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自作キーボード:やさしいケースの作り方


はじめに

この記事では、Autodesk Fusion 360を使用し、初心者でも簡単にキーボードのケースを作成できる方法を説明したいと思います。何かの参考になれば幸いです。

この記事を読むと作れるようになるケース

大まかな流れ

  1. 基板データを読み込む

  2. ケースの下書きをする

  3. Pro Microを作る

  4. 外見を整える

  5. 完成

キーキャップより大変ですが、頑張っていきましょう。

基板データを読み込む

まずはKicadを開き、基板データをSTEPファイルでエクスポートします。
次にFusion 360を開き、画面左上のファイル内にある「開く」をクリックし、
マイコンピューターから開くから、先ほどエクスポートしたSTEPファイルを読み込みます。
基板の形が読み込まれました。
これで基板データの読み込みは完了です。

ケースの下書きをする

画面左上のスケッチアイコンをクリックします。
平面の選択を求められるので、基板の表面をクリックします。
平面を選択すると、画面右側にスケッチパレットが表示されます。
スケッチモードになりましたので、実際に線を描いていきましょう。
まずは、画面上部の修正内にある「オフセット」アイコンをクリックします。
オフセットする曲線を求められますので、基板の外枠にカーソルを持っていきます。
すると、外枠が青くなりますので、その状態でクリックします。
画像のように、赤枠と矢印、距離の入力フォームが表示されます。
入力フォームに「0.5 mm」と入力し、Enterキーを押下すると、
選択した線より0.5mm大きい枠が描かれます。
私の基板は、中心の上部がえぐれていますので、これを修正していきます。
修正内の「トリム」アイコンをクリックします。
切り取りたい線にカーソルを合わせると赤線になりますので、その状態でクリックすると…
線が切り取られました。
これを繰り返して、不要な線を切り取っていきます。
不要な線を全て切り取りました。
右下に警告が表示されますが、気にしなくても大丈夫です。
線を切り取ったので、線が繋がっていない箇所ができてしまいました。
線と線を繋げるめ、作成内の「線分」アイコンをクリックします。
最初に線が繋がっていない箇所をクリックして…
線を繋げたい箇所をクリックすると…
線と線が繋がり、線の中が青くなりました。
同じ容量でもう一本線を描いていきます。
オフセットアイコンをクリックして、基板の外枠を選択。
今回は入力フォームに「5 mm」と入力します。
ケースの厚みに関係します、お好みで数値を変えていただいても構いません。
必要があれば、先ほどのようにトリムして枠線を整えれば、下書きは完成です。
次は、押し出し機能で立体化していきます。

少し脱線

ケースの形を綺麗な長方形にしたい方もいるかもしれません。
そんな時は、画像のように線分で線を描きます。
その後、余計な線をトリムで切り取っていけば…
角ができますので、この要領で修正をすると
ケースの外枠を長方形にすることができます。
長方形と決まっている訳ではありませんので、色々試行錯誤して素敵な形にしてみて下さい。
作業を進めましょう。
下書きが終わりましたので、スケッチパレット内の、スケッチを終了ボタンをクリックします。
左上の色々の赤い矢印が示している目のアイコンをクリックします。
これは、表示/非表示を切り替えるアイコンです。
これからの作業で何回も使いますので、覚えておいて下さい。
目のアイコンをクリックして、基板が非表示になりました。
これでスッキリと作業が行えます。
それでは、下書きを立体にしていきましょう。
作成内の「押し出し」アイコンをクリックします。
次に、押し出す箇所を選択します。
画像のように、外枠を選択して下さい。
そのままだと分かりずらいので、画面右上の正方形を操作して、表示角度を変更します。
入力フォームに押し出したい距離を入力します、今回は「20 mm」と入力しました。
ケースの高さに関係しますので、お好みの距離を入力して下さい。
押し出し機能を使用して、後から高さを変更することも可能です。
ケースの外枠ができました。
次はケースの底を作っていきましょう。
基板を使用しますので、目のアイコンをクリックして表示させます。
ケースの外枠が邪魔なので、非表示にしたいと思います。
画像の青くなっている矢印アイコンをクリックします。
すると「ボディ1」が表示されます。
これが先ほど作成した外枠についている名前です。
せっかくなので、名前を変更してみましょう。
ボディ1をダブルクリックすると、名前の変更が行えるようになります。
「外枠」と入力し、Enterキーを押下します。
これで名前の変更が行えました。
ボディが増えてくると識別が難しくなるので、名前を変更しておくと作業が楽になります。
少し脱線しましたが、外枠を非表示にしましょう。
外枠の左側に表示されている、目のアイコンをクリックすると、外枠が非表示になり、
ボディフォルダーの左側に表示されている目のアイコンをクリックすると、
ボディフォルダー内に入っているパーツが全て非表示になります。
外枠が非表示になりました。
先ほどの要領で、スケッチモードにします。
平面は今回も基板の表面を選択して下さい。
オフセットで「0.5 mm」と入力し、必要があれば枠線の形を整えて下さい。
枠線が描けたらスケッチを終了します。
ケースの底の下書きができました。
立体化していきましょう。
押し出しアイコンをクリックして、押し出す箇所を設定するのですが…基板が邪魔をします。
画像のように全てが青くなるまで、押し出す箇所をクリックします。
ドラッグで一気に選択することも可能です。
選択をしたら「3 mm」ほど押し出します。
1mmでは薄いと思います、2mmでもいいかもしれません。
お好みの数値を入力して下さい。
これでケースの底の部分ができました。
外枠を表示させ、ボディ2の名前を「底」に変更しておきましょう。
底ができると、ケースっぽくなりますね。
次はスペーサーを固定するネジ穴を開けていきます。
外枠と底を非表示にして、スケッチアイコンをクリック、平面は基板の「裏面」を選択して下さい。
作成内の中心と直径で指定した円アイコンをクリックします。
ねじ穴の中心付近にカーソルを合わせると、青丸に変化するので、この状態でクリックします。
クリック後、カーソルを上下左右に動かすと、円が表示されます。
入力フォームに「2 mm」と入力し、Enterキーを押下して下さい。
今回はM2ねじを使用する前提で作成していますので、他のサイズのねじを使用する場合は、
円をお好みのサイズに変更して下さい。
ねじ穴の数だけ円が描けたら、スケッチを終了します。
スケッチを終了させたら、基板を非表示にして、底を表示させます。
2mmの円が書かれていますので、これを押し出し機能を使用して穴を開けていきます。
押し出しアイコンをクリックし、押し出す箇所を選択したら…
赤い矢印が刺している青い矢印を下にドラッグします。
この時、押し出しウィンドウ内の操作の項目が「切り取り」になっていることを確認して下さい。
なっていない場合は、ドラッグする方向が間違っている可能性があります。
問題がなければOKボタンをクリックして、押し出しを終わらせます。
これでねじを通す穴が開きました。
念のため、本当に2mmの穴なのか確認をしておきましょう。
検査内の計測アイコンをクリックします。
先ほど空けたねじ穴をクリックすると
計測ウィンドウ内にの直径の項目に「2 mm」と表示されていますので、問題はなさそうです。
これでケースの大まかな部分が完成しました。

Pro Microを作る(Type-C版を前提としています)

次はUSBの接続穴を開けるためにPro Microを作っていきます。

まずは基板を正しい位置に移動させたいと思います。
その準備のため、底だけを表示させます。
スケッチアイコンをクリックし、平面は底の表面を選択します。
どこでも良いので、ねじ穴の1つに円を描きます。
距離の確認に使用するためなので、なんmmでも大丈夫です。
私の場合になりますが、
サンドイッチで作成したキーボードのボトムプレートと実装基板の隙間は6mmでした。
先ほど書いた円を6mm押し出していきます。
押し出す際に、押し出しウィンドウ内の操作の項目を「新規ボディ」の変更して下さい。
結合のままだと、底とくっついてしまい、ボディの削除が行えなくなるなど不都合が出てきますので、
後から修正/変更予定のあるボディを作成する場合は、新規ボディで作成しておくと作業が楽になります。
基板の位置合わせのためのパーツが完成しました。
基板を移動させていきましょう。
基板と位置合わせのパーツのみ表示さたら、修正内の「移動/コピー」アイコンをクリックします。
次に、移動させる際に中心となる箇所を選択します。
基板は平なのでどこを選択しても大丈夫です。
画面右上の正方形を操作し、前が見えるようにします。
実際に基板を動かしていきましょう。
上を向いている矢印(画像では青くなっている)を上にドラッグして位置を調整します。
10.61mmでは少し空いているようです。
10.60mmで隙間がなくなりました。
位置が決まったらEnterキーを押して移動を終了します。
位置合わせのパーツは不要になりましたので、
ボディフォルダ内の該当ボディを右クリック → 削除で消しておきます。
基板が正しい位置にきましたので、Pro Microを作っていきたいと思います。
細かい作業が少し続きますので、説明をしっかり読みながら進めて下さい。

私の基板はPro Microが裏側につくため、基板の裏側を表示させます。
次にスケッチアイコンをクリックし、平面は基板の裏を選択します。
作成 → 長方形内の「中心の長方形」をクリックします。
緑色の縦線をなぞっていくと、青い四角に変わる箇所あるので、そこでクリックし中心点を決めます。
中心点を決めて、カーソルを上下左右に動かすと、入力フォームが表示されるため、
縦「35 mm」、横「17 mm」と入力し、Enterキーを押下して、スケッチを終了させて下さい。
下書きができたら、押し出し機能で「1 mm」押し出します。
この時、操作の項目は「新規ボディ」にして下さい。
次はUSBの口を作っていきます。
再度スケッチアイコンを押下し、平面は先ほど押し出した長方形を選択します。
緑の縦線を中心に中心の長方形を使用して、縦「7 mm」、横「8 mm」の長方形を書きます。
このままではUSBの口の位置がおかしいので、下書きを移動させます。
修正内の「移動/コピー」をクリックして下さい。
移動の中心となる位置を決めたら、下書きの線をダブルクリックします。
すると、青い線が濃くなり選択されたことになります。
下書きの選択ができたら、上の部分がPro Microの基板から「1 mm」出る位置まで動かします。
画像のように拡大すると、グリッドの1マスが0.5なので、2マス分上に移動させれば良いはずです。
移動させたら、先ほど使用した計測ツールで距離を確認します。
移動が終わったら、押し出し機能で「3 mm」押し出します。
今回も操作の項目は新規ボディに変更します。
もう少しUSBの口に近づけたいと思います。
修正内の「フィレット」アイコンをクリックします。
フレットしたい場所を選択します。
今回は4つの角をクリックして選択して下さい。
場所を選択したら青い矢印ドラッグし「1 mm」の丸みをつけ、Enterキーを押下します。
正面から見ると、USBの口らしくなりました。
後の作業のために、ボディ同士を「結合」させ、1つのボディにします。
修正内の結合アイコンをクリックして下さい。
ターゲットボディとツールボディを選択します。
どちらでも良いですが、まずはUSBの口を選択して下さい。
USBの口を選択したら、そのままPro Microの基板を選択し、Enterキーを押下します。
すると、ボディ4と5が結合され
ボディ5だけになりました。
分かりやすいように、名前をPro Microに変更しておきましょう。
最後にPro Microの位置を移動/コピー機能で調節したら、Pro Microの完成です。

外見を整える

最後の項目です、もう少しですので頑張りましょう。

だいぶケースらしくなりましたが、USBの接続穴が開いていません。
穴がないとUSBケーブルが刺せないので、開けていきましょう。
まずは、外枠を非表示にして、後ろ側を向くようにします。
次に、スケッチアイコンをクリックして、平面はUSBの口を選択します。
オフセットアイコンをクリックし「0 mm」と入力して、
USBの口と同じ大きさの線を書き、スケッチを終了します。
スケッチを終了させたら、押し出しアイコンをクリックし、
先ほど書いた下書きを選択します。
その状態で外枠を表示させると、画像のようになりますので、
青い矢印をケースの外側にドラッグすると…
画像のように切り取りモードになるので、Enterキーを押下し押し出しを終了させます。
USBの口の位置に穴が開きました。
しかし、これでは穴が狭いため、拡張しましょう。
修正内の「プレス/プル」アイコンをクリックします。
まずは、USBの口の下側を選択し、青い矢印を下にドラッグします。
すると、形が維持されたまま穴が広がりました。
この要領で、上と左右も広げていきます。
USBの穴が広がりました。

完成

最終確認をしていきましょう。
スペーサーをねじ止めする穴が空いていることを確認。
USB接続用の穴が空いていることを確認。
大丈夫そうです。
最後に、外枠をフィレットや面取り、プレス/プル機能などで整え、デザインを決めたら完成です。
お疲れ様でした。

おわりに

ケースの裏にねじ穴を空け、スペーサーを固定するという、非常に簡単なものですが、とりあえず、キーボードのケースが作成できたと思います。
私もFusion 360に詳しい訳ではないので、もう少し効率的な作成方法があるかもしれませんが、私はこのような操作でケースを作成しています。

今回の作成で、Fusion 360の操作にもなれたと思いますので、さらなる高みに登りたい方は、下記の書籍を購入すると幸せになれるかもしれません。
このブログよりも本格的なケースの作成方法が学べます。

ご注意

今回の説明で使用した寸法は、参考程度にして下さい。
基板の形やPro Microの取り付け位置、個人の好みにより大きく変わってくるかと思います。

オマケのようなもの

この記事で作成できるケースは、スペーサーを取り付けるために底面にネジ穴が開けられています。これは、3Dプリント技術ではネジ穴を正確に再現することが難しいからです。
JLCPCBさんに黒レジンで下記画像のケースをプリントしていただきましたが、ネジ穴ではなくただの穴が開いているだけでした。強めにネジを締めることで基板を固定することは可能でしたが、ネジ穴が潰れる可能性があるため、あまりおすすめできません。

Akasha Amrita用のボトムマウントケース

ガスケットマウントのケース開発中ですが、ねじで固定する方式ではなく、マグネットで固定する方式の検討を進めています。

この記事はAkasha Amritaを使用して書きました。

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