ベースの左手のフォーム3

 左手のフォームということで、前回は握りこみフォームについて書きましたが今回はその続きです。筆者的には握りこみフォームが“エレキ・ベースを弾く上で最も基本かつ多用する演奏方法”であり、今回書いた内容が“フィンガリングの基本となるフォーム”だと考えています。

・ フィンガリングとは

 フィンガリングは日本語で書くと“運指”です。読み方は“ウンシ”です。因みに弦を押えることを“押弦”と書きますが、これは“オウゲン”と読みます。散々雑誌に書いてきましたけど、読みに関してはイマイチ確信がなかったのですが、今調べたので大丈夫です(笑)。押弦って英語的に言うとなんだろう?

 で、ベースで何らかのメロディやフレーズを弾くためには弦やフレットを移動しなければいけないわけですが、親指を除く4指をバラバラに使って演奏する動作がフィンガリングです。同じ指で異なるフレットを弾く、つまり(親指の位置が弦長方向に移動して)ポジションを移動することを“シフティング”と言います。フレット間の跳躍の大きいフレーズで大きく指を開くフィンガリング方法も状況によっては有効なのですが、基本的にはフィンガリングとシフティングは明確に区別して活用するべきだと思います(後述)。

・ 4指4フレットのフィンガリング

 とりあえず指を動かして何かフレーズを弾こうという場合には親指を除く4指、つまり人差し指、中指、薬指、小指を1本ずつフレットに割り当てて弾くのが最も効率が良いだろうということは容易に想像できます。

 では実際に人差し指で1フレット、中指で2フレット、薬指で3フレット、小指で4フレットを押さえ、開放弦を組み合わせてクロマチック・スケール(半音ずつ上がる音階)を弾いてみてください。前回のnoteで書いた弦の押え方の原則を守った上で、それぞれの指が各フレットのすぐ脇に届き、弦がビビることなく発音できているでしょうか?結構厳しくないですか?

 初心者の方でいきなり出来ている方はこれ以降は読まなくても良いかもしれないです(笑)。

 ハイ・ポジションならまだしも、ベースのロー・ポジションではよほど手が大きいか指が長い方でないとしっかりとフィンガリングするのは難しいと思います。入門書などで“頑張って指を開けばそのうちできるようになる!”とか根性論で押し切るものもありますが、届かないものは届きませんよね(笑)。

* 因みに、明確に規定されているわけではありませんが、筆者は12フレットより高いポジションをハイ・ポジション、7フレットより低いポジションをロー・ポジションと認識しています。7~12フレットはなんだ?と言われると、ミドル・ポジションではなく(笑)、どちらかというとハイ・ポジションかなという認識です。

・ 4指3フレットのフィンガリング

 そこでお勧めしたいのが4指3フレットのフィンガリングです。1~3フレットでフィンガリングするならば人差し指で1フレット、中指で2フレット、小指で3フレットを押えます。薬指は使わないのではなく小指のサポートとして活用します。3フレット分しかフィンガリングできないので4フレットに渡るフレーズを演奏するときは指を伸ばすのではなくシフティングします。初めは非効率に感じるかもしれませんが、無理に指を伸ばしてマトモな音にならないよりは数段マシですし、将来的に演奏力が上がって色々なスケールを覚えた頃には、明確にシフティングを多用する4指3フレットのフィンガリングのほうがポジションを把握しやすく、指板全体を使ったフレージングにも発展させやすいと感じるはずです。

 ところで、このフィンガリング方法はコントラバスの基本フォームでもあるのですが、エレクトリック・ベースを弾く上でも何かと効率が良く、特に手が小さい日本人にも適したフィンガリング方法だと筆者は考えています。

 コントラバスの場合、だいたい10フレットくらいのポジションまではこの方法でフィンガリングしますが、それ以上のポジションは大きなボディがあるので手首全体を指板の上に回し、親指、人差し指、中指、薬指の4指で弦を押えます。これに対してエレキ・ベースの場合はコントラバスのようなボディによるフィンガリングの制約がないので、ハイポジションでコントラバスと同様のフォームを踏襲する必要はありません。現実的にはロー・ポジションでは4指3フレット、ハイ・ポジションでは4指4フレット、と2種類のフォームをハイブリッドに使い分けるのが良いと思います。

・ 4指3フレットの実践

 それでは実際に座奏で4指3フレットを丁寧に実践してみましょう。

①  まず、左手を離してもネックがふらつかないように楽器を持ちます。リラックスした姿勢を維持したまま、腿の高さ、右手や右腕、楽器の角度などを調整して、左手でネックを支えない状態を作ってください。

②  3弦1フレットに人差し指を割り当てます。指先はヘッド側(親指側)に寝かせず、指がなるべくフレットと平行になるようにしつつ、フレットのすぐ脇で、指の腹で弦を押えられるように人差し指を配置します。この時、親指はまだネックに触れない状態で構いません。

③  次に小指を3フレットに割り当てます。この状態で親指をネックの真裏(ネック裏で弦長方向の中心線上)の一番楽な位置に配置し、1フレットに配置された人差し指と3フレットに配置された小指の両方で弦を押えます。個人差がありますが、筆者はだいたい1フレットと2フレットの間くらいのネックの真裏に親指が配置されます。親指以外の指先はソフトボールくらいの球を軽く握っているときのように各関節が緩く弧を描き(つまり逆関節的に反らせない)、反対に親指は逆関節に近い状態で親指の腹をネックに当てます。手のひらではネックを支えないようにしましょう。

④  この時点で姿勢をチェックします。前屈みになっていたり、肩が上がっていたりしませんか?

⑤  次に中指を2フレットに配置し、薬指は小指のサポートとして2〜3フレット間で弦を押えます。中指と薬指は、人差し指と小指に比べて少し指が立ってしまうと思いますが、やはり指先ではなく指の腹で弦を押えます。言い換えると中指と薬指の指先は弦上ではなく、指板に直接触れている感覚に近いかと思います。状況次第ではありますが、中指、薬指も逆関節にならない方が良いでしょう。

⑥  4指すべてで弦を押えたら弦をピッキングし音を出します。指先の力の入れ具合は良い感じに適当でお願いします(笑)。指だけの力で弦を押えるのではなく親指を支点に手首全体を上に押し上げる力を加えるのが良いと思います。自分の感覚では握力測定の時に使う筋肉と弦を押えるときに使う筋肉は違う部分です。

 以上です。因みにコントラバスの場合、1フレットを人差し指、2フレットを中指、3フレットを薬指のサポートを含む小指で押さえるような1〜3フレットでのポジションを“ハーフ・ポジション”と言います。実際の演奏状況ではフレーズ次第な面もありますが、ハーフ・ポジションで3弦3フレットを押えるときは小指だけでなく4指すべてで弦を押えます。この時、人差し指は1フレット、中指は2フレットにあり、小指側に寄せてはいけません。

・ 4指3フレットの実践2

 上記の方法で3弦3フレットを押え、しっかりとした音が出せたら、そのままのフォームから小指と薬指を弦から離し、2フレットの音を出しましょう。中指は2フレットのすぐ脇で弦を押さえてるはずなので、あくまで薬指と小指を離すだけです。この時、薬指と小指は弦から離しすぎず、弦の上1センチ以内くらいの距離に留まっていることが理想です。弦から指を離しすぎるのはフォームが崩れる原因であり、フレーズを弾く上でも非効率です。

 2フレットの音が出せたら、そのままのフォームから中指を離す、つまり人差し指だけで1フレットを押えて音を出します。2フレットを演奏する時と同じように中指を弦から話しすぎないようにしましょう。俯瞰した際に4指で押さえているかのように4指の間隔を保ち、トランペットの3つのピストンを押すように、4指は常に各フレット上に配置されているということです。

 開放弦を弾くには人差し指を含む4指を弦から離せば良いわけですが、4指3フレットのフィンガリングを継続する場合は親指をネックに触れたままし、依然として4指の間隔は保つのが理想です。開放弦を弾く際には手のひらにネックを載せて支えたり、フォームを崩して左手でネックを持ってはいけません。

・ 4指3フレットの実践3

 4指3フレットのフィンガリングを整理すると、1フレットを押えるときは人指し指、2フレットを押えるときは人差し指と中指、3フレットを押えるときは4指すべてで弦を押える、ということです。つまりフィンガリングとは指を入れ替えるのではなく、弦を押える指の本数を増減するだけとも表現できるでしょう。こうすることで無用な音切れを防ぎ、4指それぞれの音色差も低減できるはずです。

 これらを踏まえて任意の弦上で以下のフレーズを練習してみましょう。

① 0(開放弦),1,2,3フレットと上昇するフレーズ

② 3,2,1,0フレットと下降するフレーズ

③ 0,2,1,3または3,1,2,0とジグザクに上下降するフレーズ

 いかがですか?特に0,2,1,3の動きでは中指の動きが肝心です。押さえるフレットの位置が変わると捉えるよりも、0本、2本、1本、3本、と弦を押さえる指の本数が変わると捉えると良いかと思います。

 今回は以上です。是非じっくりと取り組んでみてください。もちろん次回に続きます。次回は弦移動のお話が中心になるかと思います。



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