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飲食店経営者です。企業秘密にしているレシピがあるのですが、「アレルギーがあるから」とお客様から原材料などを聞かれました。この場合、お店としては答えなければいけないのでしょうか?

 近年は、特に消費者のアレルギーに対する意識の高まりが見られ、飲食店でもメニューなどにアレルゲンの表示をしているお店も多く見られるようになりました。食品アレルギーは命に関わる場合もあり、これへの対応はとても重要な問題です。

 しかし、飲食店としては、時間とお金をかけてたどり着いたレシピを簡単に外部に開示するわけにはいかない事情もあります。

 飲食店として、どこまでレシピの内容を開示しなければならないのかを解説します。

直接的な回答義務を定めた規定はない

 消費者に対して原材料等の情報を提供する主な仕組みとしては、食品表示法という法律があり、同法4条に基づいて食品表示基準というものが策定され、具体的な表示の規制がなされています。

 しかし、生食用の牛肉に関するもの以外は、飲食店での食事の提供に際して食品表示基準は適用されません。

 (なぜ飲食店に食品表示基準が適用されないかについての消費者庁の説明→『食品表示基準における 販売形態ごとの適用範囲について』

 また、他に飲食店への原材料等の回答義務を直接的に課した法律などは現在のところありません。

 そうすると、どれだけお客さんから聞かれようとも答える義務は無い、ということで良いようにも思えます。

 しかし本当にそれで良いのでしょうか。

回答義務が発生する可能性

 直接的な回答義務は無いとしても、お客さんからの質問に答えなかったことによりアレルゲンを摂取させてしまい、お客さんに重篤な結果を生じさせたという場合、飲食店は一切の責任を逃れることができるでしょうか。

 私は場合によっては飲食店の責任が発生すると考えています。

 もちろん、リスクがある以上当該飲食店での飲食を避けるべきであったという客側の落ち度はあります。

 しかし、少なくともお客さんからアレルゲンを聞き取り、その食材を使用しているかどうかを回答するなどの対応をすべきであった等として飲食店側の損害賠償責任が認められる可能性は十分にあります。

 飲食店は食品表示基準の対象ではないからといって安心するのではなく、アレルギーなどに対する意識を高め、質問があればお店で使っている食材のリスクと安全性についていつでも答えられるよう準備しておくことが求められます。

 また、企業秘密だからといって一切の情報開示を拒む頑な姿勢ではなく、飲食店側から積極的にお客さんの不安を解消しようとする姿勢を持つことも重要です。

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