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Illinois Bar - ②勉強・試験当日編

このnoteは、Illinois Barを目指す方向けの勉強面の準備に関する記事です。出願準備に関しては、前回のこちらの記事をご参照ください。

https://note.com/akawashiro/n/n67b80cc48601

Illinois Barもテスト自体はUBEで、NY Barと同じです。そのため、先輩方のNY Barブログ・noteを参考にさせていただきつつ、勉強方法を決めました。私は特に、増田先生のブログ酒井先生のnote平野先生のnoteこちらのブログを参考にさせていただきました。

1.MPRE(法曹倫理)

まず、MPREについては、NCBEのウェブサイトでアカウントを作成し、受験を申込みます。MPREは現時点でもオンライン試験を開催していないようなので、アメリカ国内の最寄りの試験会場を選択して、受験する必要があります。

MPREについては、Barbliがオンライン授業、テキスト、オンライン模擬試験を無料で提供しています。勉強量としては、出回っているBabliテキストの日本語訳でインプットした上で、オンラインの模擬試験を数回分解けば十分ではないかと思います。一般的に、簡単と思われているMPREですが、さすがに無勉で合格するのは難しく、ある程度問題慣れして、試験時間内に解き切れるように準備する必要があるように思います。準備期間は1週間程度です。

受験のタイミングとしては、11月、3月、8月に開催されており、どのタイミングで受験することも可能です。周りを見ますと、ロースクールの前期である11月に受験される方、後期の3月に受験される方が大半なように思います。私は、のんびりしていたのでロースクール卒業後の8月に受験しました。遅く受験するメリットとしては、ロースクールで法曹倫理の授業を取った後なので、取り掛かりやすいことがあるように思います。

2.UBE

(1)基本方針

私は、他の受験生に比べて相対的に英語力で劣っていることがわかっていたので、オーソドックスに、択一試験(MBE)、論文試験(MEE)共通の科目の勉強を進めて確実にMBEでハイスコアを取れるようにして、その上でMEE固有科目の勉強を最低限やって逃げ切るという戦略を採用しました。

(2)使った教材

・Barbliその他予備校の講義

私は授業は受講しませんでした。インプットの方法として、聴くのが得意な方、読むのが得意な方がいると思いますが、個人的には、日本人ノートを一から読むのはかなりしんどかったので、Barbli等の授業を聞き、日本人ノートをノート代わりに使うという方法が効率的かもしれません。

・MBE対策

① 日本人ノート
② Emanuel Strategies & Tactics for the MBE(紙媒体の問題集、過去問(民訴の半分はオリジナル問題)+公式のサンプル問題で構成)
③ Adaptibar(オンライン問題集、過去問+公式サンプル問題)
④ (辞書的に)アメリカ法ベーシックシリーズ                

・MEE対策

① Smart Bar PrepのSmart Sheets(短い方のSmart Sheetsのみ)
② 日本人ノート付属論証パターン(部分的に参照)
③ Barbli問題集

・MPT対策

① 各州の司法試験委員会が公表している過去問
② 各州司法試験委員会の公表している優秀答案

(3)勉強方法(MBE編)

MBEはいわゆる択一試験で、事例を読んで4つの選択肢から解答を選ぶ形式です。通常100問を3時間(180分)で解くので(※)、1問を平均1.8分、つまり1分48秒で解く必要があります。

まず、勉強の取り掛かりとして、2月中頃から同じアパートに住む同級生4名で、各自日本人ノートを読んだ上で集まって、週1回、Emanuelの問題を50問解くゼミをしていました。とりあえず問題の難易度を知ることを目的にして、忙しい時期は休んだり、都合に合わせてスキップしたり緩くやっていました。この時期に読んだ内容は本格的に勉強を開始した6月頃にはだいたい忘れてしまっていましたが、早く始めたことで、科目ごとの取り掛かりやすさ、相性などをつかめ、6月以降のスケジュールを立てる上で役立ちました。勉強会については、メリット・デメリットあると思いますが、慣れないアメリカの制度についてみんなで文句を言いつつ勉強するのは単純に楽しかったですし、Bar受験のモチベーションが上がらないタイミングで、強制的に勉強する機会を設けるという意味でも有用だと思います。

6月初旬から本格的に勉強を開始し、日本人ノートを通読するのと並行して、Emanuelで1回解いた問題の復習をしました。

インプットはひたすら日本人ノートの通読を続け、問題の復習時に参照するのとは別に、苦手だったCivil Procedureについては6回、その他の科目は4回通読しました。Civil Procedureについては、日本人ノートの記載がわからない箇所についてはアメリカ民事手続法を参照しました。また、当初理解に苦しんだReal Propertyについては、アメリカ財産法についてのブログを参考にしました。

Emanuelの復習が終わった後は、Adaptibarで問題を解きました。Adaptibarはスマホアプリがあるので、隙間時間にプールサイドでポチポチとかも可能ですし、PC版は試験本番とインターフェースがほぼ同じなので、本番前に試験形式に慣れる意味でもよかったと思います。各問題について他の受験者の正答率がリアルタイムに表示されますし、その日の終わりに当日に解いた問題の正答率や、過去累積の正答率が出てくるので、ゲーム感覚でできて、特に試験準備後半の飽きてきた時期にとてもよかったです。また、科目ごとの正答率で一見して自分の得意不得意がわかるので、自分の状況把握にもとてもよかったです。

MBEに関しては、試験前までにEmanuelで900問、Adaptibarで約500問の合計1400問を解きました。Emanuelを解き始めた当初は英語を読むのに本当に時間がかかり、1問3分近くかかることもありましたが、試験直前には1分40秒程度で解けるようになり、本番でも解き終わった後にフラッグを立てた問題を確認する余裕がありました。

結果としては、MBE155点で、過去の7月のUBEの正答率換算表を参照するとだいたい80%程度得点できたようです。Adaptibarの累積の正答率が83%程度だったので、だいたい同じくらいだと思います。

※ 2020年10月開催の試験でMBEは50問90分の2セットでした。

(4)勉強方法(MEE編)

MEEは、1ページ程の事例の後に3,4問の小問が付いている記述式問題で、それぞれにIRACの形式で回答する必要があります。

MEE固有科目については、MBEのスコアが安定してきた試験の1か月前に着手しました。本格的に着手してすぐに試験範囲が思った以上に広く、絶望しました。MEEの試験範囲についてはNCBEのサイトをご参照ください。

インプット教材は、Smart Bar PrepのSmart Sheetsという全科目で100ページ弱のまとめ教材を使いました。Smart Bar Prepを購入すると、Smart SheetsとEssay Priority Outlineという300ページ超のものの両方もらえますが、長い方は複数回回すのに適さないと思われたため、短い方を使いました。

Smart Sheetsは短くまとまっているものの、デメリットとして、短すぎて記憶に残りにくい、論証としての使い方がわかりにくいという点もあるので、もう一度やるとしたら、日本人ノートと併せて共有いただいた、Smart Sheetsをベースに作成された付属論証パターンを使うかもしれません。

勉強方法としては、Smart Sheetsで軽くインプットをしたら、Barbli問題集で答案構成をしてすぐに回答を読むことにしました。並行して、Smart Sheetsの通読を続け、Smart Sheetsをざっと3回読んで、問題集を14科目について4問ずつ解いたところで試験当日を迎えました。当初の予定では、各科目7問程度解き、自分なりの論証パターンを作ったり、過去の傾向から出題予想をしたりするつもりだったのですが、時間切れで、一部知識が曖昧なまま受験することになってしまいました。

当日の試験でもFamily lawに関して、記載すべき事項が一切思いつかない小問があり、問題、結論、ごく簡単な理由付けをでっち上げて書くことになってしまいました。MPTと合わせたWritingのスコアは145.2点で60%程度の得点率のようなので、MPTにより押し上げられたのかもしれません。

(5)勉強方法(MPT)

MPTは、ロースクールのWritingの授業の課題と似ており、パートナーからアソシエイトである受験者宛に、クライアントからの相談メール、資料等が転送されてきて、指定された法的論点に関して、メモランダム、Opnion Letter、Brief等の形式にまとめるというのが頻出の出題形式です。事案に関する資料、法律、判例等を読みこんで短時間でまとめる必要があります。

所与の法律知識を問われるものではなく、与えられた資料を調理すればよいので、問題それ自体は難しいものではありません。ただし、時間との勝負なので、自分の読むスピード、タイピングスピードを踏まえて、資料を読む時間と、書く時間の時間配分、各論点にかけられる時間・文字数をしっかり意識して、書き切ることが大事なように思います。資料があり書けることがたくさんあるだけに、1つの論点を大展開して尻つぼみになることが往々にして考えられます。私はとにかくコンパクトに最後まで書き切ることを目標にしました。

事前にフォーマットをメモランダム、Brief等の文書の種類に応じて数種類用意して、直前に見てから試験に臨むことも、時間短縮には有用なように思います。

各州の司法試験委員会が過去問と参考答案を公表しているので、それを利用して私は勉強会をしていた仲間と2回分過去問を解きました。Georgia州の司法試験委員会はかなり豊富に過去問と解答サンプルを公表しています。NCBEのサイトでも過去問とそれぞれのPoint Sheetが入手可能です。当然ながら解答サンプルはネイティブが書いていてものすごく長いので、本当に参考程度に見て、自分なりの短い書き方を別途考える必要があるように思います。

(6)オンライン試験について

2020年7月の試験はコロナ禍の影響で、10月に延期され、かつ、史上初のオンライン試験となりました。

オンライン試験に向けて、試験の3週間ほど前に事前に試験ソフトが配布されました。システムテストとして、モック試験を受験して、実際に解答を提出することが求められます。特に白紙で出して構わないのですが、特にMPTについては実際に時間内に書いてみて、資料をデスクトップのどの位置に開くかなどソフトの操作感と、タイピングスピードを踏まえた記述量などを把握するとよいと思います。

試験ソフトを起動した後はPCはロックされて、他のソフトは使用できなくなります。試験ソフトの起動中は、PCのインカメラで録画されます。不自然な動きがあると、AIが検知してフラッグを立て、重点審査に回されるそうです。

試験自体については、(会場受験で、自分のコンピュータを持ち込む場合と差があるのかわかりませんが)MBEについては問題文と選択肢が画面に表示されて、選択肢をクリックする形式、MEE・MPTについては長文の問題文と大きな解答欄が表示され、解答欄に記述する形式です。デュアルモニタは禁止されており、特に、MPTについてはノートPCだと小さな画面で問題文と記述欄の双方を表示するのがかなり厳しいです。留学先での受験の場合難しいかもしれませんが、可能であればデスクトップPCに試験ソフトをインストールして、大きなシングルモニタで受験することが望ましいように思います(私は気合で14型ノートPCで乗り切りました。)。

MPTに関して、UBEを採用する州でも、問題文のコピー&ペーストをできると発表する州、できないように読める記載をする州があり、試験当日まで不明確でしたが、結果として、私自身はコピペできませんでした。Twitterを見ると、コピペできた方もできなかった方もいらっしゃるようで、コンピュータの仕様か、操作が難しかったかのいずれかなのかと思います。

ちなみに、私はPCと試験ソフトの相性が悪かったのか、試験ソフトを起動後、試験の開始前に試験ソフトによりPCがロックされた状態でシステムがフリーズし、PCが全く動かなくなるというシステムトラブルに2日連続で見舞われました。しかも、40分以上かけてやっと電話のつながったサポートデスクでもたらい回しにされたため、両日ともに受験開始前に心が折れかけました。

フリーズ中も録画は続いていたようで、本来ならば試験を開始しているはずのタイミングでサポートデスクに電話したことについて、AIの監視でカンニングのおそれありと検知され、試験時間中に電話したことはカンニングではない旨の念書の提出をさせられました(サポートデスクにシステムトラブルの記録が残っていて、電話のタイミングで試験が始まっていなかったことは明らかだったため、大ごとにはなりませんでした。)。もしも2021年2月にオンライン受験される方がシステムエラーに見舞われた場合には、PCを自分で勝手に再起動したりせず、サポートデスクに電話してエラーの記録を残すようおすすめします。

6・最後に

結果として、総得点は300点でした。Twitter/FBではすごい高得点の方を複数みますので、全然高得点ではありませんが、JD Advisingのサイトによると受験者の上位10%程度になるようです。受験した実感としては、MEEに関しては全く手ごたえがなく、正直なところ今回は落ちたと思っていました。MEEが合格点に達していたのは、運要素が大きいように思います。

今年は、Barが10月に延期されて準備期間が長くなったため、(規制にかからない範囲で)旅行に行ったり、家族との時間をある程度確保したりしながら準備を進めました。そのため、1日の勉強時間など時間要素はあまり参考にならないように思い、意図的に記載していません。勉強量について、これぐらいやって、だいたいこれぐらいの点数という一例としてご参考になれば幸いです。

※Twitter

https://twitter.com/akirakwshr



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