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【番外編】つぶやき

ささやかなる雫すら
流れゆけば海となる
こまやかなる真砂すら
積もりぬれば山となる
徒に過ごす束の間も
我が命の一節なり

子どもの頃に読んだ本にこんな言葉がありました。
ずいぶん昔のことで記憶が頼りなく、もしかしたら少し違っているかもしれませんが。
讃美歌か、聖書の言葉、でしょうか。
 
昔、これを読んだときは、いい言葉だけど何だかお説教くさいな、などと(不遜にも)考えていました。

小さな砂や雫もたくさん寄せ集めれば、大きな山や海になる。
無駄に過ごした一瞬一瞬も、寄せ集めれば膨大な時間になる。
その時間があれば、何か成し遂げられるかもしれない。
だから、時間を無駄にしてはいけませんよ。
幼い私はそういうふうに受け取っていたのです。
確かにそれもひとつの解ではあるのだけど。

大人になって歳をとり、大したものではないけれど、いろんなことを見たり聞いたり体験したり。
あるとき、気がつきました。
この言葉の別の意味に。

徒に過ごす一節。
何ということもない、何をしたわけでもない、そんな無為な小さな小さな時間。
それすらも、愛おしい生命のひとかけら。
ただ生きていることを見て聞いて感じて。
それだけで、価値がある。
だから、誰にはばかることはない。
無駄だった、なんて思わなくていい。
その生命の一節を、慈しみなさい。

そういう意味ではないのかな。

もしかしたら、全然違うのかもしれません。
でも、私はこう思いついて、腑に落ちたのです。
言葉は、読む人によって受け止め方が違っていてもいいですよね。
美味しいコーヒーを飲んで、味わい方が違うように。
きれいな花を見て、きれいだなと思うところが違うように。
面白い本を読んで、心に刺さる文章が違うように。

#つぶやき
#人それぞれに
#雑草という草はない
#無駄な時間などない