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ラヂオ少女

子供の頃、朝起きるといつも母がラジオを聞きながら朝食の支度をしてくれていた。ラジオのある生活が当たり前だった。

昼のラジオ

クラスメイトの女の子のお父さんが、関西ではかなり有名なラジオのパーソナリティーだったから、よく彼の番組を聴いていた。登校前にそれを聞きながらパンをかじったり、「NHKのみんなのうた」なんかをBGMに着替えたりしていたものだ。ラジオの元気な声や歌を聴いていたら、そのうち目が覚める・・・。そんな幸せな毎日の朝。

夜のラヂオ

だけど、本当に私が好きだったのは、夜のラジオだ。親に買ってもらったラジカセを枕元に置いて、よくラジオドラマを聴いた。
江戸川乱歩原作のラジオドラマや、シャーロック・ホームズの話。
夜に聴くと、昼間に聴くよりももっと怪しげで、刺激的だったのを覚えている。
小学生だったけれど、人の声だけであんなに感動したり、ドキドキしたりしていた私は、きっとその場面が見えていたんだろう。中学生になってもずっと聴き続けていたように思う。

キソヨシナカ

ある時、とてもワクワクするラジオドラマに遭遇した。
手塚治虫のマンガ原作の『火の鳥 乱世編』だった。
あとで原作を読んだら、随分とラジオドラマとは内容が違っていた。
でも、私にとっては手塚治虫が監修していたあのラジオドラマこそ『火の鳥 乱世編』だ。
その夜が来るたび、私はラジオにかじりついた。
真っ暗な部屋で、ラジカセの赤いボタンの光を見つめながらラジオに聞き入ると、乱世の時代が私の枕元にもやってきた。

ラジオドラマのストーリーでは、荒っぽいけれど主人公の男性に協力的な役回りで、木曽義仲(源義仲)が登場した。(マンガ原作のほうではあまり活躍しないけれど。)
そして彼は最後に、源義経に騙されるようにして殺されるのだ。
私は泣いて、泣いて、そのあとも眠れなかった。

それが、もともと日本史を好きだった私が、強烈に日本史大好きになったきっかけです。

夜のラヂオの魔力はすごい。今もそうなんだろうか。