約しているので、転記のミス・漏れも無くなり、また、エクセルやCSVの書き出しを活用することで、業務負担が著しく減りました。

2022年春、大学院卒業

業務負担が減ったので、修士論文を書きあげることができ、大学院を修了することができました。

大学院での学びは、コロナ禍で科目試験が受けられないなど、モチベーションが保てず、何度も諦めかけました。
大学院の事務局の度重なる励ましがあり、何とか修了するために奮起して、科目試験も在宅試験で乗り切り、修士論文も書き上げ、修了することができました。

色々なことが同時進行で進んでいた中、私が最後まで頑張ることができたのは、園児情報一本化というkintoneによる業務改善の道しるべによって、心的負担が軽くなったお陰だと思っています。

自己実現することができたのは、kintoneのお陰です。
本当にありがとうございました。

今後の目標

今後の目標

これまで作ってきたアプリのお陰で、運営と行政提出関係の業務改善がかなり進み、だいぶ見通しが良くなってきました。

今後は、保育の部分を充実させていきたいと考えています。
支援センター、図書の運用も始めていきます。

また、私以外の先生方が使えるように、社内共有化を図っていきたいです。

他の保育園との事例共有

また、私たちと同じ理由で、保育システムを導入することの難しい保育園などにも、kintone導入を検討してもらいたいです。

kintoneを通して、例えば保育のこんなことが困っているとか、保育園同士の相談など、プラットフォーム的な場所、情報共有の場も作っていきたいです。

保育園以外にも、認定こども園、幼稚園、放課後等デイ、児童発達支援事業所、学童やその他の児童福祉施設でも、どこでも使えるシステムとして、普及させていきたいです。

行政とデータ共有

最も私がやりたいと考えているのは、行政とのデータ共有です。

これまで行政と施設側で、紙やエクセルのデータ受渡しにより、互いに入力の手間やミスが出てしまうという、不便な面がありました。

これを、施設側がリアルタイム入力したデータ(園児マスタ、職員マスタ)を、行政が閲覧・確認するという作業のみによって、完結するシステムにしていけば、双方の負担が大きく減ると考えています。

施設側は常にkintone上に最新情報を入力しておくようにすればいい。
行政はそれをチェックすればいい。

なんてWIN-WINな関係!
これは間違いなく、業務効率化、子育て支援につながると考えています。

また、保育園を卒園していく子どもたちの、就学先の小学校や幼稚園などへ紙で提出する保育要録や移行支援資料の保育・教育履歴を、kintoneを通し絵、学校・幼稚園とデータ共有することができれば、双方の業務改善につながりますし、何より、今までの保育要録に書ききれなかった細かい事項までの申し送りが可能となります。

多様多世代の子育てを支える

私がこれまで幾度となく大変な壁にぶち当たりながらも、がむしゃらに何とかのりこえてこられたのは、保育現場で同じ悩みを抱えて、大変な思いをしている人たちの、環境や状況を変えたい、業務改善したい、「保育業務の非効率」を何とかしたい、という熱い思いからなのです。

保育園は、ただの1つの施設に過ぎませんが、保育という営みは、保護者と保育園が協働して子どもを育てる営み、保育園と地域とが連携して、地域の子どもを育てる環境を支える営みなのです。

子ども一人ひとり、保護者一人ひとりと丁寧に向き合い、寄り添えるような社会にしていきたい――

私はkintoneに出会ったことで、この素晴らしさに慧眼し、これを活用すれば、保育業界が変わるかもしれない、という希望に似た確信を持つことができました。

今回の登壇を、社会を変えるきっかけにしていきたい――。
そんな熱い思いで、私は今ここに立っています。
kintone hiveに出られたことを、心から感謝をして、私の発表を終わります。

ご清聴ありがとうございました。

終わりに

終わりに

kintone保育業務改善は、これからどのように広がっていくのでしょう。

広がってくれたら、嬉しい。

できることなら、保育園名のたんぽぽの綿毛のように、広く、遠くへ、活用が広がって欲しい。

今後は、現在使っているアプリを紹介する形で、使用事例をお伝えしていきます。

長々とお読みくださり、ありがとうございました。
14000 文字オーバー。
さすがに書き過ぎましたね。反省・・・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?