風呂場で塩をモミ込む
たしか映画『グラン・ブルー』のワンシーンで、男性がシャワーをしながらその足元では、足で器用に皿を洗っていた。
少年時代の僕は「あぁなんとも合理的でいいもんだな」と感心し、その影響からか、僕は結婚してからずっとシャワーは奥さんと一緒だ。
いつも彼女から跳ね返った飛沫(しぶき)でシャンプーをしている。
なので、僕は基本的にしゃがんだ姿であり、彼女のシャンプーが長い時は、ついでにタイルを洗う。
「お湯がもったいないから、一緒に入っているんだよね」と言ったら、「ちがうでしょ」と奥さんから返された。それぞれが黙ってさっさとシャワーを浴びた方が、お湯の消費量は減るはずだ、と。
「太もも触りたいからじゃないの?」
そうでした。奥さんの太ももは乾燥肌なので、最後に風呂場でボディーローションを塗るのだが、彼女は怠惰な性格なので僕が塗ってあげている。
「あのとき、あなたから豚肉に塩もみ込んでいる時と同じ音がするのよね。口から音出てるわよ」
ああ、しまったバレてる。
ボディーローションを丹念に塗り込みながら『焼肉はやっぱり雄牛より雌牛だなー』なんて考えていたら、想いが伝わってしまったようだ。
「人の太もも触りながら焼肉を考えるなんて失礼な話だけど、まぁ唯一WinWinの関係よね」
そーなんです。風呂場はそう考えると、貴重なコミュニケーションの場なんです。
たまーーに肉つまみながら「塩コショウ&ハーブでシンプルに」とか「塩漬けして生ハムが旨そう」とか言いていますが、アレは冗談でございますので。
これからもボディーローション塗らせてね。