うそ子の話40。

「思いつき超短編小説。なみだぶとん」

涙を沢山沢山吸い込んだ
布団。
何処で洗うの?
何処に干せばいいの?

ちょっとだけ過去の話。

「君からは
何故か
東京の匂いがしたんだ。」

夢につぶれ
生まれ育った地にもどった
ライオンがいた。

ライオンのくせに
弱っちかった。

「ライオンのくせにって言うな。」
「なんで?」
「ライオンらしさってなんなんだよ。」

違うくせに、ライオンは
弱っちいて言われたのが
嫌だったのだ。

ライオンは
わたしに
CDをくれた。
ちっちゃな花束をくれた。
ハンカチをくれた。
美味しいごはんを食べさせてくれた。
高いお酒をご馳走しようとして
グラスをひっくりかえした。
わたしにお酒をぶちまけた。
わたしはお酒アレルギーだというのに。
カラオケで歌を歌ってくれた。
サプライズしようとして失敗した。
ドライブにもいった。
夜景をみせてくれた。
わたしに何かを見せようと
してくれていた。

ようやく
わたしがライオンに
傾いたときに、

ライオンは
逃げていった。

「東京にいてさぁ、

花束いっぱいもらったんだ。

そういう立場にいながらさ、

花束もらっても嬉しくなかった、、
わけじゃないはずなのに、

誰にも花束なんかあげたことなくてさ。

だから、

花束。あげたかったんだ。

君に似合う花束。」

なにそれ。ってバカにしながら
帰り道。
鼻歌うたいながら
泣いた。

「東京に全部あるわけじゃないけど、

夢がさぁ、東京でしか
叶わないわけじゃないんだ。

ただ好きだったんだよ。

圧倒的に人数が多いからさ、

趣味が合う人にあっさり会えるんだよ。

それがどれだけ癒されることか。

寺山修司すら知らない人だらけなんだよな、
この田舎。

だから、びっくりしたんだよ。

君と会ったとき。

東京の匂いがした。」

ライオン、
わたしは東京に憧れてはいても
3回しか、行ったことがないよ。

ライオン、
弱っちかったよな、
お前は。

フジファブリックとお酒酌み交わして
オシャレな街並。人やモノがあふれ、
アートに溺れていたかったんだよな。
でも出来なかったんだよな。

現実はうまくいかない。
守りたいものがあったて
言ってたよな、ライオン。

わたしは、
「現実的にはそぐわない。
僕の条件に合わないから。」

ライオンは、
ライオンじゃなかった。
にんげんの男だった。

東京の匂いッテ言われて
うれしかったんだよ。
単純なわたしは。

弱っちかったんだよな。
わたしだって。

なみだ布団をひきづって
やっと
辿りついた。

洗濯機に放り込まず。

野ざらしにして

お日様にガンガンあてて。

わたしはなみだぶとんを

乾かした。

すっかりふとんは

ぽかぽかなにおい。

今では猫だけじゃなく
近所の犬まできて
寝転んでくれそうなくらい

ぽかぽかな

なみだぶとんだ。

いまのわたしのにおいは

どんなんだろう。

ねぇ

ライオン。

きみは

新しい東京をみつけたかい?

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