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「怒り」や「憎しみ」を超えるもの

先日、「怒りや憎しみ」というのは人間の最大のモチベーションになるんだよって話を「ニイゼロ★ウェビナー」(https://20webinar.com)のビリギャルさん(小林さやかさん)の講演で聞いた。

何でも、ビリギャルさんのオヤジさんは「酷いくそオヤジ(本人談)」で、ビリギャルさんが慶応を目指すから塾に通うお金を出して欲しいとお願いしたところ、「お前なんかには無理!」と全く相手にされず即ボツにされたそうだ。で、実際にお金は出してもらえず。それを塾の先生に話したところ、塾の先生はあくまでも前向きで「良かったじゃない」って。何が良かったかというと、冒頭の「憎しみは人間の最大のモチベーションになるんだよ」って話をしてくれたそう。要するに、ガムシャラに頑張る大きなモチベーションを手に入れたねって。オヤジ憎し!みたいな。見返してやるぞ!みたいな。

そんな赤裸々なエピソードがすごく面白い講演だったんだけど、昔(20年ぐらい前)似たような話を本で読んだことがあって。「憎しみや怒りのモチベーションはとてつもなく大きいものだ」という点は似ているけど、最後のオチがちょっと違う。あ、オチじゃなくて結論。

その本に書いてあったのはこんな話。

本といってもビジネス書や自己啓発本ではなく歴史小説。あの「関ヶ原の戦い」が舞台だから話が分かりやすくて、石田三成率いる西軍の武将を、徳川家康が懐柔し切り崩して寝返らせていくお話。キーワードは「利」「恐怖」「怒り(憎しみ)」。

西軍に味方する大名のうち「利」で西軍についているものは「恐怖」で簡単に東軍に寝返らせることが出来たそうだ。西軍が勝てば今よりも大きな領地を手に入れることが出来るという「利」だけでなびいている大名には、「勝つのは間違いなく東軍。東軍が勝った暁には首を洗って覚悟しておれ!」と脅すだけでピヨピヨとなびいてくる。それだけ「利」というモチベーションはあてにならないフニャフニャのモチベーション。「利」よりも「恐怖」の方が、やばいやばい!って感じで人を動かす強いモチベーションになるというわけだ。

そして、「恐怖」よりも高いモチベーションになるのがビリギャルさんも言ってた「怒り(憎しみ)」。加藤清正や福島正則なんかがそうらしいんだけど、家康は、朝鮮出兵時の三成に対する彼等の私怨を巧みに利用し東軍へと引き込んでいく。三成憎しという感情は「利」や「恐怖」を遥かに上回るそうだから、西軍側がいくら「領地をどうこう」「裏切り者として処罰」なんて言っても寝返らせようがない。実際に三成憎しというモチベーションで獅子奮迅の働きをして見せたという、そんなお話でした。

例えば、子供が自転車に乗れるよう特訓するときに、「自転車に乗れるようになったらおもちゃを買ってやる」よりも「自転車に乗れなかったら晩飯抜きだぞ!」の方が効果的だと言うこと。そんな会社あるある。恐怖政治的な。そんな国もあるな。もちろんいい悪いは別にして。そして、それよりも効果があるのが、この本の法則によると「あいつはまだ自転車に乗れないってみんなバカにしてたぞ。悔しくないのか。見返してやれ!」なんてけしかけて「何クソー!」って発奮を促すこと。実際に、ほとんどの会社が競合他社を仮想敵とみなして「負けるなー!」「打倒〇〇!」ってやってるし。あながち間違ってないような気もする。

それで、オチがどう違うかっていうと、その本には「怒り(憎しみ)」を遥かに超えるモチベーションというものが存在するって書いてあった。それは何かと言うと「義」だという。

石田三成の盟友であった大谷刑部吉継が「利」で揺さぶろうが「恐怖」を与えようが、全くぶれることなく東軍になびかなかったのは、石田三成に対する「義」があったからだと言う。「怒り」という感情を遥かに超え、人間を突き動かす原動力になるものは「義」だそうだ。大義、正義、義憤、義気、義挙、義理人情の「義」。

広辞苑には「義」とは、『道理。条理。物事の理にかなったこと。人間の行うべきすじみち。利害をすてて条理にしたがい、人道・公共のためにつくすこと』とある。
人間が持ち得る最大のモチベーションが「怒り」や「憎しみ」なんて脱力感満載の結論ではなく、「義」であり「友情」であり「愛」であって欲しいと願う。
「自転車に乗れるようになったらおもちゃを買ってやる」よりも「自転車に乗れなかったら晩飯抜きだぞ!」よりも、「家に帰って、自転車に乗れるようになったーって言ったら、お母さんすごく喜ぶぞ!」「お母さんの喜ぶ顔見たいな!」が断然素敵な感じ。

自身の利益や保身ではなく、誰かへの怒りや恨みつらみではなく、自分以外の誰かのために、誰かを幸せにするために頑張れる人間が、長い目で見れば、最も活動的で、最もブレず、最も幸福感を持って、一番いい仕事をするってこと。世の中そうあるべきだ。


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