スマホ、タブレットでの歌録音について。
お手軽な時代になったものです。
しかいお手軽さというのは便利さであり呪いです。
我慢の限界なのでnoteで書く。
昨今、表題のような運用方法で歌を録る方が増えています。
PCが自宅にないという人も多い時代の流れといえばそうなんだけど、最低限守るべき事項っていうのはいつの時代だって同じはず。
まず歌を録音するにあたって
必要なもの
・マイク
・オーディオインターフェイス(ADDAコンバーターおよびマイクプリ)
・デバイス(スマホ、タブレット、PC等
と、書き連ねればこれだけ。とても簡単。
さてみなさんが録音に使うマイク。1本ですよね。
1本のマイク。どうやって使うのかと言えば
こういったオーディオインターフェイスのマイクイン、通常は一番左側のジャックが1番なのでそこに繋ぐ。
この接続は、1か所に付き1回線。それがどういう意味をあらわすかというと、1ch。モノラルです。
ステレオとは
皆さんが常日頃当たり前のように聴いているステレオ音声というのは、2chぶん、モノラル回線が2本並んでいるのでステレオなのです。
その左右でギターのフレーズが違う、楽器が違うなど様々な差異が位相(難しいので割愛)変化を起こし、所謂「広がり」などとなって耳に現れるわけです。
詳細は置いておきますがツイッターでステレオMSマイクを歌の収録用に勧めたり、ステレオミニプラグの機器を「オーディオインターフェイス」と謳ったりしている場面を最近よく見ましたが、さすがにしびれを切らしました。
便利な機器というのは、大元がなんであったかを逆算しなければそれらを効率的に運用することは不可能です。
たとえば、スマホに直接挿すタイプのステレオマイクなどは、フィールドレコーディング(森の音とかライブとか録る)用の本体拡張パーツであって、近接で録音する歌などの用途ではありません。
合唱の収録などにはいいかもしれませんが、単一のボーカル収録用としてはおかしな使い方と言わざるを得ません。
これをオーディオインターフェイスに当てはめると、マイクを2本使用して、上記の機器1番2番に繋いだものをドラムのアンビエント(ざっくり言えば部屋鳴り録り)として使うなどに該当します。
2本同じ位置に立てて1人のボーカルに使用することは、よほどなにか特殊な効果を狙った運用方法でない限り意味がありません。
なぜなら、声の発生源は1つでかつ、音源上中央に定位させる楽器、例としてバスドラム、ベースなどですが、これらの仲間と定義すると、「ボヤけさせたいくないパート」ということになる↑上、2本立ててそれぞれのマイクから物理的に離れてしまうのは「前に出す」効果が薄れるので、最近の音作りの傾向からすれば基本的には無意味でしょう。
また、ステレオマイクという事は左右に信号の差異が生まれるということなので、どちらを運用するのか、また書き出し設定でモノラルに統合した場合の問題点はどうするのか、わざわざステレオで出して、分割したのちLの信号を使ってくれなど妙な仕様書を送るのかなど、様々な問題があります。
結論、よくわからずに妙なことを初心者に吹き込むのは辞めていただきたい。
ステレオついでにスマホのDAW
メロディのメモなどに使っているので製品名はやり玉に挙げませんが、スマホ用DAWのうちいくつかはミックスなど編集用に録音するうえでは無理があります。
まず書き出しがステレオのみで謎、保存形式が16bit(ここが重要)(最重要)(これに比べたらステレオとかどうでもry)
めちゃめちゃ難しいので端折りますが、超ざっくり言うと音源というのは16bitで保存していいのは「マスター音源だけ」です。
理由としては、これもめちゃめちゃ端折りますが16itという保存形式は、のちの編集で意図しない変質を起こす=音が劣化します。
つまりどういうことか。
「後の編集は考慮されていない」ということです。
運用方法として多大に無理があるという事ですね。
モバイルはあくまでモバイル。
24bitで保存できるものはまだ救済の余地があるので、それを選べるDAWを選びましょう。cubasisとか。
ステレオミニプラグ式オーディオインターフェイス(仮)の問題点
これに関してはお客様からのご相談で発覚したのですが、これはオーディオインターフェイスと呼ぶのかと言われるとかなり疑問です。
まずオーディオインターフェイスの定義として、パソコンの中で再生される動画サイトなどの音声(デジタル信号)を受け取り、ヘッドホンに出力(アナログ信号)する機能(ADDAコンバータ)をもってそうであると定義されるはずです。
しかしステレオミニプラグ、わかりやすく言うと皆さんが普段使うイヤホンなどについているあの小さなプラグです。あれは上記のように相互変換を行えないばかりか、アナログ信号のみしか扱えません。
またADDAの搭載に関しても記述が無い物が多く(当たり前)、ではこの機器はなんなのかという結論ですが、これはツイッター上でもお話しましたが
「マイクプリアンプもしくはラインアンプ」です。
こういうのではなくどちらかと言えば
これの仲間です。
構造上どういうことなのかと言えば、
マイクプリアンプは
・マイクインがある
・信号増幅機構各種
・出力はXLRまたはTRS(アナログ信号)
対してこのオーディオインターフェイス(仮)
・マイクインがある
・信号増幅機構は一応ある
・出力はステレオ複数ピンミニプラグ
・イヤホンジャックがある
見覚えないでしょうか。
ズバリイヤホンマイクです。
XLR変換コネクタ付きイヤホンマイク。
この方式ですと、せっかくオーディオインターフェイスの強みである音声信号の管理を、結局はスマホ側に依存することになるので極論、「意味なし」というほかありません。ファッションの域ですね。
対して、同じモバイル用の小さなものでも少しだけ値段の張るLightningやUSB式のものはADDAを搭載しており、内部で信号をちゃんと管理する仕様になっています。
ではミニプラグ→LightningおよびUSBに変換するのはどうか?というお話ですが、これも結局はそもそも論通常接続方式がそれしか存在しませんし、イヤホンジャックが存在するデバイスでも、機器からはアナログ信号がきておりそのままスマホに押し込んでいるだけですので、機器単体がオーディオインターフェイスとしての役割を果たしているとは言えず、極論何も繋がずにその変換コネクタでいいじゃないかとなってしまうので、意味のない話でしょう。
補足すれば、イヤホンマイクはたしかに通話ボタンや音量操作など端末操作のための信号をやりとりできますが、この略(仮)の機器類はそういった機能はオミットされており端末側での操作となるため、いよいよもってそれとは呼び難い存在となります。
またこの方式の問題点として、内部回線の問題なのか、歌録り時にモニタしている信号と混線して収録され、部屋鳴や音漏れと勘違いするというデータも見られました。
電気工学には明るくない身なので確かなことは言えませんが、明らかに素人目にも無理の有る接続方式ですので、これらは使用しないほうが無難でしょう。
こういった類の機器の使い道としては、録音ではなくカラオケアプリなどを楽しむと言った方向に限定されそうです。
ではどういったものを選べばいいのか。
簡単です。ミニプラグ接続の物を全て除外したのち、iOS、Android対応のUSBオーディオインターフェイスを選べばいいだけです。何も難しいことはない。
最近は様々な機種が存在するので好きなものを選ぶと良いでしょう。
たったこれだけ。
マイクはごっぱーとかでいいです。最初は。ほんとに。予算足りなくてポップガードをうんこみたいなもの使う位だったら、いいポップガード買って、SM58のグリル外して、いい距離探して録ってみてください。ちんちくりんなコンデンサーの100倍いい音になります。
初心者向けには値段が高いという声ももっとも、自分もUA25EX+XM8500がスタートだった身としては万単位というだけで大きな出費という感覚は非常にわかります。
しかし同時に、ここが下限値ということになります。残念ながら。
無い物を知恵でなんとかするには、電子音楽では基板から起こすくらいのレベルが無いと不可能です。
ケーブルもマイクも、勉強せず既製品で済むのなら安い物だという開き直りも時には必要です。
目をつぶって、ゲーム機だと思って買えばいいんです。
使いこなせるかな?という懸念を抱く方をたくさん見てきましたが、ハッキリ言って低予算の環境を使いこなすほうが100倍難しいと思います。
初心者向けには初心者向けで最低限大丈夫なように作ってあるので、怖がらずに1歩踏み出してみてください。
我々のようにキザイ~キザイ~と呻いている人たちも大概、超絶、アルティメット怪しいですが、低予算でもできる!と謳う人たちは1000倍怪しいと断言しておきます。
無理の有ることをさも高級機材と同じことができると言っていたらダウトです。大ダウト。
そんははずはありません。どこかをコストカットすれば、必ずしわ寄せがあるものです。騙されてはいけない。
手順や手法などを簡略化するということは相応の対価を払うことになるというのは、漫画の世界だけではありません。
お薬と一緒です。機材も用法要領を守って正しく。
おしまい。
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