朝井リョウの『スター』は面白くなかった

朝井リョウさんの『スター』という作品を読みました。自分は色々と本を読む方ではないのですが、朝井さんの作品はエッセイを含めるとこれまで4冊ほど読んでいて、ふと本を読みたいなと思ったときに自分の中で必ず選択肢に入る作者の一人です。そんな気持ちで今回は『スター』という作品を手に取ったのですが正直面白くなかったです。なにが面白くなかったのか違和感を少しでも言葉にしておこうと思って読書感想文を書いています。

先に良かったところを述べると、YouTubeとかTiktokのような流行、それに伴い次々と消費されていくだけのモノ、コンテンツの本質に対して皆が抱いている違和感について考えさせられる強いメッセージがあった。改めて良いものを作るとは何かを考えさせるというきっかけを作ってくれた点はすごく好きでした。

一方で何が面白くなかったかというと、物語である必要性がまったく感じられなかった。主人公である二人が物語で持つそれぞれの葛藤やそれに対する答えは作者自身が昨今のものづくりの風潮や業界に対して持っている考えでしかなくて、そのメッセージを伝えるために話が進んでいるだけにしか思えなかった。そして、そのメッセージを伝え終わると役目を終えたように物語を盛り上げることなく話が止まってしまった。主人公以外にも彼女や先輩が強いメッセージを伝えるシーンがあるが、物語としての必要性よりもメッセージを伝えるために登場したようにみえて都合が良すぎる感が否めかった。これもテンポの良い二人の会話で行われるというより一方的に話し続けるという点が個人的には好きではなかった。

二人が葛藤している姿はもう少し丁寧に描写しても良かったと思うし、その葛藤の先に見つけたものに二人で向かっていくような作品だと個人的には予想していたので、肩透かしを食らった気分でした。単純にこれは自分の好みです。

結論として、なにが面白くなかったかというと物語である必要がなかったから。朝井さん自身が「最近のYouTubeについて思うこと」「オンラインサロンってどう思う」というテーマでコラムを書けばいいのではと思う作品でした。そんな拙い感想文です。

次は『正欲』読んでみます。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?