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酔っ払いが「俺は戦争で人◯ってきたんや」と自慢しやがりまして

 昭和の時代の話なんですが、うら若い乙女だったわたしは、ローカル洋品店のバイト店員をしておりました。

 当時はサラリーマンも学生も、土曜日もしっかり労働や勉学に励んでいた時代。
セクハラや男女雇用機会均等法なんで単語もなく、求人広告に
『男性技術社員募集。女性事務員も若干名募集(25歳くらいまで)』
と当たり前のように書かれていた時代でありました。

 そんな時代の地方洋品店の客層は主に近所のおばちゃんなのですが、日曜日にはたまに酔っ払った爺さんが起こしになられておりました。

 その酔っ払いじーさんのうちの一人が、くるなりギャーギャー喚きたてるじーさんで、二言目には
「おれは大陸で人を◯してきたんや」
「日本刀でばさーっとな、ばさーっとやってきたんや」
とおっしゃられる。
仕事してなきゃ、こちらも怒鳴り返して
「うるせえ、じじい。うせろ」
と罵り返すところなんですが、仕事中なんで、
「わー、やめてくださいよぅ。そんな怖いお話はいやですぅ〜」
とぶりっ子して聞き流してた。

 このじーさん、「ばさーっとやってきたんや」以外の話をしないので、多分やったのは一人か二人、状況的には自慢できない状態でたまたまばさーっとできただけなんだろうな、てか、ばさーっが自慢できると思ってるのがおめでたいな、怖がると思ってるのかな、家で家族は誰も相手にしてくれないから、日曜の昼間から酒飲んでこんなところで絡んでくるんだろうな、とか聞き流しながら思ってました。

 今から思うともう少し根掘り葉掘り聞いておけば、戦時中の生きた証人のお話くらいにはなったのかな?と思わないでもないですが、多分このじーさんなら、食いついて話聞いたら、話盛りまくって「俺様が英雄的日本兵士」ってホラ吹きそうだから……だめか。

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