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阿吽の呼吸

外出先の帰り道、いつもなら電車とバスを使うルートを、のんびり座って帰りたいとバス→バスと乗り継ぐルートを選択した。

一番後ろの座席に着席し出発を待っていると、隣に85歳位のご夫婦が着席された。
蒸し暑い車内で、妻が「水飲んだほうがいいね」優しい声で言う。夫も「まだ、エンジンかけとらんからな」と返事する。
なんて微笑ましい、そして羨ましい。

バスもようやく出発し、少ししてから妻が「お父さん、夏のズボンは下がパッ(両手の指を勢いよく開き)と広がっているほうがいい? それともしゅっとすぼまってるほうがいい?」と質問した。
この夏の着るもの購入計画だろうかと思いながら聞いていると、夫が「パッと広がっているほうがいいな~」と返事した。
すると妻は「お父さん、それじゃパジャマみたいよ、パジャマ」
夫は、反論せずにいたが、横で聞いていた私は吹き出しそうになった。

いやいや、好きなほうを答えた夫の立場がないじゃないの。しゅっとすぼまってるほうを選んでいたらどんな返答をしたのかしら…。

少しすると、夫は妻の手首の辺りを撫でて「少し冷たくなってきたね」と 車内のクーラーが効きすぎてないか心配していた。

これが、このご夫婦の永年積み重ねてきた生活なんだろうな。どちらからともなく気遣い合いながら、途中で下車されたご夫婦を見送りながらほっこりとした気持ちになった短いバスの旅だった。

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