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Illinois Bar - ①出願準備編


1.はじめに

はじめまして。川城瑛(かわしろあきら)と申します。2019年にDuke大学のLLMコースに留学し、2020年10月にオンラインで開催されたイリノイ州司法試験(以下「Illinois Bar」)に合格しました。

Illinois Barは、日本人LLM生にメジャーでないため、日本語の情報がほとんどなく、準備の過程で戸惑うことも多かったので、NY Barとの違いや出願・準備の注意点などをご参考までにご共有いたします。

2.Illinois Barとは?

・Illinois州(シカゴがあるところです。)で弁護士登録するための試験です。
・Illinois州もNY州と同様に、全州統一試験(UBE)を採用しており、例年は2月と7月の年2回開催されています(2020年はコロナの影響で7月分は10月にオンラインで開催されました。)。
・UBEは、日本の司法試験と同じような択一試験(MBE)、論文試験(MEE)に加えて、その場で与えられた資料を使って即興でメモランダム等の文章を作成するMPTという試験があります。
・UBEに加えて、弁護士登録のためにMPREという法曹倫理の試験に合格する必要がある点は、NY州と同じです。
・他方で、NY州と異なり、NYLC、NYLEに相当するIL州固有の法律に関する試験はなく、またプロボノ要件もありません。ただ、後述するように、出願資格がNY BarやCAL Barに比べて限られていることや、出願準備の大変さからすると、一概におすすめとも言い切れません。

3.なぜIllinois Bar?

元々、NY Barを受験する予定で準備していましたが、コロナの関係でNY州がBarの1次出願、2次出願の時点ではLLM卒業生を受け付けないと発表したため、確実に受験でき、かつ、NY Barと同じ全州統一試験(UBE)を採用しているところということで、Illinois Barを選択しました。UBEを採用している州であれば、新しい科目を勉強する必要もなく、また、追々、ScoreをNY州にTransferして、NY州で弁護士登録することも可能だからです。

4.出願準備

(1)出願資格

日本人のLLM卒業生が受験する場合、Rule 715に基づく以下の資格で受験することになります。

海外のロースクールの卒業生のうち、以下の3要件を満たす者
① ロースクールのDegreeを得た国又は米国のいずれかの州において、5年以上、法律業務に従事する資格を有していること
② その国又は米国において、弁護士又は同等の者としての資格を有していること
③ Illinois Barに申し込む前7年間のうち、少なくとも5年間、月80時間、年間1,000時間以上、法律業務に従事していること

CAL Barと同様、米国ロースクールのLLMは必要なく、日本国内で弁護士をされている方やVisiting Scholarで米国留学された方も受験可能と思われます。ただ、5年の実務経験が必要になるため、早めに留学された方は残念ながら受験資格がないことになります。

なお、上記を満たした場合は自動的に資格が認められる訳ではなく、Illinois Board of Admission to the Barのウェブサイトの一番下にあるリンクからApplicationをして資格を認めてもらうというプロセスが必要になります。

(2)出願書類

出願にあたっては、家族・両親の詳細な情報や、過去10年に住んだ住所など本当にそんな情報いるの、と思うような細かい情報まで出願書類に書かされます。加えて、以下のCharacter & Fitness関連の書類集めはかなり骨が折れます。

①  Illinois州弁護士によるAttorney Verification 3通

まず、一番ハードルの高いものとして、Illinois州資格を有する弁護士3名から、弁護士としての適格性を有する人物である旨のレターをもらい、提出する必要があります(そもそもIllinois州弁護士を知らないことが多いと思います。。。)。なお、どうしても見つからない場合はIL Barからアサインされた担当者に相談した上で米国の他の州の弁護士(場合によっては日本の弁護士)にレターを書いてもらうことで認められる場合もあるようです。

② 実務経験に関する宣誓供述書 4通以上

出願資格のうち、「③直近7年間のうち、少なくとも5年間、月80時間、年間1,000時間以上、法律業務に従事していること」を裏付ける宣誓供述書を弁護士3名以上に作成してもらい、かつ、自分でも同様の事項を証する宣誓供述書を作成して提出する必要があります。いずれも公証する必要があります。

なお、日本での公証費用は1万数千円かかりますが、米国だとUPSなどで5ドルでできるので、もし職場の同僚が米国にいれば、その人に頼むとかなり費用が節約できます。

③ レファレンス先 計9名以上

以下のレファレンス先の住所、役職、連絡先等をIllinois州に連絡する必要があります。出願完了後に、Illinois Bar Admission Officeからそれぞれのレファレンス先に個別に質問票が送られますので、レファレンス先の方々にはその質問票に期限内に回答してもらう必要があります。
・資格を有する国における裁判官1名、弁護士2名
・適格性についてのレファレンス先 3名
・ロースクールの教授 2名
・過去のすべての勤務先における各雇用者※

※仮に転職している場合、各職場の(元)上司に連絡の上、Bar Admission Officeに連絡先を伝えさせてほしい旨、及び、問い合わせに応じていただきたい旨をお願いする必要があります。

⑤ その他

・法学部・ロースクールの英文卒業証明書・成績証明書(認証機関による認証が必要)
・日弁連の在職証明書(英文)
・運転免許を有しているすべての国におけるDriving Record

以上です。私の場合、転職していた関係もあり、前職の上司・同僚を含む計17名に連絡して、書類の作成やReference先としての対応のお願いをし、申請期限内に回答してもらうようフォローアップをしてと、なかなか大変でした。

(3)手続

出願手続は、Illinois Board of Admissions to the Barのウェブサイトからオンラインで行うことができますが、提出書類についてはハードコピーを送付する必要があります。

NY Barの場合、ロースクール卒業直後の7月にBarを受験するためには、留学する頃(かその直後)にBoardに必要書類を送付する必要があるように思いますが、Illinoisは試験直前の5月半ばまで受け付けているので、提出期限は緩やかです(ただ2月半ばを過ぎると割増料金を取られます。)。

ウェブサイト上でアカウントを作成して出願を始めると、出願者ごとに担当者がアサインされます。具体的な提出書類の内容等については、担当者と相談しながら進めることになります。

5.まとめ

Illinois Barは、米国ロースクールのDegreeが出願要件にならないので、留学を経ずに米国司法試験を受験する場合の選択肢になり得ます。また、UBEを採用しているので、CAL Barよりも取り掛かりやすいのではないかと思われます。

NY Barとの比較で見た場合、LLMが不要な点が大きく違いますし、NYLE、NYLCやプロボノ要件なく、米国弁護士資格を取れるというのは魅力的なように思います。

費用面に関してみると、Illinois Barは出願タイミングにより出願料金が異なるものの、$950-$1450とNY Barの$750に比べて少し高めです。また、成績証明書の認証機関の費用や、各種書類の公証費用など、NY Barと比較するとそれなりに差が生じると思います(私は締切直前に出願したので、出願料が割増料金だったり、認証機関のRapidサービス料もあり、NY Barを受験する場合に比べてざっと15万円程多くかかっています。)。

以上が、Illinois Barの出願準備に関する情報です。実際に行ったIllinois Barに向けて行った勉強面の準備については、NY Barを受験される方にも参考になると思いますので、次回、勉強編としてまとめようと思います。

※Twitter

https://twitter.com/akirakwshr



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