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「光る君へ」うろ覚えレビュー《第21話:旅立ち》

「光る君へ」のオープニングの音楽、みなさんはどう思われるだろうか。
とても良い曲だと思うのである。
オープニングのまひろの様子も嫌いじゃない。
もの言いたげで、心の中に浮かんだ『源氏物語』のどこかのフレーズや場面を文章化・文字化しようとしている一瞬前を描いているようで。

■伊周の悪あがき

今回、中宮定子の兄・藤原伊周は滑稽なほどダメダメ男になってしまった。花山院へ矢を射掛ける重罪を犯した(正確には伊周本人がしたことではないが)罰として大宰府へと配流されることとなったが、逃げ回ってばかりだ。
まさか伊周がここまで情けない男に描かれるとは思ってもなかったが、ドラマ的には面白い。

逃げ切れないとみると、なんと弁慶みたいな格好して
「出家してもうて、配流先には行けまへんな」
などと子供だましなことを言い張ったところはびっくりだ。
検非違使別当の藤原実資さねすけ
「被り物を取ってくれはりまっか?」
と言われて動揺する伊周の様子は、まるでマンガ。
駄々をこねて配流をいやがる伊周だったが、超甘々な母親が一緒に行くということで、結局2人して牛車にのってようやく出発した。
だがそれも一条天皇の怒りに触れる。
母親は都に戻され、伊周のみで配流先の大宰府へと向かうことになった。

伊周、力づくで大宰府へ配流となる。
真ん中の人は伊周なのだ、一応。

しかし、ふと思う。藤原道長を持ち上げるためにこんなにも伊周をダメ男にしなくちゃいけないのだろうか。

この際だから言っておくが、「光る君へ」の主人公の2人・まひろと道長は、優等生すぎてキャラクターとしてはそれほどおもしろくはない。
このドラマをカラフルにしているのは、兼家、道兼、直秀、花山院、定子、伊周ら周辺の濃い性格をした人物たちである。

■宣孝についての懸念

実は、藤原宣孝のことが気に入っている。
最初は特に注目していなかったのだが、いいキャラクターだなぁ。
平安時代にもあんなタイプの人はいたんだろうな。
うじうじしている為時よりもよっぽど現実的である。
だが、最近はある心配をしている。
この人は、将来まひろの夫となる人物なんだが、まひろが一体どのような気持ちで宣孝の妻になるのかが気になるのだ。
彼女が道長を思いながらいやいや結婚するのは宣孝がかわいそうすぎる。
それなりに納得して結婚して欲しい。
そんなことを心配しながら見守っている。

まひろと宣孝は、普通に仲良しに見える。
親戚の中で冗談を言い合う、気のおけないさっぱりした年の離れた友人のような関係。ゴシップ好きなところもある宣孝のことをまひろが
「もうやめてえなぁ。下品なキョーミでぺらぺら言うのんは」
などとたしなめるなど、親しくなければできないことだ。
(いや、カムフラージュまでして中関白家に乗り込んで覗き見しているまひろのほうが下品といえば下品。すごすぎる)

藤原宣孝のつもり。わりと好きなキャラクターでもある。似てねぇ。

ただ少し、宣孝のまひろを見る目が女性を見る目になりつつあるようなところが、あたしは一体どう受け取ったらいいのかわからない。
どうか宣孝、暴走しないでいただきたい。
まひろとはおもしろおかしい結婚生活を送ってもらいたいんですよ。

■よけいなお世話

まひろが、紫式部が、このドラマの主人公であることは百も承知である。
このドラマが史実を交えたフィクションであることもよーく理解している。だが、なんでもかんでも主人公の手柄にするのはどうだろうか。
そんな出来事があった。

つまり、「まひろのアドバイスによる『枕草子』誕生問題」である。

ナゴンこと清少納言がまひろに相談した。
「中宮様をお元気にするにはどないしたらええんでっしゃろ?」
その途端、あたしは嫌な予感がしたのだ。ええ、しましたとも。
いやいやいや。これはナゴンが他人に相談するべきことじゃない。
これは清少納言が一人で考えるべきことなのである。でしょ?

それに応えたまひろは、こう言った。
「以前に中宮様からもらいはった高価な紙、その紙に中宮様のために何か書かはったらええんちゃいます?」
と提案をしてしまった。よけいなお世話じゃ。

つまり、『枕草子』の発案者は紫式部でした、というわけだ。
現在のところ、歴史学者らの見解では清少納言と紫式部は実際に顔を合わせたことはないとされている。
だから、まひろがナゴンにアドバイスするなどありえないはずだ。
分かっている。ドラマ、なんですよね。
ただ、フィクションベースのドラマだとしても、紫式部のお陰で『枕草子』が誕生した、というのは調子に乗りすぎてはいないか。
平安期の女房文学の双璧である『源氏物語』と『枕草子』。
それでもなお紫式部が書いた『源氏物語』こそが世界のベストセラーであり、ナンバーワンの作品であることは認めよう。
だが、『枕草子』まで紫式部の手柄にするのは、どうだろう? 
それはあんまりだ。

せっかく高級な紙をもらったんだから、中宮さまを元気づけるエッセイを書けばいいと思うわよ。
あ、タイトルは「枕草子」っていうのはどお? 書き出しは「春はあけぼの」。
あ、香炉峰のエピソードも入れるのオススメ。そうしなさいよ。

だが、「春はあけぼの」から始まって、清少納言が少しずつ書いては定子の元に紙を届け、それに読み入る定子のシーンは、心地よく思えた。
そもそも『枕草子』は、どの段から読んでも状況が理解でき、すっと共感できる部分が見つけられるところ、それが魅力なのだよな。

■道長とまひろの密会

国司として赴任する父親とともに越前へと旅立つまひろは、出発の前に道長に会うために手紙を書いた。
これって何気にすごい。
まひろが会いたいと書けば、すぐに左大臣の道長が飛んでくる。
左大臣って、名誉職の太政大臣を除いて一番偉い大臣なのであるが。
宮廷のトップです。

てっきりもう2人は逢引などしないことになったと思っていたが、そうじゃなかったんだね。いつでも簡単に手紙の交換も逢引も可能である様子。

まひろは父親が越前の国司に任ぜられたのは道長のおかげであることを知り、その礼を言うのと同時に、噂の真偽を道長に問うた。
「中宮さまを追い詰めたんは、道長はんでっしゃろか?」
「小さな事をことさら大げさに言いはって、伊周はんを追い落としたんもあんさんの謀りごとなんでっか?」
それに答える道長。
「せやねん。それがどないかしたんか?」

ところが、それでもドラマは道長を絶対に悪者にしない。
道長が認めてるというのに、まひろは
「お顔を見てわかりましたわ。あんさんはそないな人ちゃういうこと」
と言っちゃう。え。そうなの? わかるの?
それはつまり、道長は悪くないとドラマが宣言したようなものだ。
何をしても汚れない道長。
もっと他人の失敗を利用して、陰謀を張り巡らせてのし上がって欲しいのに。
優等生すぎる。

■旅立ったその先に

父親の藤原為時と一緒に越前へと旅立ったまひろ。乗っていた船が、わりと貧相で、船べりと水面が近く感じた。難破するなど波乱万丈なことが起きるのではないかと心配したが、あれは海ではなくて琵琶湖だったのですね。
よく考えれば、京から越前に行くのに海を渡るわけがない。
ははは。これだから方向音痴は。

ただ、あんな船に乗っていても、船酔いにもならず、まひろはまたまた船上で琵琶を弾いていた。琵琶湖だけに。

目的地へ到着する前に、為時は松原客館に立ち寄ったが、宋人たちが騒ぐばかりで、本来は渤海ぼっかいからの使者などが滞在する迎賓館みたいなものだったという建物の様子(なんとなく気になる)などはよくわからなかった。

これは周明ではない。

国司となる為時は、宋人たちを追い返す大任があって大変そうだが、それよりも気になるのは新たな登場人物。
周明という若い男だが、宋人のみんなが熱く為時に叫んでいる中、ひとり壁にもたれ、斜に構えてた人物である。
なんだかちょっと直秀っぽい雰囲気だが、どういういう人物なのか。
そういえば、直秀、大陸に行きたがっていたなぁ。(直秀ファン)

※クイズ※
これは伊周が出家していると嘘をついたときの様子を表した絵です。
絵の中にある間違いを指摘してください。